ビターとスイート




 テーブルの上に黒色の小袋が散らばり、そのうち1つは既に開封されている。袋の中には真ん丸に形成された茶色いお菓子が入っていて、悟の手の平にコロンと落とす。
 様々な角度から興味深そうに眺めると大きな口を開けそれを口に頬張った。と思ったら途端に眉間にしわを寄せ顔を歪めた。

 「う゛ぇっ、んだよこれ、にっが!」
 「だから言ったじゃん、悟には食べられないって」

 悟に渡した物は私が最近よく食べてるチョコレートで、これを俺にも食べさせろと言い出したのが事の始まりだった。

 コンビニに行ったときにお試しで買ってみたチョコレート。カカオ配合80%以上のそれは口に入れると苦みが強いがあと引く美味さが癖になり甘い物が苦手な硝子もこれならイケるかも、と言うほどだ。
 普段からいちごオレや甘ったるいスイーツを食べてる悟には苦い、食べれないと思うから止めた方がいいと忠告したのにこの様だった。

 「んなのチョコじゃねぇだろ。苦すぎ」
 「いや、苦いよって言った…」
 「ここまで苦いとは思わねーよ!」

 顔を顰めながらなんとか飲み込むとウゲェーっと舌を出す不機嫌な表情に自業自得でしょ、と思いつつチョコレートをもう2つ取り出す。
 先ほどの物とは違い、赤色と青色の華やかな包み紙に包装されているそれはまるでキャンディのような見た目をしていて、彼好みのめちゃめちゃ甘いチョコレートだからこれで機嫌を治してもらおう。

 「はい、これあげるから。口直しにどうぞ」
 「…また苦いやつじゃねーよな?」
 「大丈夫だって、普通のミルクチョコレートだから」

 青色の包装紙を丁寧に解いて手の上に乗せてあげると暫く怪しんだように凝視しておそるおそる頬張る。もぐもぐと味わうと次第に怪訝な表情が和らいでいく。
 見た目や口の悪さから嫌煙される事もある悟だけど、感情が顔に出やすく分かり易い所が可愛いなって思ってるのは内緒だったりする。
 
 ふふん、と独りでに笑い残っていた赤色の袋の封を開け頬張る。人肌でチョコがトロリと溶け出し口いっぱいに広がる甘みに頬が緩む。

 「…まぁまぁだな」
 「素直に美味しいって言えばいいのに」
 「うっせーな。もう1個寄こせ」
 「え、もうないよ。それで終わり」

 おかわりを催促してきた為、両手をあげて何もないよと見せる。目元を隠していたサングラスを外し青い瞳にじっと見つめられると「…じゃあこっち」と言って手首を掴まれる。そのまま強い力で引き寄せられ顔が近づくと唇が触れた。

 「ちょ、……!」
 「大人しくしろって」
 
 驚いて反射的に逃げようとする私の後頭部を大きな手で固定すると角度を変えて何度も唇を重ねてくる。
 されるがままになりやっと唇が離れると悟は自分の唇をペロリと舐めニヤリとした笑みを浮かべて耳元で囁いた。

 「ごちそーさん」


 ※2021/11/8 Twitter掲載
 
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