幸せな夜光の残滓


 ※香る程度の夜表現有ります。




















 任務や出張ですれ違いの生活が続いていた悟と同じベッドに入るのは2週間ぶりだった。それだけ会えていなければ触れ合いたくなるのは当然で、家に帰るなり玄関先で身体をまさぐられお風呂で熱を分け合いたどり着いたベッドの上で何度も身体を重ねた。

 ぐしゃぐしゃになったシーツに埋もれ漸く一息ついた頃には既に日付けが変わっていた。家に着いたのが夜の8時過ぎだったから4時間近くひたすらお互いを求めあっていた事になる。あと数年で30歳を迎えると言うのに衰えを知らない悟の性欲にこの先着いていけるのかと心配になるが、身体のあちこちに刻まれた赤い痕は紛れもない彼の、彼等の大きすぎる愛の証だと突きつけられる気がして胸が疼く。
 ぼんやりとした頭でいくつか増えた痕を指先でなぞっていると背後のマットレスが沈み逞しい腕に抱きしめられた。

 「なーに自分のおっぱい触ってんの?まだ物足りなかった?」
 「違うってば!その、また増えたな〜って思ってただけ」
 「出張前に付けたの薄くなってたからね」

 腹部に回された手がゆっくりと肌を滑り鬱血痕を一つ一つ確かめる様に撫でていく。くびれから徐々に中心に移動した指先はお臍の少し横を軽く押し込む。
 そこは前回愛された証を刻まれた場所で、時間の経過と共に肌色に戻っていた。にも関わらず再び同じ場所に吸いつかれ再び肌に散る花弁として存在感を放っていた。

 「今回の出張予定より伸びちゃってごめんね。寂しかったでしょ?」
 「まあ、仕事だし仕方ないよ」
 「そこはうるうるした目で『悟に会えなくて寂しかった♡』とか言ってよ」
 「えー……わたしそんなキャラじゃないでしょ?」

 擦り寄る白髪の擽ったさに肩を竦める。
 
 寂しくなかった、と言えば嘘になるがメッセージを送りあったり時間が合えば電話をしお互いの声を聞いたりは出来ていた。それでも今日久々に顔を見て手に触れて肌を重ね合い、ふわふわとした幸福感に満たされ心の奥底では寂しいと感じていたのかなとも思う。――なんて、恥ずかしくて言えないけど。

 そんな事を考えていたら腹部を撫でていた手が徐々に上にあがり、胸の膨らみに触れるとやんわりとした手付きで動き出した。

 「んっ、ちょっと……」
 「なあに?」
 「も、シないってば……」
 「え〜?ダメなの?」
 「だめ」

 悟の手に自分の手を重ね咎めようとしても悪戯に動く手の平にわたしの体温は上がっていく。久々とは言え明日も当たり前のように任務が控えている。普通の女の人ひとより体力があってもパフォーマンスの維持を考えれば今日はこのまま寝た方が絶対いいのに。
 
 「ねえナマエ、こっち見て」

 そう1人葛藤していても耳元で響く甘い声にスイッチは簡単に切り替わってしまう。横目で見上げるとゆるりと笑みを描いた唇が耳の縁をなぞり耳朶を食む。あむあむ、と柔らかさを堪能し軽く歯を立てて甘噛みされると背中にゾワゾワとしたものが走り抜けた。

 「さとる……ッ」
 「本当に嫌なら殴っていいよ。でも僕はだまだ物足りないし、なんなら朝までナマエの事離したくない」

 耳朶からこめかみ、頬へとキスされながらシーツの中で再び組み敷かれる。枕を掴む手を取られ指を絡めて繋ぐと「ただいま」と呟き唇が重なる。そう言えば今日はまだちゃんと言ってなかったな、と思いながら「おかえり」の意を込めて伸ばした舌で彼の唇を撫でる。


 淡いダウンライトで照らされた2人の熱い吐息は窓の外が明るくなるまで止まることはなかった。 








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