三種の林檎のお味はいかが?

▷chapter: Apple of Epel

急いで食堂に駆け込むもすでに多くの生徒達でごった返していた。

これも全てグリムのせいである。
四限目の魔法薬学の授業が終わるや否や、デラックスメンチカツサンドを目当てに、エース、デュースと共に教室を飛び出していった———机の上のビーカーを盛大に割って。
パンの事しか考えていないグリムにはもちろんその音は聞こえずに、しかしクルーウェル先生には聞こえていたわけで“監督生”である私が片付ける羽目になった。「監督不行き届き」という言葉にさすがにはらわたが煮えくり返りそうになったが、ビーカーを割った分の反省文を課せられたのがグリムだけであったのはまだ救いだ。

それはともかく、私もお腹が空いているわけで早く昼食にあり付きたいところである。しかし、出遅れたせいでビュッフェ形式の食堂であっても色んなところで人が密集して込み合っている。何とか腕を伸ばして適当なものをトレーに乗せ、席を探すことにした。

グリム達を探そうにもやはり人が多くて見つからない。午後一の授業は飛行術の授業だから着替えも必要だし、これ以上時間を無駄には出来ない。

「席を探しているのか?」

一人で食べるのも致し方なし、と空席を探しているとふと声が掛けられた。
近くの席に座っていたのはスカラビア寮のジャミル・バイパーであり、彼は私の目も見てもう一度同じセリフを言った。

「そうなんです。この時間帯は混んでいてなかなか見つからなくて……」
「この席を使ったらいい。カリムが今しがた席を立ったからな」

確かにジャミルさんの前の席には誰も座っていなかった。この人とは正直あまり話したことがないのだが良いのだろうか…しかし、これ以上席探しをするのは億劫である。それに私のお腹も限界だ。

「ではお言葉に甘えて。ありがとうございます」
「あぁ」

これでようやくお昼にあり付けると、サンドイッチを手に取って一口かじる。パンは月一で来てくれるベーカリーのものと言うが食堂のゴーストたちが作ってくれたサンドイッチも十分に美味しい。グリムもあんなに躍起になって買いに行かなくていいのに。

「おい」
「はい?」
「お前、昼食はそれだけか…?」

目が合えば、あまり表情を表に出さなそうなジャミルさんが目を丸くして私のトレーを見ていた。そこにはサンドイッチとリンゴジュースが置かれている。
ジャミルさんが言いたいことは分かる。私は決して小食ではないし、せめてあとサラダとスープくらいは欲しかったなぁとは思っている。しかし男子生徒の波をかき分けてまで手に入れる気力はなかった。

「人が多くてこれだけしか手に入らなかったんです」
「カリムはその十倍の量の飯は食っていたぞ。足りるのか?」
「そこはまぁ、なんとか……」

曖昧に返事をすれば、彼は荷物の中から透明な容器を取り出した。
蓋を開けると少し毒々しい色合いの果実が詰められていた。南国を思わせるような綺麗なビビットカラーである。

「よかったらこれを食え。余り物で悪いが足しにはなるだろう」
「いいんですか?」
「口に合えばいいが」

淡々とそういって私の前にそれを差し出す。
どうやらデザートは持参していたらしい。しかしお腹いっぱいになってしまったカリムさんに食べられることなく持って帰るところだったそうな。
ジャミルさん、仏頂面で話しづらいイメージだったがめちゃくちゃ良い人ではないか。そういえば愛と慈愛の神とされるクリシュナという神様がいたような。もしやその化身か。

「嬉しいです。ありがとうございます!」
「俺ももう行く。じゃあな」

席を立ったジャミルさんに頭を下げ、食事を再開させた。
頂いた果物は甘酸っぱくて爽やかで、お腹が膨れた私は無事に午後の授業を乗り切ることができた。





「おはよう。朝会うのは久しぶりだね」
「エペル、おはよう」

教室に向かって廊下を歩いているとエペルに声を掛けられた。朝に会うのは久しぶりだけど、彼とは選択授業が被ることが多いから会うこと自体が久しいわけではない。それでもエペルは懐っこい笑顔を浮かべて私の隣に並んだ。

