03
ぶるりと震えるような肌寒さで目が覚めた。目を開けた先には見慣れない部屋が広がり頭が覚醒していくと共に昨晩の記憶が徐々に鮮明になっていく。そうだ、昨日はスグルさんの家で……。
「はい……はい、よろしくお願いします。では、失礼します」
声がした方に寝返りを打つとダークグレーのカーテンが掛かった窓辺でスグルさんが誰かと電話しているようだった。10cmほど開かれたカーテンの奥からは朝の白い光が差し込んでいる。
「おや、おはよう。起こしてしまったかい?」
わたしが目を覚ました事に気付いたスグルさんは「こっちにおいて」と手招きする。気怠い身体を起こすと晒していた筈の肌はぶかぶかの黒いスウェットに覆われていた。
……下は何も履いていなかったが。
「おはようございます。どうしたんですか?」
「外、見てみて」
シャッとカーテンが開かれ眩しさに目が眩む。光に慣れてくると目の前に広がる景色に声をあげた。
「わぁ!雪!」
昨日までアスファルトが剥き出しだった街は一夜にして銀世界に変わっていた。どうりで今朝は寒いわけだ。
「ホワイトクリスマスですね!」
「そうだね、さっきニュース見たら東京でホワイトクリスマスになったのは初めてらしいよ」
「そうなんですか!?確かに、クリスマスに雪積もってた記憶ないかも……」
空から雪の結晶が降り注ぐのを眺めていると後ろから抱きしめられた。ベッドから持ってきた毛布で包み込まれ、こんなに冷えた朝でもスグルさんの体温はぽかぽかと暖かくて安心する。
「ついでに言うとこの雪で公共交通機関は始発から運休だって」
「そうなんですね。……え、じゃあスグルさん今日のお仕事どうするんですか?」
クリスマスとはいえ、カレンダー上は平日。しかも誰もが憂鬱になる月曜日だ。
わたしは運良く冬休みに突入しているからいいが、社会人であるスグルさんは会社がある。まさかこんな中でも出勤するのか……と心配していたらくすり、と笑われた。
「今のところ、復旧の目処もたっていないし今日は休みにしたよ」
「……!そうなんですね」
よかった……と安堵していると「だけど1つ問題があってね」と言いぶ厚い手のひらが太ももを撫で上げる。
「ひ、っゃ!」
「この雪で電車は走っていないし、道路も凍結してあちこちで渋滞している。私も雪道の運転には慣れていなくてね」
スウェットの裾から差し込んだ手がお尻に円を描くように動き回りピクっと肩が跳ねる。
「残念ながら君を家まで送り届ける事が出来ないんだ。歩いて帰るにも雪道は危ないだろう?」
「んっ……」
「だから、電車が動くまで
後ろから顎を持ち上げられ「そうするだろう?」と顔を覗き込まれる。はいかYESと答えるしかない状況にこくり、と小さく頷き後ろを向いてスグルさんの背中に腕を回す。
「じゃあ……もう少しだけお邪魔させてもらいます」
「ごゆっくりどうぞ。……ここにいると寒いから、アッチ行こうか」
チラリと向いた視線の先には先程まで微睡んでいたベッドがある。身体を抱き上げられるとずるずると毛布を引きずりながらベッドに降ろされる。上に跨りふわふわとした毛布と一緒に覆いかぶさってくる筋肉の心地よい重さにうっとりと目を細める。
スグルさんが身動ぎすると隙間から入り込む冷たい空気にぶるりと身体が震えた。
「寒い?」
「寒い、ので暖めてください」
「……いいよ」
ゆるりとした笑みを浮かべ頭を撫でられる。
スグルさんは毛布の中に潜り込みスウェットの中に頭を突っ込んで柔らかい所に吸い付かれる。チリっとした痛みが走りもう今日はここから動けないんだろうな、とどこか他人事のように考えていた。
窓の外はまだ雪がチラホラと舞踊っている。このままもう少し降り続いて街を白く染め続けてくれますように、とこっそり願っていた。
Happy Merry Xmas.
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