この唇に願えるならば
ふわ、と風見の顔に掛かった白い布を丁寧に捲る。彼の死顔は予想以上に酷い。青や紫などで斑に染まっている。
降谷はひとつひとつの痣に優しく触れた。ひやりとした皮膚はまるで蝋人形のようだ。
よく頑張ったな、とは言わない。代わりに今まで秘めていた、ひとりの男としての言葉を告げる。
「好きだ……」
そして乾いた目を閉じ、亀裂の入っている唇に自分のそれをそっと重ねる。
最初で最後の口づけは、冷たい死の味がした。