不器用
セキセイインコ…じゃなくて、オカメインコのぬいぐるみを持って来てからヒョンスンお兄さんは忙しくなってしまったらしく、お見舞いにはまったく来ていない。
SecretもBAPも会えない今、唯一の同業仲間だったからちょっと寂しい、なんて言わないけど。
でも、本当のお兄さんみたいで、すごく心地良かった。
わたしはお姉さんだから解らなかったけど、歳上の存在って良いのかも…。
「……なまえ。」
「…え?」
ヒョンスンお兄さんから貰ったぬいぐるみを抱き締めていると、ここ最近まったく訊いていなかった愛しい人の声が聞こえて来た。
慌てて病室の入り口に目を向けると、そこにはテグンの姿があって。
テグンは俯いていたから、表情までは伺えなかった。
テグンに近付きたいけど動けない。
来ちゃダメって言っていたのにどうして来たのか問い質したい。
だけど、なんの言葉も出なかった。
「なまえ、俺は、頼りにならない?」
「なん、で…。」
「苦しいときは、一緒に居てやりたかった。支えたかった。けどなまえは…俺になにも言わない。」
ゆっくりと近付いてくるテグン。
近付いて来ていても、ヒョンスンは下を向くばかりで表情は見えない。
頼りにならない?、なんて。
そんなことはないのに、テグンに言えていなかったことも事実。
テグンとの関係を守るために、事務所からの言いつけを守るために、テグンを心配させないために黙っていたことで、今、テグンを傷付けている。
表情は見えないけど、きっとテグンは傷付いているんだ。
「いつかは言ってくれると思って、黙ってた。だけど言われないままなまえは倒れて、そして、病院に入ってからも何も言ってくれない。」
「ごめ、ん…。」
「病院名はハギョンが訊いてくれた。だけど見舞いには来ないよう釘を打たれた、って言ってた。あんな報道があったんだから、仕方ないとは思う。」
テグンの言葉が、胸に突き刺さる。
いつか言ってくれる…いつかは言おうと思っていた。
けど、言う前に限界が来たんだ。
病院に関しては…もう、謝ることしか出来ない。
わたしの自己判断で、言うことを先延ばしにして…。
退院してから会えば良い、と思っていたのが悪かったんだ。
「…ごめん。今、なまえに酷いことしか言えそうにない…。」
「ううん…。わたしが、悪いから。」
「でも、俺が…これ以上傷付けたくない…。少し、距離置かせてくれ…。」
「え…?」
テグンの言葉に、目を見開いた。
距離を置く、って…つまり、別れる、って言いたいの…?
驚きで固まっていると、テグンはもう一度謝ってきて、顔をあげた。
やっと見えた表情は、やっぱり…傷付いた表情を浮かべていて。
わたしは、何も言えなくなった。
「…わか、った…。」
「…ごめん。」
行かないで、離れないで。
距離を、置かないで…。
そう思っても言葉は出て来なくて、テグンが去って行く姿を見守ることしか出来なかった。
自業自得な展開なのに、涙が溢れて止まらない。
テグンを頼ることが出来なかった自分に、激しく後悔する。
もう、離れてほしくなかったのに。
どうしてうまく…出来ないのかな。
((離れないでほしいと思うのに。))
((離れたくないのに…。))
((わたしは、何も言えなかった。))
((俺は距離を置くしか出来ない。))
(((なんで不器用なんだろう…。)))
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