12
部活終わった。
そんなメールが届いて彼の家にいけばどこか居心地悪そうに視線を逸らす。

夕飯のときもチラチラと俺を見て、視線を逸らすを繰り返していた。
それが可愛くて仕方なかったのはここだけの秘密だ。

キスの真意を聞きたいんだろうけど、全部済ませてから話すつもりだから。
もう少し我慢してろよ、なんて心のなかで呟いた。

風呂から上がればトビはベッドに座って大事そうにバスケットボールを磨いていた。
こちらに背を向けているから俺には気づいていないようだけど。

肩にタオルをかけて、後ろから彼を抱き締めればビクッと震えてから固まる。

「っ名前?」
「んー?」

トビの首筋からは今、俺が使ったボディーソープと同じ香りがした。

「な、なにしてんじゃ…早よ離れ」
「嫌」

ぎゅっと両腕に力を入れればトビは何も言わなくなって。
頬が赤く染まっているのが見えた。

「聞きたいんだろ?なんで、キスしたのか」

こくりと頷いたトビの耳元に口を近付ける。

「好きだから」
「っ!!」
「お前のことが好きだからキスした」

俯くトビは言葉ひとつひとつにビクビクと体を震わせる。
それが可愛くて、頬を緩める。

「好きだよ、トビ」

トビは何か言葉を探しているのは口を開いては閉じてを繰り返す。

「名前、」

震える声が俺の名前を呼んだ。
ボールを持っていた手が俺の腕に添えられる。

「ワシ、も…名前のこと」
「うん」
「好き、好きじゃ…」

俺は彼の言葉にクスリと笑った。





抱き締められた。
後ろから彼の熱を感じる。
耳に吹き込まれたのは好きという言葉。

ぞわりと背筋が震えた。

「好き、好きじゃ…」

そう震える唇で答えれば耳元で彼は笑った。

吐息が耳にかかって、その度に体はビクビクと震える。
こんなの初めてでどうすればいいかわからない。

ただ、彼がワシを好きだと言ってくれたことがなによりも嬉しくて。

「名前、好きじゃ。ホンマに、好きなんじゃ」
「わかってるよ、そんなに言わなくても」

抱き締めれていた腕が緩くなって、後ろを向けば優しい顔をして微笑む名前がいた。

「…名前」
「キス、しよっか」
「え?んっ!?」

保健室でのキスとは比べ物にならないくらいに深く口づけられる。
彼の舌が上顎をなぞり、ビクッと体が震えた。
そんな反応に満足したのか今度は舌を絡めとり、彼の歯が舌を甘噛みして。

「ぁ、んっ、」

混ざりあった唾液が溢れて、顎を伝う。

息が苦しくなって彼は胸を叩けば唇を離して。
顎に伝った唾液を、舌で舐めとった。

「長い、んじゃ…アホ…酸欠になるわ」
「えー、そんなに?」

自分の唇を舌で舐めて、彼は目を細める。

「明日、部活は?」
「あ、るけど…」
「そっか…じゃあ、」

トンッと体を押されベッドに倒れる。
顔の横に転がるボールを名前は優しい手つきでベッドサイドに置いて、ワシに覆い被さった。

「少しだけ」
「は?」

名前はクスリと笑って、首元に顔を埋める。
柔らかな物が触れて、すぐにチリッと痛みが走る。

「んっ、」

痛みが走ったあとにそこを舌がなぞり、つい溢れた声を手の甲で押さえて。

「な、にしてっ、」
「お前、マジで可愛い」

彼の手は胸から脇腹まで撫でて。
脇腹に名前は口づけて、またチリッと痛みが走る。

「んっ、ぁ、舐めるのやめっ」
「楽しみだなぁ、ちゃんと触れられる日が」

名前は唇を離してふわりと微笑んだ。

「名前…」
「ん?」
「…キス」

彼の背に腕を回せば彼はワシの名前を呼んだ。

「いくらでも、してやるよ」

塞がれた唇。
うっすらと目を開けば熱を帯びた彼の目と視線が交わった。

「んっ!?」

その瞬間に舌を吸い上げられて体が跳ねた。

かっこよすぎるわ、アホ…
心のなかでそう呟いて目を閉じる。

くらくらと酸素の足りなくなる頭で彼が好きだと改めて思った。

「名前っ」
「ん?」
「好きじゃ」

ぎゅっと抱き締められて耳元で彼の声がした。

「愛してるよ、トビ」

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