04
「ねぇ、みょうじ君」「どうかした?委員長」
友人が部活でいない朝。
目の前に立つ委員長に、読んでいた本を閉じた。
「なんで、山岳と喋らないの?」
「わざわざ話す必要、ある?」
まだ、教室に人の姿は疎らだ。
「親友だったじゃない」
「そうだっけ?」
ヘラッと笑って首を傾げる。
「中学の頃は仲良かったでしょ!!?高校入ったら話してる姿みないし…みょうじ君の格好も変わったし」
「高校デビューってやつだよ。真波とは、話すことないし?」
「なんで、余所余所しく苗字なんて呼んでるのよ!?」
だんだん、声が大きくなっていく委員長に溜息をつく。
「関係ねぇだろ?」
「あるよ!!幼馴染でしょ!?」
「…幼馴染って言っても所詮、赤の他人だろ?」
俺の言葉に、頬をパシンと叩かれた。
少しずつ増えていたクラスメートがざわつく。
「まだ、あの事引きずってるの?」
「別に」
「そりゃ、ショック受けるのも分かるけど…だからって山岳を「ねぇ、委員長」……何?」
「なんで、委員長にそんなこと言われなきゃいけねぇの?」
立ち上がって委員長を見下ろす。
「世話焼きたきゃ、真波の世話でも焼いてろよ」
「私は、みょうじ君と山岳の心配を…」
俺は委員長の言葉を遮るように自分の机をガンッと蹴り飛ばした。
「きゃっ」
倒れた机。
読んでいた本が床に落ちる。
教室が水を差したように静かになった。
「頼んでねェよ」
「みょうじ君!!」
「つーか、なに?ショックな気持ちはわかる?なにそれ」
お前に、何がわかるんだよ。
大切なものを失ったことなんかねぇお前に…
「何がわかんだよ。お前に俺の何がわかってんだよ」
「みょうじ君にとって大切なものだったのはわかってるわよ。だからって山岳を避ける理由にはならないでしょ!?」
ほら、見ろ。
わかってねぇじゃねぇか…
俺がどんな気持ちで毎日この学校に来てるのかも、お前らを避ける理由も…
「お前は何もわかってねぇじゃねぇかよ。何もわかってねぇくせに俺の人生にまで干渉してくんじゃねェよ」
「ちょ、みょうじ君!!」
チッと舌打ちを残し、委員長の制止の声を無視して鞄を乱暴につかんで教室を出る。
「俺に構ってるヒマがあんなら、大好きな真波君のところにでも行ってれば?」
教室を出るときに吐き捨てた言葉。
委員長の目が見開かれ、悔しそうにかみしめた唇。
本当にもう、やめてくれよ…
頬を流れた涙を乱暴に拭って、俺は走り出した。
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