02
「黒髪で外の部活で…」
「及川が知らなそうな奴?」

コクりと頷けばマッキーとまっつんは顔を見合わせる。

「その女を探してどうすんだよ」

岩ちゃんが眉を寄せた。

「借りたタオルを返したいんだよね〜」
「顔、見てないの?」
「見たけど知らない子」

3人は首を傾げる。

「どこで会ったんだ?」
「体育館裏にある水道らへん?ほら、昨日岩ちゃんが俺を怒鳴ったところ」
「あそこ使ってる奴いるか?グラウンドから遠いだろ?」

そうなんだよね〜と頬を机につけてため息をつく。

「誰か知らないかな〜…」
「一人浮かんだかもしんね」

そう言って手を上げたのはマッキーだった。

「誰!?」
「みょうじなまえって子」
「あぁ、みょうじなら及川知らないかもな」

まっつんも納得したように笑う。

「みょうじってサッカー部のキャプテンだろ?」
「お、岩泉も知ってるのか」
「名前だけ。部長は他の奴なんだっけ?」

そうそう、なんて彼が盛り上がっていて俺は首を傾げる。

「詳しく!!!」
「あぁ、そうだった。みょうじはサッカー部のキャプテンでクラスはどこだっけ?」
「俺達とは一緒じゃないよ」

いつも行かないクラスってことか…
サッカー部だったんだね、あの子。

「サッカーでは1年の頃から代表に選ばれたりして、凄い奴で。恋愛事には疎くて」
「てか、サッカー以外に興味がないよな」
「それな」

どこに行けば会える?と訪ねれば教室か放課後のグラウンドと言われた。

「みょうじは下校時刻ギリギリまで1人で練習してるから」
「わかった。今日、行ってみる!!」

俺の言葉を聞いた岩ちゃんが首を傾げた。

「お前がそこまで必死になるのって…変だな」
「あ、俺も思った」
「惚れた…とか?」

3人がじっと俺を見つめる。

「そんなわけないじゃん」
「…昨日買ったタオルってみょうじに渡すやつ?」
「え、返すんじゃなかったの?」

岩ちゃんが言った言葉に視線を逸らす。

「…へぇ及川がねぇ…」
「違うよ!!違うからね!?タオルは汚しちゃったから買っただけで!!聞かないといけないことがあるから探してるだけで!!」

そういうのじゃないと訴えても彼らはにやにやと笑うだけ。

「まぁ、綺麗だもんな。アイツ」
「美人。しかも、いい奴」
「及川には勿体ねぇな」

だから、違うよ!!と俺は必死に弁解していた。
そんな俺に声をかけてきたのはよく俺に声をかけてくる女の子グループ。

「何の話してるのぉ?」
「え?あぁ、昨日のテレビの話だよ〜」
「あ、あれ見たぁ?」

彼女の話は出さない方がいい気がして咄嗟に話を変えた。
岩ちゃんたちは頑張れよ、なんて口パクで言って少し離れる。

…なんで喋ってるときに割り込んでくるんだろう。
そう、思いながら女の子たちに笑顔を振りまいた。





「なまえ」
「何?」

廊下を歩いていれば隣にいた友人がある教室を指差す。

「及川の周りにぐるっと女子。すごいね」

視線を友人の指差す先に向ければ確かに及川が女子に囲まれていた。
及川の友人の岩泉たちは少し離れたところで呆れたような顔でそれを見ている。

「…モテすぎるのも考えものだよね」
「友達と話すのもままならない感じ?大変そーだね」
「ホント、あぁいうの嫌い」

私はそう呟いて足を進める。
彼の笑顔がひきつっているのが視界の端で見えてため息をつく。

「恋は盲目ってよく言ったよね」
「なまえ?」
「なんでもない。さっさと購買行こう」

そうだね、と友人が言って。
彼は視界から消える。

ホントに…嫌いだなぁ…

「みょうじ」
「ん?あ〜…花巻?」
「名前忘れてたっしょ?」

ごめんね、と言えばお前らしいから許すと言われた。

「どうしたの?」
「今日も放課後、部活のあと練習してんの?」
「するよ。なんで?」

ちょっとお客さん、行くかもと彼が言って微笑んだ。

「お客さん?ん、わかった」
「よろしくね」
「うん?」

…お客さんって誰だろう。
まぁ、いいや…
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