普通科先生と瀬呂範太


あれこれ考えるのは昔からの癖なのだ。
答えが、納得できる答えが出るまで考え続けてしまう。
あの日から、俺の答えはまだ出ていない。

「…しょうゆ顔」

神野事件が明け、学校は全寮制になり再開した。
奇跡的に全員が揃った教室に、入ってきた痩せ細ったオールマイト。
緑谷や爆豪程ではないが俺も憧れたスーパーヒーローのその姿よりも、頭の中を占めたのは答えの見つからない問い。
人はこれを後悔、とも言うのだろう。

「おい!!」
「うぉ!?何?!悪ぃ、考え事してた」
「いつまで、考えりゃ満足すんだ?」

いつの間にか休み時間になっていたらしい。
目の前に立った爆豪は俺を見下ろし、答えを求めるように首を傾げた。

「えっと…」
「後悔か?」

どきりとした。
コイツ、そういうとこだけスルドイのよね。

「その後悔の先に、何があんだ」
「後悔じゃねぇよ。俺にも悩み事くらいあんのよ?」
「後悔は行き過ぎりゃ、毒だ」

後悔と決めつけた彼はそう言って溜息をつき、俺の前の席にどかっと座る。

「人の顔を見る度に、そんな面される俺の身にもなれや」
「…すまん」

なるほど、そんなにわかりやすかったか。
自分の表情筋を解すように触り溜息をつく。

「もうちょい待ってね。なんとかするから」
「…出んのかよ、答え」
「出すよ」

でなきゃ、俺は前には進めないから。
じっと俺を見つめた彼は舌打ちをして遠慮もなしに俺の脛を蹴った。

「痛っ!?!」
「国語準備室」
「ん?国語?」

放課後そこ行ってこい、と彼は言った。

「え、と?国語では解決しねぇけど、確実に」
「…行きゃわかる」

爆豪ほそれだけ言って、自分の席に戻っていく。

国語準備室ってどこよ?
そこに何があんの?
なんて、思っていたのに。
放課後、何故か俺の足は国語準備室を探していた。

「…うーん、」

電気のついていないその部屋のドアを開こうとすれば「どうしたの?」とどこか聞き覚えのある声。

「あ、」
「うん?」
「個性消した先生」

振り返って目が合うと彼は鍵開けるねと笑った。

「え、いや!俺別に、」
「爆豪君のお友達でしょ?」
「あ、はい」

普通科の職員室に来るからなにかと思えばこういうことか、と彼は言いながら部屋の中へ。

「職員室に来たって…?」
「さっきね。暇か?準備室開けろってね。爆豪君が来るのかと思ったけど、お友達だとはね。けどまぁ、いい成長かな」

安心したように彼は微笑み、さぁどうぞ?と部屋の中から俺を振り返った。

爆豪とこの先生が繋がってんの?なんで?
わざわざ呼びに行ったってことだよな?

「空いてるとこ座って。コーヒーは飲める?」
「ブラックはちょっと…」
「砂糖とミルクはあるよ。爆豪君が置いていったから」

ブラックは飲めるけど疲れてる時は甘いのが良いんだって、と彼は穏やかな声で話しながら電気ケトルにペットボトルの水を注いだ。
スイッチを入れてから彼はラックに干してあったマグカップにインスタントコーヒーをセットしていく。
そのラックには1つだけそのまま干されたマグカップ。
見覚えのあるデザインの色違い。

「…それ、」
「うん?」
「爆豪が使ってんのと同じ…」

俺の言葉に先生は笑って爆豪君のだよと答えた。

「…仲、良いんですか」
「仲が良いって言葉は当てはまらない気はするかな。けど、彼にとってここはいい止まり木なんだと思うよ」

熱いから気をつけてね、と差し出されたマグカップ。
砂糖とミルクはテーブルの上に置かれて好きなように使って、と彼はブラックのコーヒーを啜った。
自分を真っ直ぐ見つめる彼の目にどこか居心地の悪さを感じ目を伏せた。
ミルク1個と砂糖半分を入れてくるくると回していれば「名前はなんて言うの?」とやはり穏やかな声が俺に投げられる。

