前に進むために


テグンから距離を置かれてから、心にぽっかりと穴が空いたようだった。
あれからリハビリもしなきゃいけないし、体重も増やさなきゃいけないのに上手く出来なくて。

ストレスともやもやだけが、どんどん溜まっていった。



「なまえ久しぶりー。…なまえ?」

「ヒョンスニオッパ…。久しぶり。」



病室でボーッとひとり佇んでいると、ヒョンスンお兄さんが現れた。

お兄さんの存在に気付いても、やはりいつも通りになることは出来なくて。
力なく微笑むと、ヒョンスンお兄さんは不思議そうにわたしを見て来た。

…そうだよね。
ヒョンスンお兄さんには想定外だけど話していて、会っていたのにテグンには話してもいなくて会ってもいないだなんて…おかしい、か。



「何かあった?」

「…んーん、大丈夫。」

「そう?」

「うん。」



何かあった?、と言われても、ヒョンスンお兄さんには言えない。
例えテグンとの関係を知っているからって言っても、これはちょっと…違うような気がするから。

ヒョンスンお兄さんから貰ったオカメインコのぬいぐるみを抱き締める。
するとヒョンスンお兄さんは、優しく微笑みながら頭を撫でてくれた。



「大丈夫なら良いよ。でもなまえは笑ってた方が可愛いから。笑おうよ。」

「…おっぱ、ほっぺ、いたい。」

「あは。ごめんごめん。」



ヒョンスンお兄さんはわたしの両頬を摘んで伸ばしながら、笑おうよ、と言ってくる。
けどそれは無理に引っ張ってるから、ちょっと痛くて。
痛いよ、と言えばお兄さんは笑いながら手を離してくれた。



「ふふ。」

「ん、やっぱりなまえは笑ってた方が良いね。僕が居るときは笑ってよ。」



思わず笑みを溢すと、またしてもヒョンスンお兄さんは頭を撫でてくれる。
僕が居るときは、っていうのがヒョンスンお兄さんらしくて、なんだか心が落ち着いて来た。

距離を置こうと言われたときは悲しかったし、ショックだったけど。
今はショックで落ち込んでいる場合じゃないもんね。
みんなが、待ってくれているから。

早く完治させて、早くテグンに会いに行って、謝らないと。
この前の喧嘩みたいに、うじうじして引き摺って、わたしが悪いのにテグンから謝らせたくないから。

頑張るしか、ないよね。






(なまえ、今日は絵本持ってきた。)

(…え、なんで絵本?)

(暇でしょ?)

(いや、うん、そうなんだけど…。)

(僕が昔大好きだったヤツなんだ。)

((なぜ絵本をチョイスしたの…。))


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