しとしとと緩やかに降りそそぐ雨の音。車の中でそれを聞きながら一本の電話を終えた。
「はぁ……、この事を風見に……」
だが、そこでハッとする。ああ、そうだった。もう風見はいないんだ、と。
忘れたわけではない。忘れられるはずがなかった。何より、最後に交わしたキスの感触は未だ鮮明に覚えていた。
あの時の願いは叶わない。それを現実でも目の当たりにしたというのに、いつまで経っても『死』を認めない自分がいた。
近しい人の死は何度も経験しているが、今回ばかりは時間がかかってしまう。
自嘲めいたため息が零れる。すると真っ黒な画面に何かが当たった感覚がした。そこにはひと粒の雫。
雨のはずがない。首を傾げてみれば、また雫が画面を濡らし、やっと自分が泣いていることに気がついた。
それを自覚すると、堰を切ったかのように涙は次から次へと頬を伝った。
時折喉から漏れる苦しげな声は、車に当たる雨音にかき消されていく。
「っ、だから……君を、好きに、っ、なりたくなかったんだ……ッ!」