「瀬呂です。瀬呂範太」
「瀬呂君か。俺は言ノ葉雨月。よろしくね」
「えっと…よろしくお願いします」

それでどうしたの?と彼は微笑み、向かい側のソファーに腰掛けた。
コトリとテーブルにマグカップが置かれて、答えを急かすように首を傾げた。

「いや、どうしたってわけじゃないっすよ?別に、」
「じゃあどうしてここに来たの?」
「え、」

爆豪君は君を気にかけているみたいだけど、勘違いならわざわざ君がここへ足を運ぶ必要なかったよね?と彼は言った。

その通りだ。
きっと何も悩んでいなければ、わざわざ時間を割いて来たりしない。
けどあの爆豪に言われてしまったから。
何か、この問いの答えを見つけるヒントがあるんじゃないかと期待した。
国語で解決しないと笑ったのに、それを望んだことは間違いないのだ。

「…いいんですか。なんも関係ないのに」
「先生と生徒だから、いいんじゃない?」
「……例え、話でもいいですか」

どこまで話していいかわからないから、そう前置きをすれば彼は話したいように言葉にするといいよと微笑むのだ。
ヒーローの笑顔のような安心感を与えるものじゃない。
けど、何故か許されたような気持ちになる笑顔だった。

「…俺、なんつーか…色々考えすぎる節があって。いや、基本的には適当だし嫌なことも寝れば忘れられるし。けどたまに…どうしても、前に進めない壁みたいな悩みにぶち当たって…」
「今、その壁の前にいるの?」

彼の言葉にコクリと頷いた。
マグカップの中のコーヒーに映る自分は確かに情けない面をしている。
そりゃ、爆豪なら気づいてしまうだろう。

「……街で敵に遭遇するんですよ。そんで、友達が…人質になっちゃって、」
「うん」
「…助けたいって思った。俺だってヒーロー目指してるし…けど、ヒーローじゃないから。個性を使うことも許されてない立場だから、俺は…助けに行けなかった。けどもう1人の友達は迷わず助けにいって…そいつを助けて帰ってきた」

爆豪が誘拐された時、助けたいって思った。
助けに行きたい、無事でいて欲しい。
けど、行っちゃいけないって思った。
俺はヒーローじゃない。
個性を使う資格を持っていない。
助けに行って、ヒーローの邪魔になったら?
そのせいで爆豪が怪我をしたら?
助けに行った誰かが怪我をしたら?
それだけじゃない。
個性の無断使用で学校に、先生に、クラスメイトに迷惑がかかったら?
助けたいって気持ちは本物だったはずなのに、頭の中はそんな考えで埋まってしまった。
それなのに迷わず緑谷や轟、切島は助けに行った。
そして見事に誰も傷付かず爆豪を救ってみせた。
情けなくなったんだ、それを見て。
ヒーローってこんなウジウジするもんじゃなくね?って。
こんな弱いやつじゃないよな?って。
俺はあの時動けなかった。
助けに行くってあいつらと一緒に行けなかった。
友達だったはずなのに。
爆豪のこと、助けたかったはずなのに。

「助けに行けばよかった、って思った。俺はヒーロー目指してるはずなのに、ヒーローらしからぬことをしてしまったって。けど、また同じ場面が来ても…俺は助けに行けないんじゃないかなって…思ったりもする。だから…なんか、こんな俺がヒーローなんか、なれんのかなって…」
「ルールを守って、見捨てるか。ルールを破って助けに行くか…か。」

先生はそう言って、難しいよねと呟いた。

「…先生っていう立場から言わせてもらえば、瀬呂君の選択肢は間違っちゃいない。助けたいって気持ちを抑えて、理性的に考えて行動してくれてる。君はまだ学生だ。仮免も持ってなかったただの学生。…俺たち教師にはそんな君を守る責任がある。自分の知らぬ所での話だとしても、責任は俺たちがとらなくちゃいけない。だから、先生という立場からは君の選択を称えるよ。感情に流されずよく、我慢した。友達のこときっと心配で仕方なかったはずなのに、よく…耐えてくれたね」

