12
部活終わった。そんなメールが届いて彼の家にいけばどこか居心地悪そうに視線を逸らす。
夕飯のときもチラチラと俺を見て、視線を逸らすを繰り返していた。
それが可愛くて仕方なかったのはここだけの秘密だ。
キスの真意を聞きたいんだろうけど、全部済ませてから話すつもりだから。
もう少し我慢してろよ、なんて心のなかで呟いた。
風呂から上がればトビはベッドに座って大事そうにバスケットボールを磨いていた。
こちらに背を向けているから俺には気づいていないようだけど。
肩にタオルをかけて、後ろから彼を抱き締めればビクッと震えてから固まる。
「っ名前?」
「んー?」
トビの首筋からは今、俺が使ったボディーソープと同じ香りがした。
「な、なにしてんじゃ…早よ離れ」
「嫌」
ぎゅっと両腕に力を入れればトビは何も言わなくなって。
頬が赤く染まっているのが見えた。
「聞きたいんだろ?なんで、キスしたのか」
こくりと頷いたトビの耳元に口を近付ける。
「好きだから」
「っ!!」
「お前のことが好きだからキスした」
俯くトビは言葉ひとつひとつにビクビクと体を震わせる。
それが可愛くて、頬を緩める。
「好きだよ、トビ」
トビは何か言葉を探しているのは口を開いては閉じてを繰り返す。
「名前、」
震える声が俺の名前を呼んだ。
ボールを持っていた手が俺の腕に添えられる。
「ワシ、も…名前のこと」
「うん」
「好き、好きじゃ…」
俺は彼の言葉にクスリと笑った。
▽
抱き締められた。
後ろから彼の熱を感じる。
耳に吹き込まれたのは好きという言葉。
ぞわりと背筋が震えた。
「好き、好きじゃ…」
そう震える唇で答えれば耳元で彼は笑った。
吐息が耳にかかって、その度に体はビクビクと震える。
こんなの初めてでどうすればいいかわからない。
ただ、彼がワシを好きだと言ってくれたことがなによりも嬉しくて。
「名前、好きじゃ。ホンマに、好きなんじゃ」
「わかってるよ、そんなに言わなくても」
抱き締めれていた腕が緩くなって、後ろを向けば優しい顔をして微笑む名前がいた。
「…名前」
「キス、しよっか」
「え?んっ!?」
保健室でのキスとは比べ物にならないくらいに深く口づけられる。
彼の舌が上顎をなぞり、ビクッと体が震えた。
そんな反応に満足したのか今度は舌を絡めとり、彼の歯が舌を甘噛みして。
「ぁ、んっ、」
混ざりあった唾液が溢れて、顎を伝う。
息が苦しくなって彼は胸を叩けば唇を離して。
顎に伝った唾液を、舌で舐めとった。
「長い、んじゃ…アホ…酸欠になるわ」
「えー、そんなに?」
自分の唇を舌で舐めて、彼は目を細める。
「明日、部活は?」
「あ、るけど…」
「そっか…じゃあ、」
トンッと体を押されベッドに倒れる。
顔の横に転がるボールを名前は優しい手つきでベッドサイドに置いて、ワシに覆い被さった。
「少しだけ」
「は?」
名前はクスリと笑って、首元に顔を埋める。
柔らかな物が触れて、すぐにチリッと痛みが走る。
「んっ、」
痛みが走ったあとにそこを舌がなぞり、つい溢れた声を手の甲で押さえて。
「な、にしてっ、」
「お前、マジで可愛い」
彼の手は胸から脇腹まで撫でて。
脇腹に名前は口づけて、またチリッと痛みが走る。
「んっ、ぁ、舐めるのやめっ」
「楽しみだなぁ、ちゃんと触れられる日が」
名前は唇を離してふわりと微笑んだ。
「名前…」
「ん?」
「…キス」
彼の背に腕を回せば彼はワシの名前を呼んだ。
「いくらでも、してやるよ」
塞がれた唇。
うっすらと目を開けば熱を帯びた彼の目と視線が交わった。
「んっ!?」
その瞬間に舌を吸い上げられて体が跳ねた。
かっこよすぎるわ、アホ…
心のなかでそう呟いて目を閉じる。
くらくらと酸素の足りなくなる頭で彼が好きだと改めて思った。
「名前っ」
「ん?」
「好きじゃ」
ぎゅっと抱き締められて耳元で彼の声がした。
「愛してるよ、トビ」
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