はじけるぱちぱち
只今の時刻は午前10時、温度計は30℃を超えてる。連日続く茹だるような暑さに朝からバテ気味だった。
日々の鍛錬で体力は少しずつ付いてきてるが、それでも湿気を含んだ暑さには勝てない。
毎年なんとか現象の影響で今年は猛暑になる予報ですとか言ってるが、ここ数年ずっと同じことを言ってる気がする。兎に角今年も暑い夏なのは間違いない。
「あっっっっつ!!空気があちぃ!」
「虎杖〜暑いって言うと余計暑くなるから言わないで…」
そんな暑い中私と虎杖はコンビニ袋を下げながら高専まで続く坂道を歩いていた。予定されてた任務が急遽延期になり不意に舞い込んできた休日。しかも丸1日。滅多にない自由時間を確保出来た私はクーラーが効いた部屋で映画でも見ようとお菓子や飲み物を買いに行った先で任務終わりの彼と遭遇したのだ。
任務終わりなら補助監督も居るはずだが駐車場に見慣れた車はなかった。
「あれ…虎杖1人?高専の車ないみたいだけど」
「あ〜なんか次の任務の送迎行った。時間早まったってさ」
ここなら高専に近いからと、自ら車を降りて買い物をしていたらしい。
それぞれ必要な物を買い揃えると先程降りてきた道を2人並んで歩きだした。
「名字は何買ったん?」
「ポテチとコーラ!お昼から映画見ようと思っててそのお供にって思って」
「わかる!やっぱおうち映画はポテチとコーラだよな〜!何見んの?」
「今日はアクション物!昔から好きなんだよねー。虎杖は何買ったの?」
「俺もお菓子と、これ!すっげー喉乾いててコーラと迷ったけどこっちにした!」
ガサガサと袋の中からサイダーが入ったペットボトルを取り出して見せてくれた。最近よくCMで流れてる期間限定フレーバーでコンビニ限定の商品だ。
ラフなTシャツ姿の私と違い、制服を着てる虎杖は鬱陶しい暑さに首筋に汗が流れてる。寮まで我慢出来なかったのか無理!もう飲むわ!と蓋を開けると炭酸が抜ける音が響く。そのまま一気に呷るとゴクゴクと喉仏を上下させながら半分ほど飲み干した。
「美味しそうに飲むねー。私もそっちにすればよかったなぁ。やっぱ買ってこようかな」
「んー、じゃあ飲む?戻るのめんどくね?」
「いいの!?ありがとう!」
差し出されたペットボトルを受け取るとグビっと一口飲んだ。暑さで乾いた喉にシュワッとした刺激が走って気持ちいい。
「ん〜…これ美味しいね!」
「だろ?高専の自販機に入れてくんねーかな」
「五条先生に頼んでみる?あの人にお願いしたら何とかしてくれそうなイメージはあるけど」
「あー…確かに」
「戻ったら探してみよ。あ、虎杖これありが…」
3分の1程まで減ってしまったペットボトルを返そうと思って、ハッと気付いた。
あっ…まって、これ…
「名字?」
「い、虎杖…ごめん、これ…普通に口付けちゃった…」
「え?…あっ」
虎杖も私が言わんとしてることを理解すると段々顔が赤く染まる。きっと私も同じくらい赤いと思う。
「わ、わり…俺も普通に渡しちまった…」
「う、ううん…えっと、あの…ホント美味しかった…です?」
「ヨカッタデス…」
サイダーの蓋を閉めると袋の中に戻しどちらからともなく再び歩きだす。
暑さと恥ずかしさからじわりと汗ばんでいる体に生温い風が纏わりついていた。
少し前を歩く虎杖は小声でよしっと呟くと「名字」と名前を呼んできた。
「映画って釘崎と見んの?」
「ううん、誘ったけど興味無いって言われちゃったから1人で見よっかなーって思ってるよ。」
「そっか、…それ俺も一緒に見ていい?」
お前の好きなものもっと知りたいから。なんて言われちゃったら断れないよね。
いいよ、と言うかわりに首を縦に振ると嬉しそうにガッツポーズしていた。
高専に戻ってから見ていたよ、楽しげに笑う五条先生に揶揄われるのはまた別の話。
※2021/7/4 Twitter掲載
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