私は傍観者だ。
関わるなんてしたくなんて面倒なことは絶対にしない。てか、自分から面倒事に首突っ込むとか貴方バカですか?

………。いや、今のは言葉が悪かったな。取り消そう。

まぁ、とりあえず私は傍観するのが好きだ。
なのに……

《はーい大当たり!!本日二人目の幸せ者は貴方です!!おめでとう!!》

なんだこの状況は。

どこまで続いてるのかすらわからない真っ白な空間。そこで私は目の前にいる12歳くらいの子供にいきなり上記の台詞を言われた。

……どういうことだこれは。私はさっきまで学校の屋上でサボりをしていただけなのに……。

《はーい!ではそんな幸せ者を貴方が今一番好きなアニメ、イナズマイレブンの世界へご招待しちゃいます!!》

「…………はぁ?」

なんだコイツ頭大丈夫か。

《はーい!人の事をそんな蔑んだ目で見ないでよね〜!とりあえず君を向こうに送り出すにあたって僕から3つのプレゼントが…》

「ちょっと待て。」

《はーい?》

なんだコイツさっきからはーいはーいうっせぇな。
って、そうじゃない。

「まずお前は誰だ。ちゃんと説明しろ。二人目とか幸せ者とか、ご招待とか……意味がわからない。だいたいイナズマイレブンはただのアニメだ。アニメの世界に行くなんて非現実的なことできるわけないだろう。」

《はーい……。君は冷静で頭がいいね。さっきの子とは大違いだ!さっき来た子なんて何の疑問も持たないで飛び上がって喜んでたっていうのにねぇ!!》

そう言って目の前のコイツは楽しそうにケラケラ笑った。

《はーい!じゃあそんな君の疑問に答えてあげよう。僕は優しいからね!!まず僕は君たちの言葉で言う神様っていう存在に当たるのさ。》

「…はぁ?神様?そんなのいるわけないだろう。悪ふざけなら他を当たれ。」

それか精神科行け。

《はーい……。君は無神論者なんだね?全く……。まぁ、いいさ。信じなくても、後ですぐ信じることになるんだから。》

……どういうことだ?

《はーい。で、二人目って言うのは、こうやって人間を他の世界に飛ばすのは本日二回目なんだ。》

「二回、目?」

《はーい!そう!その子もイナズマイレブンの世界に飛ばしたんだけどね?その子がこれまたバカでさぁ!あっちの世界に飛ばしてあげるって言ったとたん奇声あげながら喜んでさぁ!!あれは見てて面白かったなぁ……。》

なんかコイツ性格悪いな……。ていうか、

「なぁ……、百歩譲ってお前が神だとしてもだ。そう簡単に人間を別の世界に飛ばしたりしていいもんなのか?」

《はーい。君は本当に頭がいいんだねぇ……。大丈夫だよ別に。僕に都合の良いように世界は出来てるんだからさ。それにたまにこういうことしないと暇で暇でたまらないんだ。要するに暇潰しだよ。》

「暇潰し……?」

そんな暇潰しに私を付き合わせると?

「……おい、自称神。」

《はーい?》

「私を今すぐに元の世界に戻せ。」

《はーい?なんで〜?アニメの世界に行けるんだよ?とっても楽しいと思うよ?》

まぁ、確かに他の奴はそうだろうけどな。私は違うんだよ。

「アニメは見てるから面白いんだよ。自分で関わるなんて面倒くさいこと私はしたくない。」

そう言うと目の前の自称神は目を見開いてポカンとした。そしてそのあといきなり笑いだした。……大丈夫かコイツ。

《あっはははは!!君は面白いねぇ!!そんなこと言ったのは君が初めてだ。僕、君のこと気に入っちゃったよ。》

「私はお前が気に入らないけどな。」

だって性格悪そうだし。
素直に言えばコイツは更に笑いだした。

《うんうん!!ますます気に入った!!よし、君には意地でも向こうにトリップしてもらうよ。》

「嫌だ。」

《だ〜め。君に拒否権は無いよ。それに、君はこっちの世界に全く未練もないだろ?こんな毎日が同じことの繰り返しな単調な世界。向こうに行ったら何か変わるかもしれないよ?》

「……。」

その言葉に少し心が揺れた。確かにコイツの言うとおりこっちの世界に未練はない。……この退屈な世界から抜け出せるのか…。

《……無言は肯定とみなすよ?》

「……。」

《ふふっ!よーし、じゃあ早速飛ばしてあげる!っと、いきたいとこだけどちょっと待ってね。飛ばす前に僕から君へ3つの贈り物をしてあげよう。》

「贈り物……?」

《そう!贈り物!!学力、美貌、美声、運動神経……。外見だって変えられるんだ!!さぁ、君は何を望む?》

贈り物、ねぇ……。じゃあ、そうだな。

「なんでもいいのか?」

《うん!なんでもいいよ!!》

じゃあ……

「一つ目は向こうの世界での戸籍とか生活の保障。二つ目は学力。三つ目は体力。」

そう言うと奴はまたポカンとして目をパチパチさせた。

《そんなんでいいの……?》

「こんなんがいいんだ。」

そう言い放てば奴は愉快そうにニヤニヤ笑った。…………気持ち悪いな。

《やっぱり君は現実的だねぇ。さっきの子なんて向こうでの生活のことなんか考えずに美貌、美声、運動神経を願って行ったよ。……まぁ、余りにも滑稽で可哀想だったからボロアパートでの生活保障ぐらいは用意してあげたけどね。》

「ふーん……。」

興味ねぇよそんなん。

《興味なさそうだねぇ……。だから僕は君が気に入ってるんだけどね!》

「あっそ。」

《もー、態度悪いなぁ。まぁ、いいけどね。あ、そうだ!僕、君のこと気に入ったし出血大サービスで、向こうの世界で色んなキャラと関われるようにフラグ立ててあげるよ!》

「余計なお世話。」

《いーじゃんいーじゃん!!ま、さっきの子には間違ってもそんなことしないけどね!!だって僕馬鹿な子嫌いだし。》

「酷い言い様だな……。」

そこまで馬鹿なのかそいつ……。

《よし、じゃあそろそろ飛ばそうか。でも、本当にいいの?その容姿のままで。君が望むなら僕、一つくらい願いごとオマケしてあげるよ。」

「結構だ。」

《ふーん………。ま、君元から綺麗だし容姿の方は全く問題ないしね。運動神経も普通に良いみたいだし……。体力が無いのを補うために体力を三つ目の願いにしたのは妥当なところだろうね。じゃあとりあえず……、》

頑張っていってらっしゃーい☆

そうして私の意識は闇へと沈んだ。


次に目が覚めた時、私はなんだか豪華なマンションの一室に寝転がっていた。

「ここは……?」

立ち上がって周りを見渡すとこれまた高級そうな机の上に手紙が一通置いてあった。

開いて読んでみると今の状況がだいたい把握できた。
この手紙は自称神からのもので、内容を簡潔にまとめるとこうだ。

今私がいるこのマンションはこれから私が暮らして行く部屋で、かなりの高級マンションらしい。
そして私は明日から雷門中に転校することになっているそうだ。もちろん中学二年生として。
生活の心配はしなくていいみたいだ。あの自称神が毎月口座に金を振り込んでくれるらしい。(机には銀行のカードと通帳が一緒に置いてあった。)
とりあえずはこんな感じだ。

明日から学校か……。……道わからないんだが……。まぁ、……どうにかなるか。



そして降り立つ二人の異世界人

(さて、この世界のヒロインはどちら?)