白と黒の世界


どれだけ暗闇の中に居たのか。
わたしにはそれが解らなくて。

だけど目が覚めたとき、わたしはひとりで真っ白な世界に居た。

身体はまったく動かない。
動くのは瞳だけで、天井らしき白いものは見えていた。

どうしてこうなったんだっけ…。
確か、BAPと一緒に練習してて…。

ああ、そうだ。
練習室に、本番に使う小道具として置かれていたものが倒れ掛かって来て足に当たったんだった。



「失礼しま……なまえさん!」



しばらくして入って来たのは、女性。
目を開けていたわたしを見て驚いたのか、名前を叫んで誰かを呼んでいた。

…看護師さん、か。
ということは呼んだのは医師で、ここは病院ということになる。

遅れて来た医師の説明によると、もう半月以上眠っていたらしい。
そのとき動いていなかったのかわたしの身体は硬直し、自由に動かなかったということだった。

しばらくすると、身体に自由が利くようになる。
周りを見ると多くの花束なんかが置かれていて、誰かが見舞いに来てくれていたんだと解った。



「足の怪我による大量出血、そして疲労、栄養失調による影響の体重減量により、昏睡状態に陥っていました。」

「栄養、失調…。」

「この職業だとそういった方が多いのですが…きちんと食べてください。」



わたしが眠りこけていた理由は、どうやら栄養失調も関係していた。
食べなきゃいけない、と思っていたのに指が動かなくて、食べられなくて。
後悔の気持ちが脳を支配する。

足の怪我は外傷が酷かったわりには骨に少しヒビが入っている程度で、骨折よりは早く完治出来るらしい。
だけど拒食症一歩手前だったから、という理由で、長く入院するみたいだ。

退院は、体重が元の体重に戻ったら、という条件を出された。
ハードなスケジュールで動く以上、戻さなければ危険だと判断したらしい。



「なまえ!」

「なまえ…良かった…!」

「意識を戻したのね!」

「心配したんだからぁ…!!」



わたしが目を覚ましたその夜。
仕事終わりなのか、メイクをそのままにしたSecretのメンバーが全員で病室を訪れた。

心なしか、みんなの顔色が悪い。
心配したと言うソナの言葉通り、みんな心配してくれたらしく、その表情は疲れ切っていた。

みんなの話しによると、わたしは怪我をした翌日から無期限の活動停止を発表したらしい。
その理由は怪我によるものだと発表したあと、復活の目処は未定と書いたのでゆっくり休養しろと言われた。



「…テグナ、は…?」

「一応事務所が発表したあとに、なまえの携帯から連絡はしておいたわ。詳しくは言ってないんだけど、ね…。」

「そっか…。」



そう言えば、テグンは?

そう思ってジウンに訊くと、ジウンはわたしの携帯を使ってテグンに連絡しておいてくれたと言った。
連絡が届いているなら、ひと安心。

だけど訊けばお見舞いに来ると思ったらしく、病院の名前は告げずに怪我を負ったことだけ伝えたみたいだった。
ジウンのその判断は、正解だと思う。

テグンは知っていたら、ひとりででもお見舞いに来てくれる。
そんな優しい人だからこそ、何かの間違いで記者の人たちに見つからないようにしなきゃいけない。



「…ありがとう。」

「ううん。あたしの判断だから…レオさんに来てほしいなら、ちゃんと言わなきゃ駄目だよ?」

「うん…。解ってる。」



もちろん、テグンに会いたい。
だから来てほしいと思う。
だけどまだ…テグンに熱愛なんて話しが出るのが早いから。

上手く会うためにはどうしたら良いかな、と思いながらも、再び襲って来た睡魔に抗うことなく目を閉じた。






(…なまえ、寝ちゃったね。)

(疲れも相当溜まってたみたいよ。)

(やっぱり、反対すれば良かった。)

(よく頑張ったね、なまえ。)


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