慰めるように、大きな手が俺の頭を撫でた。
先生の言葉は自分を許そうとしてくれる。
有難いよ、そりゃ。
俺は間違ってないと言ってくれてるんだから。
けど、やっぱりダメなんだよな。
きっと誰にも話したって同じように言われるんだろうって思ってた。
だから誰にも言わずにいた。
我儘だけど、許されたいわけじゃない。
だって誰が許してくれたって、俺は俺を許せない。
納得のいく根拠を並べられたって、足りない。
意味がない。

「なんて、当たり障りのない言葉にはきっと意味はないだろうね」

自分の心を見透かされたのかと思った。
びっくりして顔を上げれば彼は優しい目をしていた。

「別に、許しを乞いに来たわけじゃないんだろ?けど、責められたいわけでもない。そのどちらかを求めていたなら、きっとその助けたかった友人に懺悔でもしてるだろうね。そうすれば、どちらかは手に入る」

けど瀬呂君はそれをしなかった。
求めてるのはそんなものじゃないから。

初めて会ったこの人に何がわかるというのか。
そう思うのに、彼の言葉は俺の気持ちを代弁してる。

「ちょっと例え話をしよっか。瀬呂君の目の前で、電車が入り込んでくる線路に人が落ちたとする。瀬呂君ならどうする?」
「え?」
「ルールを破って、個性を使って助ける?それとも、ルールを守って個性を使わずに助ける?それか、助けに行かず緊急停止ボタンを押す?何もせずに、見捨てる?」

見捨てることはできないだろう。
けど、個性を使うのか?
俺の個性なら助けられるかもしれない。
誰も傷付かず、傷付けず。
仮免もあるし、多分許されるはず。
じゃあ、個性を使わずに助けに行くのは?線路に飛び込んで?
そんな無謀なこと、出来るか?
下手すれば2人とも死ぬ。
緊急停止ボタンを押す…これも、妥当選択のはずだ。
ルールは破ってない。
助けたい気持ちだって、実行してる。

「…多分、仮免持ってるし…個性使って助けるか緊急停止ボタンを押します…俺は」
「うん、正解だ。けど、不正解でもある」
「え?」

なんでだと思う?って彼は首を傾げた。

なんで?
見捨てるのは確実に不正解だよな?
いや、個性を使わずに助けに行くのが正解だったとか?

「簡単な話だよ。落ちた人が生きていれば正解。死んでいれば不正解」
「は?」
「どの選択をしていたとしても、それが真理だよ」

そんなのあってたまるか、って思った。
けど彼はそんな俺の考えをまたもや見透かしていたのだろう。

「世の中、結果論なんだよ。助けに行った友人の誰か1人でも死んでたら?怪我をしていたら?きっと助けに行ったことを責め立てられるだろうね。けど、人質になった友人がそうだったら、きっと責め立てられるのは見捨てた君たちだろうね」

世間ってのはそうやって出来ているんだよ、と彼は悲しそうに目を伏せて、コーヒーを啜った。

「君の問いに、正解も不正解もない。それが答えだよ」
「そ、んなん…じゃあ…どうすれば…」
「どうもできない」

ガッカリしたのかもしれない。
頭の中で思考が止まる。
期待してたわけじゃない。
けど、爆豪が紹介するくらいだからどうにかしてくれんじゃね?ってちょっとは思ってた。
けど、なんだよ。
結局、答えは結果論。
正解も不正解もない?
そんなん納得いくわけがない。

「納得できない?そうだよね、そうだと思ったよ」
「なんなんですか、さっきから…」
「正解も不正解も関係ない。結果論かどうかなんて知ったこっちゃない。だって助けたくて仕方ないんだもんね。例え、自分が傷付こうとも 例え、ルールを破っていようとも。助けたいって思っちゃうんだよ」


なんでかって?君がヒーローだからだよ


先生はそう言って俺を指差した。

「正直言えば君が悩んでる意味がわからない」
「はぁ?ここまで聞いてて?」
「だって、答えは最初から出てるじゃん?」

どういうことだって、彼を見れば本当にわかんないの?って首を傾げた。

「あの時の君はどれだけ同じ場面に出会しても、同じ選択をするだろうね。友のピンチであっても感情的に動かないことは、君の長所だ。友が人質になろうとも、線路に人が落ちようとも君は君の許される範囲でしか行動しない。助けたいって気持ちを抱えて、抑え込んで」
「先生、結局何が言いたいんですか?」
「瀬呂君は悩むと視野が狭くなるタイプだね。最初から答えは出てるじゃん」

