週間アイドル
週間アイドルというものは苦手だ。
なまえは昔、そう言ったけど、正直なところ彼女はバラエティー全般が苦手なような気がする。
「ゲストはー、シークレットー!」
司会のふたりに呼ばれて、あたしたちシークレットが登場する。
末っ子だから気を遣っているのか、それともただ単純にバラエティーが苦手だからなのか。
なまえはいつも最後尾で隠れようとするから、今日は無理矢理腕を引っ張ってあたしの横に並ばせた。
ヒョソンオンニ、とたじろぐようにボソボソと名前を呼んで来たけど、そんなものは無視。
挨拶を済ませると、なまえは諦めたように抵抗をやめた。
「お、今日は珍しくリンが端っこじゃ無いんだな!」
「今日は無理矢理連れてきました。」
「…連れて来られました。」
いつも隅っこに立つなまえがあたしの隣に居れば、そりゃあもう、当たり前に目立つわけで。
目敏く司会がそれを見付けて、なまえに話し掛けた。
とは言え、なまえはカメラの前でもかなりの口下手(本人はカメラが無いとそれなりに話すと思っているけど、そうでも無い)。
あたしがフォローを入れると、なまえもそれに続いて口を開いた。
こうやって、あんまりなまえは話さないけど、人気はある。
なんでもミステリアスな雰囲気が良いらしい。
アイドルがそれで良いのだろうか。
「今日はリン宛のメッセージが、なんと2件も来てるから見てやって!」
「え、あ、ありがとうございます。」
そんななまえのミステリアスな雰囲気に惹かれるのは、なにも一般のファンだけじゃない。
芸能人も然り、なこと。
多分だけど、例の彼も、なまえのミステリアスな部分に惹かれたのだろう。
あたしからしてみたら、お互いどっちもどっちな雰囲気だけどね。
「まずは1件目。ビーエイピー、ジョンオプー!」
『リンヌナ、いつも優しくしてくれてありがとうございます。えっと…、僕も、リンヌナが大好きです。』
小さな画面に映される、ジョンオプの映像。
照れているのか、いつも以上にジョンオプはモジモジとしている。
そしてジョンオプの横に居るヨンジェが、ちょっかい出しているのも、バッチリと映り込んでいた。
なにしてんだか。
「リン、これはジョンオプに返してあげないとだよなー?」
「え、あ…、そう、ですね。…ジョンオパ、ヌナもジョンオパのことが大好きです。これからも、天使なジョンオパで居て下さいね。」
「これは次にビーエイピーが来たときが楽しみだな!」
なまえも司会に促されて、ジョンオプにメッセージを送る。
照れてるとは言えども、サラッと直球を投げて来るジョンオプになまえも照れているらしい。
ふふ、と最後にハニカミを見せるなまえは、女のあたしから見ても最高に可愛らしかった。
ああ、もしあたしが男だったら、絶対彼女していたのに。
あの彼が羨ましくも思える。
「じゃあ、もう1件。今度はヴィクスのエンからのメッセージ!」
『ヤー、リン。最近連絡返してくれないだろ。お前はいつもそうだ。そんなに僕が嫌いか。嫌いじゃないならたまには返事しろ。親友なんだからな!』
次のメッセージは、ヴィクスのエンさんから送られて来たもの。
そう言えば前に、ハギョナからの通知がピコピコと煩いんです、となまえがボヤいていたっけ?
なまえは基本的に、こまめに連絡は出来ないタイプ。
それはエンさんも知っていることなんだろうけど、多分これは、親友だと知った司会に言われて咄嗟に思い浮かんだメッセージなんだろう。
変に誤解されても、エンさんも困るだろうから。
「だそうだけど、リンはエンが嫌いなのか?」
「いえ、違います。彼は数少ない友人でもあり、親友でもあるので。」
「おお、じゃあ親友にも、メッセージを返さないとな!」
「エン、わたしはキミが嫌いでは無いです。でもいつも大量にどうでもいいメッセージや写真を送ってくるのはやめてください。睡眠妨害です。…仕事が終わったら返しますね。」
なまえも、エンさん同様当たり障りの無い返答をする。
ヴィクスもそうだけど、シークレットだって、まだまだ恋愛はタブー。
別に恋愛禁止では無いけど、ヴィクスと熱愛、なんてなってしまうと、ファンが恐ろしく思える。
まあ、ふたりは高校の同級生で、昔からの親友。
そこらへんはきっと、ファンのみんなも知ってるはずだから。
だから多分、大丈夫だろうけどね。
あたしたちの末っ子は、いろんな人に愛されているんです。
(なまえ、エンさんに返すの?)
(返しませんよ。めんどくさい。)
(…ちょっと可哀想になってきた。)
(ハギョナだから良いんですよ。)
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