おかえり


わたしが入院して活動を休止してから約1年後。
ようやく退院することが出来ました。

病院を出るまでは、わたしはまだひとりだけど。
事務所にみんなが待ってくれてる。

早くみんなに会いたくてたまらない。
ファンだってそうだけど、メンバーとも弟とも会えてないから、やっぱり寂しかった。

マネージャーの運転で、まずは事務所へと向かう。
社長に挨拶して、そして宿舎に戻ってみんなに会わなきゃね。



「失礼します。」

「おかえり、リン。もう万全かい?」

「はい。いつでもステージに立つことが出来ます。」



社長室に入り、社長に復活したことの報告を済ませる。
予想以上に社長は笑顔でわたしを迎えてくれて、安心した。
怒られるかなって思ってたからね。

報告を済ませたら宿舎に帰るつもりだったのに、マネージャーに引っ張られてレコーディングルームに向かう。
どうやらカムバックが決まっているらしく、取り敢えずはレコーディングを済ませてほしいらしい。
まあ、時間は取られるけど…夜中までに帰れるなら良いか。

まずはボイストレーニングを受けて、レッスンをしてからレコーディング。
久しぶりなのにこんなにハードスケジュールだなんて、笑ってしまう。
それが芸能界なんだろうけどね。



「先生、お久しぶりで……え?」

「おかえり、なまえ!」

「なまえヌナ!おかえりなさい!」

「心配したんだからな。」

「もう倒れないでよね?」



出迎えたのは久しぶりに会うボイストレーニングの先生ではなく。
SecretとBAPのみんなだった。

たくさんの花束を持って、わたしのことを笑顔で見つめるメンバー。
レコーディングは?レッスンは?、と慌てていると、そのことは嘘なのだと聞かされた。
…騙されたってわけね。

でも、騙されたことよりも。
みんなが笑顔で出迎えてくれたことが嬉しくて…涙が溢れる。



「た、ただいま…!」

「なまえヌナー、泣かないでよ。」

「本当、なまえは泣き虫ね。」



デヒョン抱き締められ、反対側からソナに抱き締められる。
約1年ぶりに再会したメンバーと弟たちは、立派に成長していた。



「なまえ、待ってくれている人が居るから…外に出ましょう?」

「待ってくれている人…?」



わたしが泣いていると、ヒョソンお姉さんから肩を叩かれる。
なに?、という意味を込めて首を傾げるとヒョソンお姉さんは、待っている人が居るから取り敢えず事務所を出よう、と言ってきた。

待ってくれている人、というのはファンのこと…なのだろうか。
でも確かに、事務所を張っているマスコミが居たらわたしが退院したことなんて、知れ渡っているだろう。



「………え?」

「おかえり。」



だけど、待っていたのはファンだけじゃなかった。
もちろんファンも居たしマスコミも居たけど、それよりも驚いた人。

わたしが一番逢いたくて。
一番、謝りたかった人だった。



「て、ぐな…。」

「なまえ。」



その場に居たのは、テグンで。
テグンがその場に居てくれたことはすごく嬉しいけど、わたしの理性と警報がストップと叫ぶ。

ファンもたくさん居て、マスコミも居る中で。
おいで、と言わんばかりに広げられている手の中に飛び込んでも良いのか。



「俺はなまえと会わなかった1年で、認めてもらえるように頑張った。メンバーも反対してない。見守ってくれるって言った。だから…もう、なまえのことを離したくない。」



テグンは、わたしと距離を置いてからずっと頑張ってくれたらしい。
VIXXのみんなも、人気が減ることを覚悟して応援してくれるみたいで。
だけどわたしは、迷っていた。

Secretのこともあるし、テグンだってまだまだ売り出し中なのに…。
こんな公開をしても良いのか、と…。



「なまえ、行きなさい。」

「あたしたちなら大丈夫。」

「付き合って5年は経つんでしょ?もう公開しても良いじゃない。ね?」

「SecretもVIXXと同じ気持ちだから安心して!」



わたしの迷いなんてもの、メンバーにはお見通しだったらしくて。
みんなに背中を押されて、わたしはテグンの腕の中に収まった。

ファンから悲鳴が聞こえると思っていたのに、何も聞こえない。
聞こえて来るのは拍手とフラッシュの音だけで、批判は届いて来なかった。

これは、どういうこと…?



「これからは堂々と見守りたい。だから、両方の事務所に許可を取った。」

「え…?ちょっと、話しに…ついていけない、んだけど…。」



テグンの言葉に疑問が募る。
どういうことなのか必死に理解しようと頭を捻らせていると、テグンから優しく口付けられた。

パクパクと口を動かすわたしと、今度こそ届いて来たみんなの悲鳴。
こんなこと、テグンは人前でするようなタイプじゃないのに…。

わたしの頭は、さらにパンクしそうになっていた。



「事務所が5年間を認めてくれた。だからもう、堂々としても良いんだ。」



テグン曰く、わたしが退院する少し前に事務所が先に発表したらしい。
しかもテグンが直々に、側に居て支えてあげられるように報告したい、と言ったみたいだ。

そんなドラマみたいな話し、誰が信じられる?
でも、そんな陳腐なドラマのようなストーリーであっても、嬉しいと思ってしまう自分が居て。
わたしを守ってくれるために覚悟してくれたテグンが、愛しいと思った。



「テグナ、あのときはごめんなさい。そして…ありがとう。愛してる…。」

「…俺も。」



みんなに見守られた仲直りは今までで一番恥ずかしくて。
そして、心が温かかった。






(なまえヌナぁ…。)

(黙れよシスコン。)

(ヨンジェ酷い!)

(やっと堂々と出来るね。)

(まったく、疲れるわ本当。)

(でも幸せそうで…良かった。)

(そうね。)


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