04
朝、みょうじの顔を合わせないように早めに学校へ向かった。

昨日のみょうじの様子は明らかにおかしかった。

偶然、体調が悪くて嘔吐していたのか、それともそれが日常なのか…
分からないことだらけだ。


「みょうじ…」

あの笑顔も、退屈で退屈で仕方ないと言ったときの表情も、指図するなと言ったときの表情も僕は知らない。

あんなに憎悪と嫌悪を含んだ瞳は知らない。
いつも周りに振り撒く笑顔も、瞳には憎悪と嫌悪が浮かんでいた。

「月島?どうかしたか?」
「え?あぁ…スイマセン」

不思議そうに僕の顔を覗きこむ部長。

「珍しいな。月島がぼーっとしてるの」
「少し気になることがあって…」


部長が首を傾げる。

「部活のことか?」
「いや…幼馴染のことです」
「幼馴染?」

朝食はちゃんと食べてるだろうし…
やっぱりただ体調が悪かっただけ?

「何で僕がみょうじのこと気にしないといけないんだ…」

ポツリとつぶやいた言葉に部長がまた首を傾げた。

「みょうじ?みょうじってみょうじなまえ?1年の」
「知ってるんですか?」

部長は頷いた。
「有名だよ。凄い可愛いってさ。幼馴染なのか?」
「…一応」
「へぇ。一緒にいるところ見たことないな…。なんか心配なコトあんのか?」

部長の問いかけに顔を背ける。

「いえ、気にしないでください。平気なんで」
「…ならいいけどな。部活に支障が出るなら誰かに相談しろよ」
「はい」

離れていく部長の背中を見ながらため息を一つこぼす。

「有名、ね…」

どうやら僕はみょうじのことを知らな過ぎるようだ。

「ホントに…何がどうなったのか説明してほしいよ」

僕の声は体育館の喧騒に飲み込まれる。

「ツッキー!!教室戻ろう!!」

駆け寄ってくる山口にうん、と返事をして歩き出す。

昔からモテてはいたけど、先輩にまで知られるような人気はなかったと思う。
髪型とかもあんまり変わってなかった。

「やっぱり、あの笑顔か…」

あんなに不気味なものに、みんな惹かれるなんて…本当に意味がわからない。
戻る

TOP