──ああ、分かったよ。父さん。
父親でもあり師でもある、良衛。彼が残した印を目にした聖は、取り調べの担当している西村警部に気づかれないよう、僅かに息を殺す。
忠之から良衛へ、良衛から聖へと、意志はひっそりと受け継がれてきた。いや、意志というよりも願いと言った方がいいだろう。彼らの悲願を成就させるのが、聖の使命であった。
とうとう使命を果たす時がきたのだ。これほどまでに待ち望んでいたことなど、他にない。
だというのに、喉の奥から苦いものがせり上がってくるような気分だった。
頭に浮かぶのは、剣の筋をただただ純粋に褒めてくれた和葉の笑顔と、そんな彼女を想う平次のまっすぐで熱い眼差し、それから戦場で亡くなった母の生前最後の写真だ。
幾度も幾度も眺めていたおかげで、聖はその写真を脳内で正確に再現できる。薄く焦げた部分も、皺の寄った部分も。
決して綺麗な状態ではない写真は、聖の心を切なく締めつけた。
分かっている。使命を履き違えてはいない。
兵器は、必ずこの手で破壊する。医師として戦場で自分の責務を全うした母親のためにも、やり遂げなければならない。
聖は真面目に取り調べの続きを受けながら、函館中央警察署という厳重な檻から逃走すべく、思考を巡らせ始めた。