≠Platonic


冬休み、と言っても俺が帰省を許されたのは年末年始の数日のみ。
いつも通り実家に帰る予定だったが親父と義母は新婚旅行に行くらしく、俺は兄であり恋人でもあるなまえさんと2人きりで過ごすことが決まった。

なまえさんと付き合い始めてから数ヶ月。
志望校を決めた彼は推薦でそこの大学への進学を早々に決め、部活も引退。
気づけば学校で会えることも少なくなっていた。
俺は俺で新主将という立場になり以前よりも自由な時間が減った。
その為、恋人の彼とは未だにキス以上のことをしていなかった。

「…期待してんの俺だけかもしんねぇけど…」

今まで恋愛にも女性にも興味がなかった人だ。
男同士でそこまでは考えてねぇかなぁ…。

「一也」
「なまえさん!」

そんなこと考えながら最寄りの改札を抜ければ、片手を上げて微笑んだ彼。

「おかえり」

白昼堂々と抱き着くわけにもいかず駆け寄れば、彼の手が頭を撫でそして優しく抱き締められた。

「ちょ!?なまえさん!?」
「照れてる?可愛い」
「ここ!外ですよ!?外!」

そんなの知ってるよ、と彼は悪戯に笑った。

「何処だろうと、一也が目の前にいたら抱き締めたくなっちゃうよ。会うのも久々だしね」
「それは、そうなんですけど…」

相変わらず、この人は自分のことには鈍いらしい。
周りから向けられている視線には気づいていないのだろう。

「荷物持つよ」
「え。悪いですよ。これだけだし」
「いーの。昨日までの練習でヘトヘトなんでしょ?」

会えずとも毎日連絡は取り合っていた。
約束をしたわけではないけど、彼は必ず連絡をくれた。
1日2通か3通くらいのやり取りだけど、それだけで繋がっているんだって気にはなる。
まぁ、声聞きたいなぁとから会いたいなぁとか思ってはいたけど。

軽々と荷物を持ち上げた彼が帰ろう?と歩き出す。

「お腹は空いてる?ご飯作ってあるけど」
「食べたいです。なまえさんの手料理初めてかも…」
「あ、確かに。それならもっとちゃんと作ればよかったかな」

なまえさんが作ったものならなんでも嬉しいですよ、と言えば彼は嬉しそうに表情を綻ばせた。

「夜は年越しそば作るからね」

久々に見るとやっぱり、目を引く容姿をしてる。
日差しを浴びて髪はいつもより明るくみえて、微かに香水なのか甘い香りがする。

「明日の夜には2人も帰ってくるみたいだから。それまではゆっくりしてようね」
「はい」





彼の作ったご飯は文句のつけようがないくらい美味しかった。
子供の頃から作っていたのは知ってたけど、お店に出せるレベルだ。
それから節々に俺を甘やかすのが擽ったくて、でも愛おしかった。
だが、やはりキス以上のことが起こる気配はない。
風呂で準備はしたのだが、きっと無駄に終わるのだろう。
お風呂から上がった彼は少し濡れた髪をかき上げて、普段見せない額を出していた。

「う、わ…」
「え、なに?」
「それずるすぎません…?」

ただでさえイケメンなのに、何倍も色気を感じる。
微かに火照った体とか首筋を伝わる雫とか。

「滅茶苦茶カッコイイ」
「……ありがとう」

少し照れさそうに笑った彼は俺の隣に腰掛ける。
同じのジャンプー使ってる筈なのになんで、こんなに違うんだろう。

「なまえさん、」

服の裾を引いて彼の名前を呼べば彼の瞳は欲情した俺を映した。
だらしない目をしてる。
彼は、どう思っているのだほろうか。
こういう感情も迷惑なのかな、なんて思っていれば彼の唇が俺の唇に重なった。

「ん、」

柔らかい。
何度か唇が重なって、差し込まれた舌。
急に触れた熱に体が震える。
それに気づいたのか彼は頬を撫でて、抱きしめてくれる。

「ぁ、」

ダメだ。
普段よりも丁寧だからかな、香りが強いからかな。
わかんないけど、クラクラして下半身が重くなる。

「とろんてしてる」

ちゅっ、音をさせて離れた彼のシャツを縋るように掴んではく、と唇を震わせた。
どうしよう、嫌がられたら。
拒否られた多分俺、立ち直れないよな。
けど、次なんてあるかわかんない。
俺のオフもねぇし、なまえさんは大学でもハンド続けるって。
しかも、親友のあの人とルームシェアするかもって。

「一也?」
「…俺、…したい、です」

尻すぼみになっていく声。
こんなに震えたことあったかよ。
怖くなって俯けば彼の手が優しく頭を撫でた。

「いーよ」
「ぇ、」
「一応、そのつもりではいたし」

ちょっと恥ずかしそうに彼は頬をかいた。
ベッド行こうかって、体を抱き上げられる。
ふわりと感じたことのない浮遊感に彼には抱きつけば擽ったそうに彼は笑う。

「けど、ごめん。俺、後ろ感じないっぽいんだけど」
「ん、?」
「ん?」

ベッドに俺を下ろしながら彼が言った言葉に変な沈黙が生まれる。

「抱かれるの、俺…すよね?」
「え?」
「え?」

抱かれる方は体に負担が大きいから俺だと思ったんだけどと彼は言った。

「いや!いやいやいや!なまえさん抱くとか想像つかなすぎて!?てか、普通に俺が抱かれる…もんだと…寧ろ、抱かれた…ぃ……てきな……」

言っててどんどん恥ずかしくなる。
いや、期待してたのかよってなるし。
けどちゃんと俺とそういうことするかもって考えてくれてた…んだよな?
しかも俺の事、気遣ってくれて…たんだよな?

