アフロ燃ーやすっ(くるみさんへ/オーバ)



いらいらいらっ


「でさーデンジのやつがさー」

「……。」


いらいらいらいらいらっ


「あ、ゴヨウさんが今度さー」

「……。」


がすっ


「いたっ!」

「黙れ馬鹿アフロ。」


怒りが沸点に達し、思わず隣に座っていたオーバの頭をひっぱたいた。特徴的なアフロが一度へこんで、元に戻る。


「ふらふらとか言ってたのに結局ここにずーっと座ってるだけじゃん。ふらふらっていうのはお店まわったり公園いったり思い出の場所巡ったりさあ、あてのないふらふらじゃないの?」

「あー…、あてのないふらふら、したいか?」

「いや、実際面倒臭いわ。」

「だろ?」


私達は結局再びぼんやり海に視線を戻した。

幼馴染みが突然家にやってきて、ふらふらするぞ、なんて私を連れ出したのは午前10時のことだった。突然、なんて言ったけれど私はこいつがうちに来ることを知っていた、というか期待していたので二つ返事で誘いに承諾した。のに、隣の赤アフロは見事に期待を裏切る裏切る。もう午後3時である。


「今更だけどナギサ来んの久々だわ。」

「何、リーグ忙しかったの?」

「いや、そうでも。いつも通りだった。」

「へぇ。」


ほら会話が切れた、早くしろ。今がグッドタイミングでしょう。心の中でアフロを急かし立てる。今日は何の日だ。私は敢えてその可愛い袋に気付かない振りをしているんだ。今はもう何時だ。私は敢えてその可愛い袋をちらちら見るあんたに気付かない振りをしているんだ。

私は無意識に組んだ腕を指でとんとん叩いていた。アフロは一度袋を見て、口を開く。


「あ、このまえ…えーっと、おれのブースターがさー」


いい加減にしろ!

私は隠さず溜め息を吐く。こうなったら奥の手だ。


「バトルの時、」

「あ、デンジさ、もうすぐジムの改造終わるかもしれないからこっちくるかもね。」


わざとらしく時計を見て告げてみる。デンジは確かに今日ジムの改造をしていた。(だって朝停電でトースターが使えなかったから。)ただ、何時終わるのかは知らない。けれどこの発言の効果は絶大で、目の前のアフロは顔面蒼白になっていた。頭と顔の色のコントラストが大変なことになってるよ。


「へ、へぇ。」

「うん。」


オーバの微妙な返事に相槌だけうって話を切ってやる。今日何度目かのグッドタイミングが訪れた。

視線をしばらく海と砂浜と行き来させてから、かさり、オーバは小さな袋に手を掛ける。


「あのさあ、」

「……」

「えっと、あー、…その、」

「……」


オーバは一度大きく息を吸った。

「誕、生日、おめでとな。」


とん、と押しつけられるように可愛い袋が私の膝に乗る。


「手際、悪い。」

「……とかいいながら、にやけてんぞ。」


少し頬を染めたオーバが罰が悪そうに横目でこちらを見る。自分の頬に手を当てると確かに口角が釣り上がっていたので、私も頬が熱くなった。


「うるさい。…毎年毎年、幼馴染みにプレゼント渡す位でわたわたすんじゃないわよ。」

「悪かったな、わたわたしてて。」


唇を尖らせたオーバに、それ可愛くないよ、と言ってから(うるせっ!て言われた。)小指を差し出す。


「ほら、指切り。」

「指切り?」

「来年も、祝ってくれるんじゃないの?」


腕に抱いた袋がかしゃ、と苦し気に鳴いた。


「あー…、来年はわたわたしない。」


私より少し太い指が絡む。それを眺めながら来年は幼馴染みポジションから脱却して、指が五本になったらなあなんて。


「はい。うっそついたら」




アフロ燃ーやすっ
(かっくごっしろっ!)
(目がマジ過ぎて超怖い)





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