「……ここは何処だ。」
ふざけた自称神(いや、もうここまでの証拠を見せつけられたのだから、自称ではなく本当に神なのか。)に異世界へと飛ばされてから一晩経った。
今日から私はお馴染み雷門中に通うことになっているらしいのだが……。
案の定迷子になった。
……昨日の内に周辺を散策しておくべきだったか。
学校以外にもスーパーや商店街にも行かなければならないし……。
「さて……、どうするかな。」
と、そこで私と同じ雷門中の制服を着ている女子を見つけた。
……仕方ない。あいつに道を聞くか。
「あの、すいません。」
「はい?」
私の呼び掛けに反応して振り返った女子を見て思わず驚愕した。
だって、その女子生徒は……
「え、あの……?どうしました?」
「あ、いや。すまない。少しボーっとしてしまって……。」
「そうですか。あ、で、何かご用ですか?」
「あ、あぁ。悪いんだが道を聞きたくてな。雷門中までの道を教えてくれないか?どうやら迷ったみたいなんだ。」
「雷門中まで?あ、もしかして貴方今日から私のクラスにくる転校生さん?」
「……多分そうだと思う。」
「そっか!じゃあ私も今から登校だから一緒に行こう!!」
「ん、あぁ。」
「あ、自己紹介がまだだったね。私は2年の木野秋っていうの。よろしくね!」
……やっぱりそうか。
「……私は苗字名前、木野さんと同じ二年生だ。」
「木野さんだなんて……。私のことは秋って呼んでいいよ。」
そう言って彼女はにっこり笑った。……アニメを見ていた頃から思っていたが、彼女は絶対友達になりたい人No.1だな。可愛くて周りへの配慮を常にしている。
……私が元いた世界の女子とは比べものにならない。
「……わかったよ秋。私のことも名前で呼んでくれて構わない。」
「わかった。じゃあこれから改めてよろしくね名前ちゃん!!」
「あぁ、よろしく。」
そんなこんなで秋と友達になって雑談をしながら登校した。
その秋の話によれば秋が一年の頃からマネージャーとして所属しているサッカー部に最近新しい部員が入ったらしい。その部員は最近転校してきた女子生徒だそうで選手として入部したらしい。しかもサッカーの腕も中々らしく廃部寸前のサッカー部からしたら万々歳なのだが、その部員、男子への態度と女子への態度が全く違って、男子には愛想を振り撒き女子には暴言などを普通に吐くそうだ。
そのせいで男女共にクラスでの評判は最悪で、サッカー部内でも批判の嵐らしい。だがそのことに本人が気づいている様子は全く無いとのこと。
……ここまで聞いてわかった。その部員ってまさか……
「なぁ、秋?」
「なぁに?」
そう言って振り向く彼女はとても可愛い。
……こんな可愛い子に暴言を吐くなんて……。
「その、最近きた転校生って凄い美少女だったりするか?」
そうだとすれば……。私の予想は大当たりなんだが……
「よくわかったね?そうなの、その子すっごく可愛くて声も凄く綺麗で、運動神経ももの凄く良くて……。まるで神様からの贈り物みたいに、その三つは完璧なの。」
神様からの贈り物、ねぇ……。
これはビンゴだな。
「その子、名前はなんて言うんだ?」
「名前?名前は、花園百合ちゃんって言うの。」
「はなぞの、ゆり……。」
それが私と同じ世界から飛ばされてきた奴の名前か……。
……まぁ、関わる気なんて無いから私には関係ないけどな。
話を聞いた限りじゃ私がこっちの世界にいることを余り快くは思わなさそうだし。
「あれ?もしかして名前ちゃん知り合い?」
「……いや、知らない奴だ。」
「そっか。あ、そろそろ学校につくよ!」
その後学校についた後も職員室まで道案内をしてもらい、職員室前で秋とは別れた。
そしてその後職員室へと入り担任と挨拶し、今は教室の前で先生が中から呼ぶまで教室前で待機だ。
「よし、じゃあ入ってきてください。」
呼ばれた。
私は教室の中へと入った。好奇の視線が身体中に突き刺さる。そんな中教卓前で教室中を見渡せば、秋と目が合った。手を振られたので笑い返しておいた。その次に花園百合らしき奴を見つけた。(神に与えられた美貌は伊達じゃないな、ありえない程顔が整っている。)むこうも私が異世界から来たことを把握しているらしくそのありえない程端正な顔をありえない程歪ませて睨んできている。(……そこまで私が気に食わないか。)
それと、円堂守を見つけた。この世界の主人公……。少なくともコイツに、いや、サッカー部員にクラスメイトとして関わるのは大丈夫だろうがあまり関わり過ぎると物語に私まで組み込まれることになるんだろう。
……面倒事は嫌いだしな。余り関わらないでおこう。(秋と関わるのはいいのかって?………マネージャーと友達になるのくらいノーカンじゃないか?)秋とはなんだか気が合いそうだし、久しぶりに人と仲良くなりたいと思った相手だし……、それくらいいいだろ?
その後担任、てか冬海先生に促されて簡単に自己紹介をした。
そうして案内された席はなんという幸運か、秋の隣の席だった。
「やった!隣の席だね名前ちゃん!!」
「あぁ、そうだな。」
「あ、何か困ったことがあったら言ってね。私が協力出来ることならなんでもするから!」
「あぁ、ありがとう秋。」
本当にこの子はいい子だなぁ……。
……さっきからずっと私を睨んでくる花園さんとは比べ物にならないくらい、ね。
友達を作った傍観者
(マネージャーと友達になるのはノーカンさ。)
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