「じゃあ、抱いていいの?」

真っ直ぐ彼は俺を見つめた。
いつものより、熱っぽい視線にこくりと頷くことしか出来なかった。




ベッドに押し倒して、キスをして、しっかりと筋肉のついた体を愛撫して。
それだけで息絶えだえになってる彼は目に毒だ。
がっついてしまいそうになるのを我慢しながら枕元に置いておいたローションを手のひらで温めていれば、一也は泣きそうな顔して俺を見つめていた。

「うん?」
「…ゃ、あ…の…嫌じゃ、ない…?」
「嫌になる理由ある?てかね、恋人がそんなとろとろな顔してて 我慢できるほど大人じゃないよ。俺」

ひくっ、彼の喉が震えた。
入れるねって、声をかけて後ろの穴にローションを擦り付けるように指を滑らせる。

「ぁ、っ」
「冷たい?」
「だい、じょぶ…」

ゆっくりと指を中に入れて、ふと気づく。
俺が彼に抱かれるかもしれないと思って準備をした時と違う。

「ここ、自分で触った?」

言った瞬間に直球すぎたと後悔する。
見た事ないくらい真っ赤に染まった彼の顔。
そして、枕を引き寄せてそれを隠してしまった。

「…ごめん、」

流石にデリカシーなさすぎたか。
真っ赤に染まった耳を指で撫でながら、顔見せてって呟く。

「さん、ぼん…」
「え?」
「……三本、入る……」

消え入りそうな声だった。
それ、1人でやったの?
俺に抱かれる為に?
俺だってやったけど、正直気持ちよさなんかなくて違和感ばかりだった。
それを、寮で?俺のために?

彼の熱が移ったのか顔が一気に熱くなった。
なんだそれ、死ぬほど可愛いじゃん。
ニヤけそうになる、てか ニヤけた口を隠して視線を逸らす。

「…ごめ、ん、、きもちわるい…よね…?」

返事がなかったからか恐る恐る枕をずらして俺を見た彼が目を丸くさせ「顔真っ赤」と呟いた。

「言わなくていいの。そんなこと」
「だ、て…」
「恋人にそんなこと言われて嬉しくないわけないんだって。…あーもう、お前可愛いなぁ」

愛おしい。
好きだよ、って呟きながら額に口付ける。
指を入れた中を傷つけないようにかき混ぜながら 赤く染った彼の肌を撫でた。





もう大丈夫かなって、彼の指が後ろから抜ける。
その感覚にもあっと喉が鳴いた。

「入れていい?」
「ん、」

指よりも何倍も熱いものが押し付けられて、背中が仰け反る。
指で解された場所に沈んでくる彼のものに息が詰まる。
圧迫感もそうだけど、火傷しそうな熱も。

「痛い?」

珍しく眉間に皺を寄せた余裕のない彼の声に、ふるふると首を横に振る。
口を開けば、何か出てしまいそうでぐっと唇を噛んだ。
それに気づいたのか、切れちゃうよと彼の指が唇をなぞりそして、舌に触れた。

「ぁ、やっ」

噛むことも出来ない。
半開きの口からは情けない音が漏れる。
その間にもゆっくりと彼のものは中に沈んでいく。

「ァ、ゃんっ」

だらしなく零れる涎。
それを彼の舌が掬って、そのまま深く口付けられた。
口からは引き抜かれた指は体を撫で、そして俺自身をなぞった。
それだけで嬌声が漏れて、体が跳ねる。

「、だめっ触ったらっ」

頭ん中どろどろだ。
熱に溶かされて、考えなんてまとまらない。
ただ、縋るように彼の背にしがみついた。

「一也、」
「な、にっんぁ」
「全部、入ってるよ」

気づいてる?って腰を揺すられる。

「ぅあっほ、んと…?」
「ほんと」

1つになってるよ、って言葉に自然と涙が零れた。
それを優しく拭ってくれた彼は、可愛い好きだよってキスしながらゆっくり腰を揺らす。
自分でやった時は何も感じなかったのに、なんでか彼のものが入ってるってだけでいっぱいいっぱいだった。
少しずつ律動が速くなっていく。

「あ、アアッ! っゃ……や、ぁっ、待っ……!」
「一也ん中、気持ちい」
「ばっ……ひ、ぃ……っ、あ!」

なんで今そんなこと言うんだよ。
俺が抱えてた不安全部、なんでわかったように拭っていくのさ。

「なまえっさん!」

彼にぎゅう、と抱き着いて、好きだのイキたいだのうわ言のように零した。
俺も好きだよ、愛してるって耳に吹き込まれて、自身を擦られて俺は呆気なく果てた。
それに遅れて、なまえさんも俺の中で ゴムに吐き出した。

「…ぁ、…はぁ…響也、さん…」
「うん?」
「気持ち、よかった?」

目の前がチカチカしてる。
その中で彼の優しく瞳は細められて、クセになりそうだと熱っぽい声で囁いた。




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