膨らんでいく疑惑
あれからも、ヒョンスンお兄さんはちょこちょこお見舞いに来てくれるようになった。
どうして病院が解ったのか不思議に思ったけど、ヒョンスンお兄さん曰く簡単に事務所が教えてくれたらしい。
まあ、わたしにテグンが居るのはみんな知ってるから、変に騒がれても大丈夫だと思ってるからなんだろうけど。
そんなに簡単に教えて…大丈夫かな。
今日はヒョンスンお兄さんも来ることがなく、暇だったから病院内を散歩することにした。
簡単な変装をしているし、多分バレることはないと思うし。
途中で立ち寄った売店の、雑誌コーナーで目が止まる。
そこにあった週刊誌の表紙に書かれていた字に、目を奪われた。
"Secret 不仲説"
"Secret なまえ・BEAST ヒョンスンのウギョルカップル熱愛か?"
一瞬、呼吸が止まるかと思った。
Secretのメンバーと不仲なんて有り得ないし、ましてやヒョンスンお兄さんとの熱愛なんて…。
根も葉もない噂はどこから流れて来ているのか。
わたしはそれを知りたいという一心でそれが書いてあった2種類の週刊誌を買うことにした。
「…酷い。」
病室で読んだ週刊誌の内容は、あまりにも酷いものだった。
最初に読んだのは、Secret不仲説と書かれていた雑誌。
これを書いたライターは、どうやら病院を割り出すためにSecretのことを尾行していたらしい。
それで、病院に行く気配のないメンバーたちを見て不仲説が浮上したんだ。
Secretのメンバーは今事務所が一番推しているわたしに対抗心か何かを抱いていたのだろう、とか。
リーダーであるヒョソンお姉さんと上手くいっていないらしい、だの。
そんな憶測ばかりの言葉を並べるくせに、不仲だけは断言してあった。
みんなに迷惑を掛けたくないから、と思ってお見舞いに来ることを拒否していたのに…。
まさかそれが裏目に出てしまうだなんて、思ってもみなかった。
「…どう、したら…。」
忙しい彼女たちに、不仲説を撤回してもらえるほど来てもらうのはあまりにも負担が掛かる。
かと言って、事務所にコメントを求めていないし…わたしの独断で今すぐどうのこうと言える雰囲気もない。
大好きなのに。
ヒョソンお姉さんもハナお姉さんも、ジウンもソナも大好きなのに…。
こんなことを書かれると、悲しい。
そして次に見たのは、ヒョンスンお兄さんとの熱愛が書かれた週刊誌。
「っ…!」
どうやらこちらは、ヒョンスンお兄さんを尾行していたらしい。
写真には、ヒョンスンお兄さんがひとりで病院に入る姿があって、ライターも病院を突き止めていた。
怪我も病気もしていないヒョンスンお兄さんが行く、となると、こういう話しが大好きな人たちはいろいろと面白おかしく想像したんだろう。
タイミングがタイミングだからこそ、わたしが居るんだと予想したんだ。
週に何回も病院に通うヒョンスンは恋仲であるわたしに会いに行っている、とか書かれていて、頭が痛くなる。
ただの友だちなのに…どうしてこうなるんだろうか。
芸能界というものはやはり恐ろしい。
「なまえ!」
「、マネージャー…。」
「あなた、それ…っ!」
落ち込んでいると、突然病室に入って来たマネージャー。
マネージャーはわたしの周りにあった週刊誌を見て、目を丸くする。
慌てた様子だから…多分マネージャーも、これを見て来たんだろう。
マネージャーは言い出しにくそうにしながら、あのね…、と口を開いた。
「なまえ、しばらく外出は控えるようにして…?熱愛に関しては向こうも否定しているし、彼はここに入院している知り合いの見舞いに来ていることになって、騒がれたくない病院側も協力してくれたから…見られるとマズイことになっちゃうの…。」
「解り、ました…。」
「…突然来なくなるのも怪しく思われるから、彼には頻度を減らすことを条件に来ても大丈夫にしたから。そんなに落ち込まないで。ね?」
マネージャーの言葉は、予想通りの言葉だった。
わたしの外出禁止。
それはこの病院を特定したメディアの目に触れないようにするためで、落ち着くまでは出られないらしい。
もちろん、必要最低限部屋からも出ることは不可能。
だけど、ヒョンスンお兄さんは…来ても大丈夫みたいだ。
気まずいと思っていたものも消え、今じゃ良いお兄さんとして接していたから…事務所も考慮してくれたみたい。
その細やかな優しさが、今の壊れそうな心には強く響いた。
「不仲説についてはみんなも激怒しているし、大丈夫。そこは任せて。」
「はい…。わたしの、ワガママで…ごめんなさい…。」
「謝らないで?あなたはいつもチームのことを想っていた。ファンにもそれは充分伝わっているから、誰もそんなことで不仲だとは思ってないわよ。」
そして次に、グループの不仲説について言われた。
不仲説に至っては、事務所もメンバーも激怒しているらしく、マネージャーの話を聞く限り任せても大丈夫そう。
どうやら既に、ヒョソンお姉さんたちはTwitterなどで不仲説のことについて言及しているようだった。
メンバーの中でもソナとヒョソンお姉さんが怒っているらしく、この週刊誌が発売された直後に社長室へ行って騒いでいたんだとか…。
良い環境で、素敵なメンバーと出会えて良かったと思う。
個人で思うことはいろいろあるかもしれないけど、わたしは事務所が作ってくれたすべてがとても有り難かった。
「…だけどね、なまえ。」
「はい…?」
「言いにくいんだけど…この病院にレオを呼ぶのは、やめてほしいの。」
「え…?」
少し明るい話題をしていると、マネージャーは再び言い出しにくそうな表情を浮かべた。
そして告げたのは、この病院にテグンを来させないように、ということ。
ハギョンともテグンとも連絡が取れていない今、何も起こっていないけど。
せっかくヒョンスンお兄さんが誤魔化してくれたのに、わたしの腐れ縁でもあると周知のハギョンが来たらマズイことになるから。
だから、マネージャーは控えてほしいんだと言った。
「ごめんなさいね…。今の状況だと、あなたのことはそうやって守ることしか出来ないのよ…。」
「…大丈夫です。メンバーとBAPと同じように、テグナも…わたしが復活してから、会いますから。」
「ありがとう。あなたが退院したら、すぐに会わせてあげるわね。」
「ふふ…。ありがとうございます。」
マネージャーも事務所も、精神的な治療も必要なわたしを気遣って、そして守ってくれているんだと解る。
だからわたしのワガママは、我慢するしかないんだ。
復活すれば、会える。
そう思ったら、早くこの治療を進めたいと思った。
(なまえー。あれ?お話し中?)
(…スンオッパ、話し通ってる?)
(通ってる通ってる。大丈夫!)
(…わたし、不安。)
(奇遇ね…同じく不安だわ…。)
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