嵐の前の静けさ
テグンとのステージはたった一週間しかなかったから、気付けばあっという間にテグンとのスケジュールを終えてしまっていた。
あとは、もう…年末年始などの大きな舞台に呼ばれる以外に、テグンと仕事をすることはない。
「なまえ、お疲れ様。」
「…もう、テグナと別なんだね…。」
「寂しい?」
「…言わせないでよ、意地悪。」
テグンと共にこなしてきたスケジュールは、本当に怒涛すぎるスケジュールで倒れそうになるほどのもの。
だから今日は、そのご褒美とでも言わんばかりにテグンもわたしも、事務所から休暇をプレゼントされた。
その代わり、と言うのもなんだけど、テグンとわたし以外のメンバー…。
つまりSecretとVIXX自体にはわたしたちが不在でも大丈夫な仕事を与えられてしまい、外出している。
みんなが仕事をしているというのに、わたしは宿舎でテグンと過ごしても良いものなのだろうか。
そう思うけど、今はこの時間を満喫することにした。
だって、明日からはまたBAPとのコラボステージが始まるし、来週には海外での撮影と収録が始まるのだから。
だからまたテグン不足になる前に、補充出来るだけしておきたいのが本音。
「…テグナ。」
「ん?」
「キス、してほしいって言ったら…テグナは怒る…?」
「なんで?」
…なんだろう。
今日のテグンはちょっぴり意地悪だ。
キスしてほしいって言ったら怒る?、なんて、キスしてほしいってことだってテグンも解ってるはずなのに…。
なんで?、なんて訊いてくるあたり、今日のテグンは意地悪だ。
もともとコミュニケーションが苦手で口数も少ないわたしが(それはテグンもあまり変わらないけど)、なんでと言われてもすんなり答えられないであろうことは解ってるはずなのに。
むぅ、と頬を膨らませながらそっぽを向くと、テグンはその膨らんだ頬にキスを落として来た。
「ごめん。怒った?」
「…怒ったもん。」
「何したら許してくれる?」
キスをしたあと、怒った?、なんて普通のトーンで訊いてくるテグン。
怒ってない、なんてこと、テグンにはお見通しなんだろう。
それでもなんだか悔しいから、怒ったもん、と言って顔を逸らしたままにしてみる。
テグンは笑っているのか、クスクスと小さく笑っている声が耳に届いた。
…なんだか、恥ずかしい。
そしてテグンが続けたのは、"何したら許してくれる?"という言葉。
だから、なんで、今日はこんなに意地悪なんだろう。
普段はそうでもないのに…。
「…解ってるくせに。」
「解らない。」
「…意地悪。」
「俺は意地悪って知ってるだろ?」
解ってるくせに、と言ってもテグンは解らないふり。
意地悪って知ってるだろ、なんて言われても、そんなの…一時だけ、で…。
ああ、もう、恥ずかしい。
恥ずかしいけど、テグンはわたしが言うまで引くつもりはないみたいだ。
「テグナを、今日はいっぱい、ほしいの。テグナでいっぱいに、して…。」
顔に熱が集中するのが解る。
耳まで赤くなっているのは、自分でもなんとなく解った。
だってもう、いろいろと熱いもの。
恥ずかしいことを言ったのに、なんの反応も見せないテグン。
少しは反応してよ、と思いながらテグンをチラリと見ると、テグンは豆鉄砲を食らった鳩のように目を丸く開いて驚いていた。
そしてすぐに、いやらしい、妖艶な笑みを小さく浮かべる。
変なスイッチ入れちゃったのかな、と後悔したけど、気持ちも全部テグンでいっぱいにしたいから、良いかな。
珍しくわたしからキスをすると、テグンが全体的にわたしに覆い被さって来て、服のボタンを外されていった。
これはもう、完璧にそっちのフラグが立ってるよね。
メンバーが帰ってくるまで、あと数時間はある。
それまでテグンと、愛し合っても良いんじゃないかな、なんて。
わたしらしくない…かも。
(…破廉恥だわ。)
(上半身裸で抱き合うなんて。)
(やっちゃったのね。)
(まあ、久しぶりだし。仕方ない。)
(それよりもどうやって起こす?)
(ふたりとも照れて暴れそうよね。)
(どうしよう…。)
(でも、それにしてもなまえ…。)
(うん、キスマークはないわね。)
(違うわよ。…本当、痩せたわね。)
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