「動物言語学の課題やってきた?」
「うん、だけど自信ないかも。特に最後のネコ語の訳が……あっ、ジャミルさん!」

数メートル先に束ねられた黒髪が見えた。
私は先日の容器を返さねばと彼の元まで走っていった。

「ん?どうした?」
「先日はありがとうございました。これお返しします」

洗った容器を差し出せば「渡したままだったな」とつぶやいてそれを受け取った。

「あんな甘くて美味しい果物久しぶりに食べました」
「そうか。あれは俺達の故郷から送られてきたものなんだ。また手に入ったら分けてやる」
「本当ですか?楽しみにしてます」

自分の教室へと向かうジャミルさんを見送って、そういえばエペルを置いてきてしまったことに気付く。

「ねぇ、なんであの人と仲良くなってるの?」
「うわぁ!?」

急いで戻ろうと、方向転換をする前に耳元で声が掛けられる。慌てて振り返ると、彼は眉間に皺をよせ先ほどとは真逆の不機嫌な顔をしていた。

「エペル、どうしたの?」
「なんでジャミルさんと仲良くなってるの?」

もう一度同じことを聞かれ、先日の食堂の一件を話した。

「なにそれ…ずるい」
「エペルも果物食べたかったの?それだったらジャミルさんにお願いして…」
「いや、そうじゃなくて」
「うん?」
「……僕に時間をちょうだい」
「え?」
「今日は先に行くね。それじゃあ」

方向転換をしてエペルは教室へと向かう生徒たちの波の中へ消えてしまった。
怒っているわけではないようだったが、何か悪い事でもしてしまったのだろうか。動物言語学の授業の時に話しかけようと思いながら私も自分の教室へと向かった。





今日は放課後に部活がないから、君の時間をもらっていい?

そうエペルお願いされて私はオンボロ寮の裏手にある小さな森へ向かった。彼曰く、先日この森のなかで穴場スポットを見つけたらしい。
因みにグリムはエースたちとマジフトをするんだと言って鐘が鳴るや否や教室を飛び出していったので私一人だ。

オンボロ寮に荷物を置いて森に入る。エペルには道なりに進んで来てと言われていたが、確かに草が生えていない獣道が続いていて迷わずに進めそうである。
数分歩くと開けた広場に出て、すでにエペルが色々と準備をして待っていた。
切り株にはテーブルクロスが敷かれていてその上にはお皿が、さらに椅子になりそうな大き目の石が二つ用意されていた。

「ようこそお越しくださいました」
「お招き頂きありがとうございます」

芝居じみた挨拶をして、目が合ってふたりで笑いあった。
勧められるがまま石の上に座り、彼は切り株の上にいくつか林檎を並べた。

「真っ赤な林檎だね。美味しそう」
「ふふっありがとう。じゃあ今からこれに魔法をかけたいと思います」

そういうとエペルはペティナイフを取り出して一つの林檎を手に持った。マジカルペンではないのかと思いながら見ていると、彼はシャリシャリと皮をむいていく。

「これって……」
「小鳥です。どうでしょう?」

初めは形が分からなかったがお皿に置かれて改めて見ると、林檎が小鳥の形を模して切られていた。羽の部分は薄く切込みが入っていて立体的に見える。その繊細な造りに今にも飛び立つ気さえ思えた。

