08
「ツッキー、最近みょうじさんのことよく見てるね」
「は?」

窓の外を眺めていた僕にそう言って笑った山口。

「…なんで山口がなまえのこと知ってるの?」
「有名だからね。それに中2のとき同じクラスだったから」

中2って…僕となまえが疎遠になった頃か…

「あの頃とは凄く変わったよね」
「中2の頃ってどんなだったの?」
「え?暗かったよ。笑わないし、よく女の先輩に呼び出されてて…あの…なんていうのかな…いじめ、られてたはず」

なまえが…いじめられてた?
窓の外で笑うなまえを見てから、山口を見る。

「それ、ホント?」
「う、うん」
「原因、知ってる?」

僕の質問に山口は目を逸らす。

「…知ってるんだね」
「ほ、本当のことかはわからないけど…ツッキーは知らない方が良いかなって…」
「いいから、教えて」

山口が言いずらそうに口を開く。
山口が話した内容に、僕は目を見開いた。

「あ、あの…ツッキー…本当のことかはわからないからね」
「…うん、わかってる」

全部つながった。
なまえと疎遠になった理由も、僕の名前を呼ばなくなった理由も。
ご飯を食べれなくなった理由も、リストカットを始めた理由も、ずっと笑ってる理由も…

「全部、わかったよ」
「ツッキー?」
「ありがと、山口」

珍しくお礼を言ったからか山口は目を丸くしてから嬉しそうに笑った。

「どういたしまして、ツッキー!!」





「あ、あれ月島君じゃない?」

次が体育の授業の私たちは校庭に出ていた。
数人で集まって話していたときに1人の女子の言葉に全員の視線がその指差された先に向けられる。

月島君と山口君か…
窓際の席に座る月島君と話す山口君。

「やっぱり、カッコイイよねー」
「大人っぽいしね!!カッコイイ」

キャーキャーと騒ぐ女子の声を聞きながら月島君をぼんやりと見つめていた。

―僕が、怖い?
―僕じゃ…頼りない?
―なまえは僕を頼らなくなった
―中2の時から…僕らが疎遠になったときから…玲雄は僕に助けを求めなくなった。ねぇ、なんで?


この間言われた言葉がぐるぐるとまわる。

なんで、今更そんなこと言うの?
なんでそんなに、泣きそうな顔して私を見たの?
わけ、わかんない…

山口君がいなくなって、月島君が頬杖をついてこちらを見た。
交わった視線。
なぜか、逸らせなかった。

「なまえ、先生来てるよ」
「…なまえ?」

友人の声も、聞こえてるのに月島君と交わった視線を逸らせない。

「なまえ!!」

腕を引かれてやっと、我に返る。

「あ、ごめん…」
「大丈夫?どうしたの?」
「ちょっと考え事してた」

ヘラヘラといつものように笑って視線を月島君のいる教室に戻す。

「ねぇ…何、その顔…」

悲しそうな、同情するような顔をこちらに向ける月島君に自分の手を握りしめる。

「…なんなのよ、今更…」
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