素直過ぎたお姫様


「もったいないな。」

「え?」



突然、彼女はそう呟いた。



「けいとはもっと、評価されるべきなのに。」

「どうしたの?急に。」

「りょうすけは歌、上手いよ。僕より数段。でも、けいともすごく上手いんだよ。」

「………?」



それは本当に、突然だった。

イヤホンをつけて音楽でも聴きながら寝ているんだろうな。−−−そう思いながら、横に座って僕の肩に頭を乗せる彼女…なまえちゃんを見ていた。だから静かにしてたのに。

起こさないように注意していたのにもかかわらず、彼女はむくりと起き上がって一言。もったいない。何か食べ物でも落とす夢見たのかな。

意味は解らなかったけど、すこしずつ話しを砕いていくとどうにも僕のことを言っているように思えた。僕がもったいない、とは?



「僕はね、けいとの歌声、好きなんだ。笑い声も話し声も。心地が良い。」

「……すっごい照れる…。」

「時計。すごく良い。けいとのハーモニーが綺麗。でも、もっとけいとの声が欲しい。」

「え、それ聴いてるの?」

「うん。」



うん。話してたら解ってきた。なまえちゃんは僕と山ちゃんの曲を聴いてたんだね。嬉しいけど、べた褒めされ過ぎて恥ずかしい。

小さく笑って「ありがとう」と。そう呟けばなまえちゃんも笑ってくれると思ったのに、彼女は笑うどころかどんどん不機嫌になる。どうしよう。地雷でも踏んじゃったかな…。



「けいと、今度、僕に歌って。」

「え?」

「カラオケでも、電話でも、録音でもなんでもいいんだ。けいとだけの歌声なら、何でも。」



僕の歌がほしい、って…?録音…え、え?待って。話しについていけない。いや、彼女が僕に歌ってほしいって言ってるのは解るけど。

それこそCDを聴けば済む話なんだけど、きっとそれを言っても彼女は納得しない。それどころか、さらに不機嫌になるはず。困ったな。



「けいとが僕に向けて、僕のためだけに歌ってくれたらそれで良いんだ。」

「…だから、ちょっと、恥ずかしいって…。」



彼女はそう言ったと思ったら、さっきの定位置であった僕の肩に頭を乗せた。耳にはイヤホンを刺したまま。今度こそ寝るのかな。

きっと、彼女のあの言葉に別の意味が含まれていることはない。ただ、素直に思ったことを口にしただけなんだろうけど…。



「ん?圭人どうしたの?顔赤いよ?」

「………なんでもないから、大丈夫…。」



他に意味がなくても、それはすごく嬉しくて堪らない言葉。照れているのが顔にも出ていたのか、裕翔に突かれてしまった。恥ずかしい。


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