高鳴る心音が煩い (十六夜さんから3Z土方)
部活後の自主練が終わったころには辺りは真っ暗になっていた。帰りにラーメンでも食べていくか、という近藤さんの提案に俺も総悟も異論は無くて、ちょうど校門から出た時のことだ。グラウンドの方に人影が見えたのは
…あれは
「悪ィ、用事思い出した。二人で行ってくれ」
犬の餌を見なくていいなんてラッキーでさァなんていつものように減らず口をたたいている総悟はいいとして、本気で残念がってくれている近藤さんには悪いが、来た道を足早に戻った。
探し人はすぐに見つかった。
部室の鍵が隠してある植え込みを漁っているってことは大方部室に忘れ物でもしたんだろう。なかなか鍵を見つけ出せず、未だに植え込みを漁っている背中に声をかけた。
「オイ」
「うわぁっ。ごめんなさいごめんなさい、決して怪しい者じゃないんです。ちょっと忘れ物しちゃっただけなんです。だから呪い殺さないで下さい」
「いや、お前意味分かんねぇから」
「…土方?何やってんの?」
「俺も、忘れ物」
本当は忘れ物なんてしてねぇけど
「珍しい。土方でも忘れ物するんだね。あ、今開けるわ。」
いつの間にか鍵はアイツの手の中で、ガチャリいう音と共に部室の扉が開かれた。
特に用は無いが、変に思われないようロッカーに向かう。
「やっぱりここにあったー」
後ろで喜々とした声があがった。どうやら探しものは見つかったみたいだ。
「おい。お前夕飯食べたか?」
「ん、まだだよ」
「どっかで、メシでも食ってかねぇ?」
「いーね」
断られるかと思いきやあっさりと返ってきた了承の言葉に心がはずむ。
「最近お気に入りの店があるんだけどどう?」
「じゃぁそこいくか」
しかも、お気に入りの店に連れて行ってくれるらしい。なんか俺ついてねぇ?よくやった、俺
さり気なく、歩いていこうとするアイツの隣りに並ぶ。
今にも飛び出しそうなほどバクバクと鳴る心臓を、バレないように右手でそっと押さえた
高鳴る心音が煩い
「ここのラーメン美味しいんだよ」
「「「あ」」」
「おぉ、トシじゃないか」
「ちっ、ラーメンがマズくなりまさァ」
…やっぱりついてねぇ
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