我らの破天荒エンジニア!〜ゴキモッド事変〜 Twitter上で展開していたうちよそ作品です。
●苦手な方は回避推奨●
登場人物
うちの子
みょうじ なまえ(男)
高校2年生のエンジニア
トリオン兵に一目惚れ(?)して、ボーダーに入った異端児。
トリオン兵を研究し、作ることが生きがい。
よその子
鈴野 楓亜(女)
高校2年生の戦闘員
B級中位部隊所属
出水の弟子で、辻を推してる射手
この2人の出会い(?)の話
■□■□■□■□■□■□■
徹夜4日目。
上層部からの急務が原因だった。
チームのエンジニアは休み休みやらせてあげられていたがチーフである俺と高校生にしてチーフ候補と言われるなまえは休みもなく徹夜が続いていた。
「……こういうのばっかりですよね、エンジニアって…雷蔵さん、俺眠いっす」
「そういうなよ、なまえ」
「あー……モールモッドがゴキブリに見えてきた…」
画面の中。
解析していたモールモッドを見つめ、なまえはもうそれ以外に見えないと呟く。
「やめてくれ…ゴキブリなんて」
「……ゴキブリ………ゴキブリか、」
「なまえ…?」
なまえの方に視線を向ければ彼は真っ直ぐ画面を、モールモッドを見つめていた。
そのモールモッドを真剣に見つめるその目に嫌な予感がした。
「……勘弁してくれよ?なまえ」
「何がですかー、雷蔵さん」
「……なんでもないよ」
なんて話をしていたのは1週間ほど前のこと。
鬼怒田さんからの連絡で嫌な予感が当たったことを悟る。
鬼のように怒鳴る彼を宥めながら指令室に駆け付け、扉を開けて後悔した。
「どうにかせんか!雷蔵!!」
「なまえですか!?!」
「他に誰がいるんだ!!」
指令室のドアが閉まり、カサカサと嫌な音があちこちから聞こえてくる。
その音の原因は、足元を走り回る茶色いそれ。
「モールモッドですよね…?」
忍田さんと鬼怒田さんの怒鳴り声が木霊する室内。
司令は額に手を当て、溜息を吐いた。
「ゴキブリ型モールモッド………まさか本当に作るとは………」
「感心している場合か!どうにかしろ、雷蔵!なまえはどこに行った!」
「なまえを捕まえるよりは駆除した方が早いです」
とはいえ、モールモッドがモデルなら硬度は抜群だし小さいからこそのスピードが厄介だ。
「アタッカーには無理だ。私も駆除をしようとしたがほぼ当たらん…」
「近くにいるガンナーかシューターを連れて来い」
静かに、そして確かに怒りを込めた司令の声に返事もせず慌てて司令室を出た。
「やってくれたな、なまえ…!」
鬼怒田さんから、というよりは上層部からの仕事で1週間以上まともな睡眠時間も休みもなく働かされたのだ。
ストレスが爆発している。
パッと見でもゴキモッドの数は相当なもの。
1000なんて可愛い数字では無いはずだ。
「あ!いいところに!出水、鈴野!」
「寺島さん?」
「雷蔵さん!どうしたんですか?」
説明もまともにせず司令室に向かってくれ、と伝えれば2人は顔を見合わせ 走り出す。
「行けばわかるんすよね!?」
「わかる!頼んだぞ、2人とも」
あの2人がいればある程度の火力にはなるけど、2人じゃ足りないだろうって思考は悲鳴によって掻き消された。
「あ……」
出水の悲鳴か。
まぁ、叫ぶよな…あれは。
「すまん、2人とも。なんか奢るから許して」
「雷蔵?そんな慌ててどうした?」
「どうしたんですか?さっきの悲鳴も」
曲がり角。
ぶつかった諏訪と堤の手には恐らく本部長にでも提出するであろう書類がある。
「ナイスタイミングだ、2人とも」
「は?」
「助けてくれ」
2人も顔を見合わせる。
「何があった?」
「なまえがやらかした」
「「…………あー」」
お疲れさん、と肩に置かれた手。
同情はいらん、助けてくれとその手を払った。
「相変わらずですね、なまえくんは」
「そんな笑える話じゃないから、まじで。とりあえずついて来て」
▽
焦る雷蔵さんに言われるがまま司令室に入れば「いい所にきた!」と焦った鬼怒田さんが大声で言った。
「何事ですか…って、うわ!?なにこれ!?!ぎゃーーーーーー!!!!!」
「こ、公平くん?!どうしたの………て、え…?」
叫ぶ公平くんに釣られて下ろした視線。
足元を駆け抜けた10cmほどの名前を出すのもおぞましい存在。
しかも、それが1匹ではないのだ。
「うわっ!?!え、なになになに!?ゴキブリ!?!!」
「てか!数!!やべぇ!!なにこれ!?!!!」
「……すまないね、2人とも。…会議中になまえくんがやってきてね……」
なまえくんってエンジニアの…?
