疑惑の症状


テグンとのダンスも、もう終わり。
振り付けも完全に入ったし、あとはもう、特別ドラマが放送されて番組に出るだけで一区切りつく。

疲れがピークに達してきそうな今、久しぶりの丸一日オフということで屍のようにベッドて倒れ込んでいる。
久しぶりにベッドに寝転んでいると、何故だかまた倦怠感に襲われた。

身体が動かないし、食欲もない。
こんなにすべてが気怠く思えたのは初めてのことで、正直、自分も自分の身体をどう使ったら良いのかがまったく解らなかった。



「なまえー、ご飯だよ。」

「んん…。ごめんソナ、要らない…。食欲…、ないんだ…。

「また?この前からずっとまともに食べてないじゃない。良い加減、ちゃんと食べなきゃ駄目よ。身体を壊したら身も蓋も無いんだからね。」

「………うん。」



食欲がない。
どうしても食べられる気力が湧かなくて断ったけれど、ソナの剣幕と言い分に負けて少しは食べることにした。

確かに、食べなかったからという理由で身体を壊してしまったら、活動をすることすら出来ない。
それだけは駄目だと思って食べようとリビングに出たけど…食べ物を目にしても食べたいと思えなかった。

最近ずっと食べていないから、体重はどんどん減っていたし、お腹も減ってはいたはずなのに…。
どうしてこんなにも箸が進んでくれないのか、解らなかった。



「…なまえ?食べないの?」

「いえ…、食べ、ますよ…。」



先に食べていたヒョソンお姉さんに、食べないの?、と訊かれる。
食べる気もしない、食べたくないわけじゃないのに、食べられない。

食べなきゃいけないとは思っているのに、どうしてこうも身体が動いてくれないのか…。
わたしは、倒れたくもないのに。



「なまえ…?」

「…ごめん、なさい…。」

「なまえ!?」



栄養が途絶えれば、身体が壊れる。
解っていたから置かれていたパンを一口食べると、それだけで気持ち悪くなってしまった。

全然進まない食欲に戸惑うわたし。
いぶかしそうにハナお姉さんは視線を向けて、ジウンが心配そうな声色でわたしの名前を呼んで来た。

"ごめんなさい"。
それがどんな思いで口にされたか、自分でも解らない。
だけどそれだけを告げて、わたしはリビングから逃げるようにソナとジウンと一緒の寝室へと向かった。

なんとなく、解ってしまったけど…受け止めるのがキツイ。
認めたくはないけど、わたしは…"摂食障害"という病気なんだと思う。



「どう…して…っ。」



どうしてこうなってしまったのか。
理由はなんとなく解っている。
きっと多忙で睡眠もろくに取れていない状態だったせいで、身体にも限界が出て来ていたんだ。

摂食障害という病気の重たさは、充分解っている。
だから摂食障害というのだったら、きちんと食事を摂らなければならないのに…どうしたら…?

自分の身体をきちんと、支えきれていない自分に対する歯痒さなどでポロポロと涙が溢れてくる。



「どうしたら良いの…?」



どうしたら良いのか解らない。
だけど、ひとつだけ解るのは…周りの人にバレてはいけない、ということ。

正直、Secretのメンバーにバレないのは難しいと思っているけど…。
なるべく隠していきたいと思う。

もちろん、Secretやマネージャー、そして事務所だけじゃない。
テグンにも…絶対、バレないように。






(なまえ…大丈夫かしら。)

(解らないけど…。)

(…本人が言うまで待ちましょう。)

(そうね。きっと、大丈夫よね…。)

(なまえを…信じましょう。)


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