「次はこれ、何に見える?」
「猫…?あっもしかしてルチウス?」
「正解!目が座っている感じが似てるでしょ?」

トレイン先生もこれを見たらきっと驚くに違いない。
すごいすごいと感動していればエペルは嬉しそうに笑った。

「僕、細工切りが得意なんだ。魔法じゃないから動かないけど…」
「すごいよ!魔法よりもずっとずっと凄いし、素敵だよ」
「ありがとう」

じゃあ次はとっておき!と彼は言って一等赤い林檎を手に取ってペティナイフを動かす。
まるで魔法みたいな彼の手の動きを私はじっと見つめた。

「何かわかる?」

今までのものよりかは幾分シンプルな細工が施された林檎が差し出される。それを手に持って色々な角度から見てみても何か見当もつかなかった。

「なんだろう……」
「正解はね、毒林檎」
「えっ!?うそ!?」

驚いた私の顔を見て、ふふっとエペルは笑う。
改めて手に持った真っ赤な林檎を見つめる。毒々しいほどの赤ではあるが、この中では一番美味しそうに見える。エペルは魔法を使ってないし、そもそも毒林檎だったのだろうか。トリカブトやスズラン等綺麗な花ほど毒があるし分からなくもないけど…

「ねぇ一口食べてみない?」
「え、毒林檎でしょ?食べたら死んじゃうんじゃ…」
「どうかなぁ」
「えぇ…何その反応。怖くて食べられないよ」
「ねぇ、こんな話は知ってる?昔々、毒林檎を食べて死んでしまったお姫様は王子様のキスによって目を覚ましたんだって。だから大丈夫」
「大丈夫ってどういう意味?」

もー鈍いなぁと言ってエペルはぐっと近づいて私の耳元に口を寄せた。

「君が死んでも僕が目覚めさせてあげる」
「っ!?」

彼の吐息がこそばゆく、肩が震える。そして彼の言葉の意味を理解し一気に顔が真っ赤になった。

「あはは!まるで林檎みたい!」
「エペルが変なこと言うからでしょ!」
「ほら食べたいんでしょ?早く食べなって」

林檎を持っていた私の手を包み込み、ぐっと口元に寄せられる。エペルに促されるまま林檎を唇に付ける。甘い柔らかな香りが鼻に抜け唾液腺が刺激される。一度生唾を呑み込んで私は一口かじった。
シャリッという咀嚼音の後、じんわりとした甘みが舌に広がる。

「美味しい…」
「でしょ?」
「あっでも毒があるように感じないよ」
「毒なしかぁー…」

舌のしびれや変な苦さはないし、これはただの美味しい林檎だ。
じゃあ安全かと、もう一口かじろうとして私の手の中から林檎が取り上げられた。

「僕にもちょうだい」
「いいよ」
「いただきます」
「え…?」

ちゅっ——という小さなリップ音。頭が真っ白になって、自分の唇を指先で触れる。しっとりと濡れていて、今までになかったぬくもりが残っている。

「あれ、無反応?じゃあもう一口もらおうかな」
「ち、ちょっと待って。あのっいまのは、」
「僕、すーっごくお腹空いてるんだ」


後は彼になされるがまま。

それは確かに毒林檎だった。


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▷chapter: Apple of Rook


手を伸ばせば届く距離なのに、あと一歩足りなくて諦めてしまう。

目の前でぴょこぴょこと揺れるそれは、温かな外の風を受けて何だか楽しそうにゆれている。トレイン先生の飼い猫であるルチウスが見たら飛びついているかもしれない。私もルチウスみたいに本能で動ければ楽だったかも。

「私の背中に何かついていますか?」
「えっ!?」

目の前を歩いていたルーク先輩がくるりと綺麗なターンを決めて振り返った。辺りを見回すも近くに居るのは私だけ。先輩との距離は五メートルくらいあったのにどうして分かったんだろう。
こんにちは、と挨拶して近寄るとボンジュールと彼らしい返事をもらった。

「どうして私が見てるって分かったんですか?」
「あれだけの熱いキミの視線に気づかないとでも?」
「ええっと…」

そんなつもりじゃありませんよ、と言おうとした時にぐっと顔を近づけられて何も言えなくなってしまう。近いですよ先輩。

「帽子が、その…」
「帽子?」
「先輩の羽根がついている帽子が素敵だなって。羽がふわふわしてて触ってみたいと思いまして」
「そういうことでしたか。それならどうぞ」

