「…出ていいか?」
「勝手にしろ」

電話の相手は松岡だった。
「あぁ、終わったのか。分かった、戻る」

さっさと電話を切って、立ち上がる。
「携帯変えたのかよ」
「まぁ。けど、番号とかは変わってねェけど」
「じゃあなんで電話でねェんだよ」
「なんでって…」

…いや、確かに出てないけど…
て、ことは…あれ?
さっき似鳥が言ってたこと本当なのか?

「なぁ、凛…」
「…んだよ」
「確かに、返事はしてねェけど…あの時、俺は好きって言われて嬉しかった」

顔を上げた凛の瞳はやっぱり涙の膜が張ってる。
「…けど、あの時とはもう違うんだ」
「なんだよ、それ」
「…悪い。さっさと、俺を忘れろ…それが一番お前の為だ」

彼の瞳から零れそうになった涙を親指で拭って、自分より少し低い位置にある頭をポンポンと撫でる。

「じゃあな」
「おい、朱希!!」

真琴さん達と合流して、帰路につく。

「朱希、何かあった?」
俺の顔を覗きこんだ真琴さんが微笑む。

「いや、なんにも…」
「なんか泣きそう」
「…泣けたら、楽なんすけどねー」

裏切られたお前が泣くのはわかる。
けど裏切った俺が泣くのは…きっとお門違いというやつだ。

「いっそのこと裏切り者だと罵ってくれた方がマシなのに」
「朱希?」
「なんでこうも上手くいかないんすかね」

俺の言葉に真琴さんは視線を前に向ける。

「朱希に、未練と罪悪感があるからじゃないかな?」
「…真琴さんって結構人の傷を抉るの好きっすか?」
「え?そんなことないよ」

未練と、罪悪感…か。

真琴さんの言葉と、凛の泣きそうな顔を思い足して溜息をつく。

「泣かせたくはねぇんだけどなー…」

俺の言葉を聞いた真琴さんが笑って髪をぐしゃぐしゃとかき回す。

「なんすか?」
「何でもないよ?」
「…なら、いいんすけど」

…真琴さんの手って大きいんだな。
昔の感覚とダブって俺は首を横に振った。

違うんだ、と頭に言い聞かせて俺は真琴さんの隣を歩いた。


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