公平くんと同じクラスのだよね?
ちら、と公平くんの方を見れば頭を抱えていた。
「なまえ………また、なまえ……………」
「ラッドを連れてきたかと思えばゲートが開いてね………まぁ、この有様だよ」
「すまないが、駆除を頼みたい」
司令の地を這うような声に即座に「了解です」と答えて、公平くんと同じようにとりあえずメテオラを構える。
「これ、ちゃんとトリオンで死ぬんすか?」
「ゴキブリのビジュアルはしてるが、元はモールモッドだ!!」
「……てか、こんなんやられるってどんな恨み勝ったんすか…。あーもう!楓亜、一掃すんぞ」
メテオラが当たればちゃんと倒せるらしい。
公平くんの火力があればそう時間はかからないだろう、と思ったのも束の間 目の前にいるゴキモッド。
「…………ゴキモッドが飛んだーーーーー!?!!!」
「は!?!て、お前!楓亜!!!」
「え、」
目の前に浮遊するゴキモッドと公平くんの焦った声。
気付いた時には分割し損ねたメテオラが鬼怒田さんが普段座っている椅子を吹き飛ばしていた。
「…鬼怒田さん、避難しててよかった」
「アホか!!お前は、もうメテオラ使うな!!ハウンドにしろ、ハウンドに!」
「えー!ごめん、公平くん!わざとじゃないの!」
浮遊するゴキモッドは1匹だけではない。
恐らくそういう設定にしてあったのだろう。
なまえくんって凄い人なのかな…。
「うーわ、なんじゃこりゃ。ゴキブリ?あ、モールモッド…?」
「諏訪さん!堤さん!」
「おー!出水と鈴野がいんなら俺らいらなくね?」
この数見て言って!?と公平くんが叫べば2人は周りを見渡す。
「あー………」
「凄い量ですね。飛んでますし」
「……飛んでんな。ゴキブリみてぇな見た目のモールモッド……」
これなまえ作?と諏訪さんが雷蔵さんに尋ねる。
雷蔵さんは首がちぎれそうな程頷いていた。
不憫だ。
「ま、司令達も困ってるみてぇだし。やるか」
「ですね」
▽
ゴキモッドの駆除を終えたのはもう、30分以上過ぎてからだった。
壊れた鬼怒田さんと椅子と床。
だが走り回るあれがいないだけマシな気がした。
「で?これ何がどうなってんだよ」
「なまえの自作。ゴキモッド作って、ゲート開いて、この部屋に送り込んだみたい」
「……やってんなぁ…」
当の本人はゲートが開く前に退室しているらしい。
「壊したのは楓亜だけどな」
「それは!ほんとにごめんなさい!」
「いいよ、大丈夫。責任をもってなまえに直させるから」
心配そうにしていた鈴野がほっと息を吐く。
「とりあえず、手伝ってくれてありがとう。みんな」
「なまえに何か奢らせよ。まじ許さん」
駆除の邪魔にならないよう避難していた上層部の面々は席に戻る。
勿論、鬼怒田さんは立っているけど。
「そういえばなまえくん、さっき仮眠室の前で見かけませんでした?」
「あー、そういやいたか?ふらっふらで歩いてたよな」
「………連れてこい」
勿論ご立腹な上層部に はい 以外の返事は出来ず、部屋を出た。
仮眠室の彼のお気に入りの部屋には確かになまえ漢字が眠っていた。
大事そうにラッドを抱きしめて。
「………待って」
そのラッドがゲートを生成し始める。
「やめろーーーーー!!!」
その後のことは、思い出したくもない。
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