素直に答えるとルーク先輩は帽子を外して私の目の前に差し出した。近くで見ると意外と羽は大きく、骨組みがしっかりしていた。でも触れてみるとやはり柔らかくて小鳥を撫でるように指先を動かした。

「気持ちいいですね」
「満足いただけたようなら何よりです」
「私の小さな夢がかなった気がします。ありがとうございます」
「では次は私が触らせて頂きましょうか」
「え?」

ルーク先輩は一歩距離を詰めて、私の髪を指ですくった。突然の先輩の行動に頭が追い付かず、思考を止めて私は石のように固まってしまった。でもそんなことはお構いなしにと、ルーク先輩は優しく優しく私の髪を絹の糸でも梳くように触る。

「あの、私の髪はルーク先輩のように艶があるわけでもないので、その、あまり触られても…」
「確かに、髪のキューティクルが剥がれてしまっていますね。実に勿体ない。私が使っているヘアオイルを分けてあげましょう」
「あ、ありがとうございます。じゃあ私もお礼を考えないとですね」
「では一緒に服を見に行きましょうか。もちろんキミのものを」

ルーク先輩の指先は私の毛先から頭の上へと移動する。子猫を扱うかのように大きな手で私の頭を包み込むように撫で始める。逃げ場がなくなっていくことに困惑しつつもせめてもの強がりで私はなんとか会話を続ける。

「それじゃお礼にならないですよ」
「十分お礼になりますよ。私はヴィルの隣に並ぶために服装やメイクに気を遣っている。だからキミには私の隣に立てるようなレディになってほしい」
「恐縮ですが私にはそこまでのポテンシャルはないと思うのですが」
「ああっ少し言い方が不味かったね。こう言えば分かるかい?」

一瞬視線が合えば、彼は鷹のような鋭い目になっていた。

「私色に染めたいってことさ」

ぎゅっと一瞬包み込むようなハグをされ、力強くもないのに息が止まった。

「私の好きな色に好みのデザインの服、美しい宝石を身に着けたキミは何よりも綺麗なんだろうね。でも香水は必要ないですね。私自身強い香りのものは苦手ですし貴女の香りが消されてしまいます」

私から離れる前に、頬をするりと撫でられる。
そこでようやく我に返った私は状況を理解して一気に顔が火照ってしまった。

「では日時についてはまたご連絡しますね」
「あのっ、ルーク先輩!?」

くるりと綺麗なターンを決めて私の元から飛び立っていった。

「私、狙った獲物は逃がしませんので」


帽子の羽根はゆらゆら揺れていた。


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▷ chapter: Apple of Vil


ポムフィオーレ寮長はこの世で一番美しい。

美容に対する意識の高さはすさまじく、魔法薬学の知識から自分に合った化粧品を作ってしまうし、モデルの仕事をしながらも体系維持のためにヨガや自炊も欠かさない。でも外見だけでなくそれに見合う内面を身に着けるためにと学力もトップクラス。

実のところその人物は、水面下では必死に泳ぐ白鳥のような人なのだ。



「ヴィル先輩、私のためにこんなに時間を使って頂いて大丈夫なのでしょうか?」
「これはアタシの為でもあるのよ。新しく調合した化粧水の効果と新作のアイシャドウの色合いを見たいんだから」

私の顔に様々な液体が塗られ、ベースメイクの後瞼の上に何回か繰り返して色が乗せられる。私の顔はヴィル先輩にとっては化粧用キャンパスと言っても過言ではないだろう。定期的にポムフィオーレ寮に呼び出されては彼の腕によりメイクが施される。

鏡に映る自分と目が合う。
太めのアイラインが引かれ、目じりにはパープルの色味がグラデーションとなって乗せられている。ハイライトにはラメも乗せられていて反射でキラキラと光っていた。

