(もうちょいスパイス入れりゃよかったな、)


辛さもそうだが、クソババァやランチラッシュの飯を食いなれた贅沢舌にはコンビニ弁当独特の化学調味料の味がどうにも受け付けなくて。
辛さでごまかしたあまり美味いとは言えない飯の最後の一口を口に運んで席を立つ。


「お!ごちそうさまですか?」
「…まだいたのか」


空になった容器を洗って捨てようとシンクの方を向けば、今まさにマグカップを持った苗字。
音がしねえからとっくに部屋に帰ったもんだと思っていた。
その手にはマグカップが、2つ。


「…あんまり飲むと腹壊すぞ」
「ちがうよ、1つは爆豪くんの分です」
「あ?」


こんなに飲まないよーといつもみたいにヘニャリと笑って、手渡されるマグカップ。


「お休みの日も補習お疲れ様です!じゃあ、おやすみなさい」
「あ、おいちょっと…」


渡すだけ渡してさっさと部屋を出ていっちまう苗字。
礼もまだ言ってないのに。
1人でキッチンに立ち尽くす。



「…あめぇ」

でも、うめぇ。


とりあえず手元にあるマグカップを口に当てて作ってもらったそれを口に運ぶと、ふんわりシナモンが香って。
一口飲んだそばから体が内側からじんわり温まる。
なるほど、これは生姜も入ってんのか。


明日教室で会ったら礼を言おう。
いやでも、他の奴らに見られたらどうしようか。
見せつけてやればいいじゃないか。
いや、でも、苗字は迷惑じゃないだろうか。



あぁ、そうだ。



ポケットからスマホを取り出して、連絡先登録だけされて未だやりとりした形跡のないトークルームに入室したら、「うまかった」とたった5文字だけのメッセージを送る。
するとすぐに既読の文字が浮かび上がって、ポン、ポンと初期設定のままの軽快な受信音。


「どういたしまして」というメッセージに、我らが教師オールマイトがGOODNIGHT!と親指を立てている姿のスタンプ。
これは俺も持っているやつだ。
すかさず同じスタンプを送り返す。
でもあまりしつこい奴だと思われても癪だから、苗字とのトークルームを閉じる。


しっかり、そのトークルームをピンで留めて1番上に固定して。




指先で送る君へのメッセージ



ほんの一行でも構わないんだ
キミからの言葉が欲しいんだ



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