03
「みょうじって、部活やんねぇの?」
「やらないよ」
「なんでだよ。運動結構できんじゃん?」

朝、本を読んでいた俺に問いかけた友人。

「体動かすの嫌いじゃねぇけど…やる気はないよ」
「なんでだよー」
「勉強だけでキツイんだよ」

へらへらと笑いながら言うと呆れたように溜息をつかれた。
「成績、いいじゃねぇか」
「え?そうだっけ?」
「うわ、ムカつく。それ」
「ごめん、ごめん」

ガラッとドアが勢いよく開けられた。
「あれ、珍しく真波が遅刻しないで来たぜ?」
「へぇ、珍しいな」
「委員長、絡めなくて残念だな」

ニヤニヤと笑う友人から椅子に座っていた真波に視線を移す。
俺と目が合うと真波が、ガタッと音をたてて立ち上がって、こちらに近づいてくる。


「なんか、こっち来てね?」
「え?あぁ…そうだな」

机の横で足を止めた真波を見上げる。

「あの、さ…昨日…ありがと」
「なんのこと?」
「部室に、持ってきたの……みょうじ、でしょ……?」

不安気に揺れる瞳と、震える声に視線を逸らす。

「先生に頼まれただけだから。」
「…ありがと」

真波が離れて行って友人が俺を驚いた顔で見つめた。
「なんで名前呼び?」
「ん?…さぁ?俺、苗字で呼ばれてねぇから憶えてないんじゃね?」
「あぁ、そういう事か。まぁ、みょうじを苗字で呼ぶ奴いないもんな」

友人が納得したことに内心安心する。

バレるかと思った…

「つーか、なんで苗字で呼ばれんの嫌いなの?」
「え?別に嫌いなわけじゃねぇけど?」
「じゃあなんで名前で呼ばれてんの?」

俺は首を傾げてから口を開く。
「女の子が呼びたいって言ったから?」
「あぁ、納得…」
「みょうじ君、おはよー」

項垂れた友人の後ろから女の子が顔を出す。

「おはよう。あ、前髪切った?」
「あ、わかった?」
「可愛いよ。似合ってる」
「本当に!?ありがとー」

嬉しそうに笑う女の子に、俺も微笑む。
「くそ、タラシめ」
「だから、違うって」

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