「後はこのルージュを乗せて」

私の唇にヴィル先輩の指が触れる。ちょんちょんと馴染むように塗られるのがこそばゆい。
ふふっと思わず笑ってしまったら「動かないの」と鼻で笑われてしまった。

「うん、アイシャドウの発色もサンプル通り。フェイスパウダーはもうワントーン上げたものも欲しいわね」

ヴィル先輩の解説を子守歌代わりに、大きく舟をこぎそうになったらぐいっと頭を持ち上げられた。

「お次は髪型ね。どういったものにしようかしら」
「髪もやって頂けるんですか?」
「馬鹿ね!こんな中途半端な格好で外に出させられるわけないじゃない。この後はエペル達と一緒にマナー講座を受けてもらうんだから」

それは初耳である。
エペルからその手の指導に関してヴィル先輩はめちゃくちゃ厳しいと聞いたことがあるのだが大丈夫なのだろうか。身だしなみだってヴィル先輩にやってもらって何とかなっている状態なのに……

「希望はある?」
「へ?」
「髪型の希望よ!アタシの話を聞いていなかったのかしら」
「いっいだだだだ」

こめかみをグーで挟まれてぐりぐりと力を籠められる。たしかこれをやると血行が良くなると言っていたような…しかしそれにしても痛い。

「か、髪型ですか!あぁ、私ずっとやりたい髪型があったんです!」
「何かしら?アタシの機嫌を損ねないうちに早く言いなさい」
「先輩と同じ髪型を希望します!」
「アタシの?」

ヴィル先輩の三つ編みのハーフアップには大分憧れを持っていた。自分では不器用すぎて、できる髪型と言えばせいぜいポニーテールくらいだ。髪を上部だけすくってそれを三つ編みなどと、後ろが見えない状態では尚の事自分でやるのは難しい。

「それでいいの?」
「はい。それに今日のメイクだって色味がヴィル先輩のものと似ています。だから髪型も同じにできたらと」
「ふーん。まぁ私のはアメジストバイオレットだけど」
「はぁ」

同じ紫でも彼にとっては色味が違うらしい。よく分からないので曖昧に返事をすればすでにヴィル先輩は私の髪を編み込み始めていた。
まるで魔法の様にあっという間に出来上がる。しかもご丁寧に毛先をコテで内巻きにしてくれた。

「はい、出来たわよ」
「すごいです!ありがとうございます」
「もっと凝った髪型でもよかったのに。やりがいがないわ」

つまらなそうな顔をしたヴィル先輩。でも私にはこれでも十分すぎるのだ。

「憧れのヴィル先輩とお揃いだからいいんですよ」

ヴィル先輩みたいなお姉さんがいたらきっと毎日が楽しいんだろうな、と考えることがある。でもその次には必ず「いや、毎日あのテンションで美容を語られるのはキツイな…」と現実的に考えるのだ。
だがしかし、憧れているという言葉に嘘はない。

「今日のマナー講座にアナタは参加しなくていいわ」
「え?なんで急に……」
「あっちはルークに任せましょう。アナタはアタシとここで個人レッスン」

まさかのマンツーマン。
えっ私何かした?今日会ってから粗相をした覚えがない。いや、寝かけたことがバレたか。それともメイクも髪もやってもらったが人前に出させられるレベルではないということなのだろうか。

「準備してくるからこの部屋からは決して出ずに待っていなさい」
「は、い」

耳元で吐息を引きかける様にそう言って、ヴィル先輩は部屋を出ていってしまった。
何なんだ今の色気は。本日は誘惑のレッスンでもするつもりなのか。心臓が持たなそう……


「あんな綺麗な宝石、他の奴らに奪われて堪るものですか。綺麗なものは全部アタシのもの。綺麗なものに囲まれたアタシはこの世で一番美しい。だからあの子も———」

その独占欲が愛に結び付くと言う事を、彼はまだ知らない。