07
俺とみょうじさんが話している姿を見て岩ちゃんは目を丸くした。

「お前…」
「岩泉。及川は別に悪くないよ」

みょうじさんの言葉に岩ちゃんは眉を寄せる。

「私は構わないから」
「構わないってお前、わかってんのか!?」
「わかってるよ。それでも、私は及川の友達だから」

仕方ねぇなぁって岩ちゃんが笑った。

「まぁお前なら及川と仲良くできるだろうし。女もそう簡単に手は出せないだろ」
「もしもの時は俺が助けるからね?」
「うん。まぁ、岩泉には迷惑かけるだろうけど…よろしくね」

岩ちゃんはそりゃこっちの台詞だって言って俺の背中を叩いた。

「痛いよっ!?」
「うっせ」

3人で話していればマッキーとまっつんもやってきて。

「ホントに仲良くなってる」
「いいでしょー?」
「俺達元から仲良しだけど」

マッキーはにやりと笑ってみょうじさんと肩を組む。

「マッキー!?ダメ、駄目だよ!!」
「及川必死じゃん」

笑う彼らに俺は頬を膨らませて。
キモいって岩ちゃんが言ってたけどみょうじさんはクスクスと笑ってた。

「私、別に花巻とそんなに仲良くないよ」
「ひどくね!?シュークリーム食べに行った仲デショ?」
「あ、そういえばそうだね。また新しいお店見つけたけど行く?」

みょうじさんがそうマッキーに言えばマッキーも嬉しそうに笑って頷いた。
その姿を見てなんだか胸が苦しくなって。

自分の胸の辺りに手を持っていって首を傾げる。

「及川?」

岩ちゃんが俺を見て不思議そうな顔をした。

「なんだよ、その顔。泣くの我慢してるみてぇな顔」
「え、及川泣きそう?ハンカチならあるけど」

心配そうに俺の顔を覗きこんだ彼女に俺は慌てて首を横に振った。

「全然平気だよ!!泣くわけないじゃん!!」
「そう?ならいいけど」

苦しくなった胸は彼女の瞳に自分が映された時に消えた。
モヤモヤした感情がなくなって。

俺はやっぱり首を傾げる。
こんなの初めてだ。

「なまえー!!後輩来たよ」

みょうじさんの友人の声が聞こえて、彼女はすぐいくと答えた。

「じゃあね」
「シュークリーム約束な」
「わかってる」

彼女は友人の方に歩いていこうとして、ピタリと足を止めた。

「及川」
「え、あ…なに?」
「そうやって友達に囲まれて笑ってる方が及川らしいと思うよ」

それだけ言って彼女は後輩と友人と話始めて。
それを見つめながら俺は唇を噛む。

「あれ、及川マジで泣きそう?」

まっつんが少し驚いたように俺を見て。

「始めて、言われたから…どうすればいいか、わかんない」

女の子を侍らせてる方がらしいってずっと言われてたから。
あんなこと言われたことなくて。

「…岩ちゃんんん、なに!!どうすればいいの!?」

岩ちゃんに抱きついてそう言えば容赦なく頭を叩かれて。

「痛い…」

額を押さえて岩ちゃんを見れば呆れたようにため息をつく。

「ちゃんと、お前のこと見てくれてる奴がいたんだ。だったら、それを失しなわねぇように頑張れよ」
「…うん」
「アイツならお前を切り捨てたりなんてしない。俺たちに言えない悩みもアイツなら聞いてくれる」

頼ることも友情だって岩ちゃんは言った。
なんか無駄にかっこいいこと言われたって言えば不機嫌そうに眉を寄せる。

「うっぜ」
「ひどいよ岩ちゃん!!うざいなんて!!」





「なまえ先輩、及川先輩と仲良いんですか?」
「ん?うん。友達」
「付き合ったりとかは!?」

してないよって言えばなんだぁって残念そうに形を落とす。

「先輩とならお似合いだと思ったんですけど…」
「そう?まぁ、ほら。及川が幸せになれる相手なら誰でもいいと思うよ。似合う似合わないは関係ない」
「先輩ってなんか大人なことばっかり言いますよね」

そう?って言えばはいと答えて。
でもそういうところが好きですと可愛らしく笑った。

けど、かっこいいですよねぇと後輩が及川を見て。
それに釣られるように視線を彼に向ける。

まぁ、確かにかっこいいかもしれない。
けど、私の中の彼は泣いていて。
誰か救ってと手を伸ばしている気がした。

「早く、彼を救ってあげて」

私の声が友人に聞こえていたのか首を傾げ、私を見る。

「救う?」
「なんでもないよ。ほらそろそろ教室戻りな」

後輩の背を押せばまた部活のときにと走り去っていく。

「なまえ」
「なに?」
「助けてくれる人なんてそう簡単に現れないよ」

御伽噺や漫画じゃないんだからって彼女は苦笑した。
確かに御伽噺じゃないけど。

「それでも…助けを求めれば誰かが気付いてくれるかもしれないよ」
「それはきっと…なまえじゃない?」
「私?」

彼女は笑ってなまえだけだよって言った。

「人を救うのも…才能なんだよ」
「才能…?」
「うん。なまえにはそれがあると私は思ってる。だからきっと及川を救うのはなまえだよ」

及川が助けを求めてるようには私は見えないけどねと彼女は言って教室を出ていく。
私もそれを追いかけて、首を傾げた。

「……私が、救う?」
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