キミは、ぼくらのお姫様


目の前で踏ん反り返るは、俺らのお姫様。どうやら機嫌が悪いらしい彼女は、先輩である赤西くんの実の妹である。そんな彼女は先ほど言ったように、機嫌が悪いらしい。



「どうしたの?そんなしかめっ面して。」

「……なんでもない。」



彼女は、赤西くんに似て顔が整っている。しかも性別こそは女であるが、僕たち男も負けるほどの綺麗な男顔。だからこそ、この事務所で異例の女性メンバーであっても彼女のことを好くファンが多いんだろう。

そんな彼女の今は、綺麗な顔が歪むほどの、しかめっ面。何があったかは解らないけれど、常にマイペースな彼女の不機嫌はそう珍しいことなんかではない。

−−−どうしたの?…そう聞いて素直に返事が返って来るとは思っていなかった。だから予想通りの返答には、苦笑いを浮かべる他ない。



「ねぇ大ちゃん。なまえちゃんはなんであんなに不機嫌なのかな?」

「知念、俺があいつのことをなんでも知ってると思ったら大間違いだからな。」

「別にそこまでは思ってないけどさあ。」

「それはそれで腹立つ!」



彼女が不機嫌なことに気付いたのは、何も俺だけじゃなくて。知念もそれに気付いたらしく、理由を大ちゃんに聞いていた。いくらあのふたりが他のメンバー同士よりも仲が良いって言っても、さすがに知らないと思うけど。

すぐに興味をなくした知念に対し、ぶつぶつと文句を言う大ちゃんから視線を逸らす。まあ、相手が素直に答えをくれないとは言ったけど、どうせ彼女のことだから…。



「なまえ〜〜〜!!」

「…遅い。」

「ほんっとごめん!!」



彼女の不機嫌な理由を推測していると、ドタバタと大きな足音を立てて光くんが部屋に入って来た。光くんは入るなり「ごめん」と謝ってるし…俺の予想は当たりかな?

息を切らして彼女に近付き、なにかを差し出している光くん。その手にはこの前テレビで紹介されていた、超絶人気な有名店の紙袋。確か…シュークリームが有名だったっけ。

数量限定ではないにしろ、あそこの品物を買うには長蛇の列に並ばなきゃいけないはず。あ、そっか。だから今日、光くんは別集合だってマネージャーが言ってたのか…なるほど、そういうことね。納得、納得。



「次はないから。」

「もう絶っっっ対しない!!」



光くんから受け取った紙袋の中から、シュークリームをひとつ取り出して食べる彼女の表情には、不機嫌さは無かった。光くん関係なんだろうなあ、とは思ってたけど、食べ物が一番の理由だったわけね。そりゃあ怒るわ。だってあの人、食べるのが大好きだし。

黙々とシュークリームを食べている彼女の横に座り、光くんは延々と「美味しい?」とか「食べてるなまえも本当かわいい」とか口煩く話している。普段の楽屋じゃ寝ることが多くて、話すことも少ないくせに…そんなに話し掛けたらまた怒られるよ。



「ひかるくん煩いな!りょうすけ!この煩い人どっかにやって!」

「え、無理。」



案の定、しつこい光くんには彼女からの雷が落とされていました。それでしょんぼりしててもかわいくないし、自業自得だからね。

あと近場にいた俺のこと、巻き込まないで。


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