#novel1_#

今週の出来事の一覧がテレビの中で並べられて、ニュースキャスターが読み上げていく。
隣の県で殺人事件が起こった。母親を包丁で滅多刺しにして自分も死のうと手首を切ったけど結局は意識朦朧の中、自首をしたという、さして凶悪犯罪にもなりきれないような事件。
私が何故そんなニュースに釘付けになったかと言えば、見覚えのある家の画像と名前が出たからだ。

刑務所なんて縁遠い世界だと思っていたけれど、いざ行って見ると面会に来た普通の人たちが屯っていて、なんだか病院の待合い室にいるようだった。通された個室では刑事ドラマでもよく見かける、仕切りが用意されていて。向こう側の扉が開くと、化粧っ気のない彼女が質素な服を着て現れた。
「何で来てくれたの」
「そりゃあ、」
元恋人ですから。
端のデスクに腰掛けている警官の前で言って良いのか躊躇った。レズビアンとばれて良いの?そんな疑問を視線で送ったが、気付いたかどうかは分からない。
「迷惑?」
「びっくりした、でもあなたの方がびっくりした、よね」
彼女は小首を傾げて微笑んだ。
「嬉しいよ」

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