子ども好きで愛妻家の御影玲王の話


五歳の息子と四歳の娘は今日も元気いっぱいだ。

「パパみて!これようちえんでつくった!」
「だっこ!パパだっこ!」

そしてパパイヤ期を乗り越えた今となっては玲王にべったりである。そして玲王も満更ではないのか息子の頭を撫で娘を抱き上げ、表には出さないような緩んだ顔をしていた。

「スゲー!よくこんな難しいモン作れたな!」
「パパがこのまえおしえてくれたのおもいだしてつくった!」
「偉い偉い!応用できるのはスゲーコトだぞ!」
「ずるい!わたしもあたまなでて!」
「はいはい、仰せのままにお姫様」
「ふふっしょうらいはパパのおよめさんになるー!」

仕事で多忙を極めるなか子どもたちの面倒を見てくれるのは本当に助かるしこの光景も実に微笑ましいものである。だがしかし問題は現在の時刻である。

「プラモつくりたい!パパおしえて!」
「パパおうじさまやって!わたしシンデレラになりたい!」
「わかったわかった、順番な」
「玲王、もう寝る時間なんだからあんまり興奮させないで」

歯磨きもお風呂も済ませ本来ならすでに寝室に連れ込んでいる時間。こうも目を冴えさせてしまっては寝かしつけに時間がかかる。

「あー……悪りぃ」
「ほら二人ともお布団行くよ」
「やだ!パパとあそぶ!」
「まだねたくない!!」

敵とばかりに私のことを睨みつけ、二人は玲王の後ろに隠れてしまう。息子は玲王の左腕を、娘は右腕をぎゅっと掴んでは離さない。そして玲王はというと親として寝かせなきゃいけないとは思いつつもこの状況が嬉しいらしく「お前らなぁ」とヘラヘラ笑ってる。ちょっとしっかりしてよ。

「明日はパパもお休みなんだから明日たくさん遊んでもらったらいいでしょう?」
「やだやだやだ!」
「いまあそぶの!パパいいでしょ?」
「あー……早く寝ないと明日起きれなくなるぞ?」
「「おきれる!!」」

親として諭しつつもやはり二人の我が子が愛おしいらしい。説教らしい説教もしてくれない。でも私がここで怒りでもしたら状況が悪化するのは目に見えてる。角なる上は仕方なし。

「じゃあママは先寝るね」

押してダメなら引いてみろ作戦。
その場に三人を残し一人寝室へと歩いていく。寝室と言っても寝ている我が子を見守れるようにとリビングから一枚隔てた空間にベッドを置いている。だから戸を閉めなければリビングから寝室は丸見えだ。

「ママねるの?」
「いっしょにあそばないの?」

玲王にベッタリだった子どもたちもママがいなくなるのは淋しいらしい。その反応に母性本能をくすぐられつつもここで負けたら玲王と同じだ。

「明日パパとたくさん遊ぶためにママはもう寝るの」

いそいそと布団に入り寝る体勢を整える。リビングでは「パパ、ママがねちゃう」「じゃあお前らも寝るか?」「えー……」などと葛藤している声が聞こえる。玲王、あともうひと押しだよ。なんとかしてこっち連れてきて。

「パパも眠たくなってきちゃったなぁ」
「パパも?」
「みんなで寝ようぜ?」
「う゛ー」

いい感じの流れではあるがまだ二人はぐずってる。そして時刻は夜の二十一時になろうとしていた。これ以上の夜更かしは子どもの成長によくない。
私は最終手段とばかりに掛け布団を持ち上げてリビングにいる三人に向かって声をかけた。

「ほらママの隣で寝られるのは一人だけだよ!」

息子と娘は毎日どちらが私の隣で寝るか揉める。最近は息子の方がお兄さんぶって妹に隣を譲ることはあるが駄々をこねる日もなきにしもあらず。
こんなことで子どもの気を引けるとも分からないが私はかけてみることにした。もしかしたら競い合うようにしてベッドに来てくれるんじゃないかって。

「おらーーっ!!」

そして私の思いが通じたのか猪突猛進でこちらに来てくれた。玲王が。

「っしゃあ!ママの隣ゲット!」
「パパずるい!!」
「やーだー!!」

スライディングが如く布団に潜り込んできた玲王の後ろでは子どもがギャン泣。ちょっと玲王が勝ち越してどうすんの。

「パパどいて!!」
「ママとねる!!」
「ヤダね。ママの隣は今日もこれからもパパのもんだ!!」
「うぁあぁぁん!」
「ぎゃあああ!」

私を抱きしめては離さない玲王に泣く子ども。もう勘弁してほしい。でも今も変わらず私のことを好きでいてくれる玲王の姿には思わず笑みが溢れてしまった。