見透かすような目が俺を射抜いて、ゆるりと首を傾げた。

「君が、爆豪君を助けに行かなかったのはなんで?」
「俺がその資格を持って、なかったから…」
「それだけだよ。たったの、それだけのこと。敵が怖かったわけでもない、怪我を恐れたわけでもない。ただ、助けに行くことが許されない立場だと理解していたってだけ。君はエゴイストなんだよ。友も救いたい、自分も正しくありたい、自分に関わる人たちも巻き込みたくない。そう思ってるからあの日の君は壁にぶち当たる」

あれ、俺爆豪の事だって言ったっけ。
そう思って彼を見れば、最初から知ってたよと彼は笑った。

「爆豪君を助けに行った子たちは、自分に関わる人たちのことまで頭は回ってなかったんじゃないかな。目の前の友を助けたいってただ、一心で。別にそれが悪いとは言わないさ」
「……いつから、わかってたんですか」
「うん?爆豪君から話を聞いた時から、かな。寧ろ爆豪君の方が先にわかっていたんじゃない?」





爆豪君は神野事件の後から俺の元によく訪れるようになった。
別に何をするわけでもなく、コーヒーを啜ってソファに寝転んで帰っていく。
時々、勉強のことを話して。
時々、ヒーローのことを話して。
時々、友のことを話していく。
彼は瀬呂君のことを頭の良い馬鹿だと言っていた。
友達に対して酷くない?と俺が言えば、あいつは本当に馬鹿なんだと優しい目をして笑った。

「俺を助けに来なかったことを、後悔してんだよ。アイツ」
「へぇ…」
「俺からすりゃ、そうしてくれる方がありがたかった。…俺のせいで、アイツらが怪我すんのは…気にくわねぇ」

自分のせいでオールマイトは個性を失った。
爆豪はそう、話していたから。
彼とて、ヒーローなのだ。
資格を持たなくとも、心は立派なヒーロー。
だから、だからこそ彼も守りたいのだ。
自分が傷付こうとも、友を。

「…なのに、あのバカはウジウジ悩んでんだよ」
「助けたかったんだね、爆豪君のこと」
「いらねぇよ」

今はんなもん、求めちゃいねぇ。
爆豪君はそう言って甘くしたコーヒーを飲んで、不貞寝するみたいにソファに倒れ込んだ。
その姿に自分しか見えていなかった爆豪君の変化を感じて、嬉しく思ったことを覚えている。

「瀬呂君、君は悩む必要なんて一つもないよ。神野事件の前も後も、君は変わらずヒーローになりたいんだよ。その資格を持ちたいんだよ。誰も傷つけずに、迷惑をかけずに助けに行きたいんだよ。…爆豪君も、それも待ってる」

目を丸くさせて固まった彼は、あーと情けない声を出してから両手で自分の顔を両手で覆った。
赤く染まった耳はあの日不貞寝した爆豪君のものとよく似てる。

「ルールを破って助けに行くことは、君にはできない。それを自分でも分かってるんでしょ?けど、ルールを守って助けに行かないことも納得がいかない。なら、ルールを守って助けに行くしか君が納得する答えはない。仮免を手に入れた今、君にはその選択をすることができる。それでも、制限はあるから君はヒーロー免許を手にするまで納得はできないかもね」

顔を隠す彼の頭を撫でた。
立ち上がり、残り少しだった自分のコーヒーを飲み干してもう一度ケトルの電源をつける。

「世の中結果論だっていうのも、間違った話じゃないから覚えておくといいよ。今回は誰も傷つかなかったから許された。爆豪君も君たちも、助けに行った緑谷君って子たちも。無謀な事をするのがヒーローなんじゃないよ」

返事は聞こえない。

「爆豪君はね、今も後悔してる。君たちに助けに来させてしまったことを。まぁ、彼も素直じゃないから助けられたことを感謝してないわけじゃないんだろうけど。ずっと、拭い去れないだろうね。自分のせいでルールを破らせてしまったんだから」
「…全部、爆豪から聞いたんすか…?」
「爆豪君や相澤先生…あとは、オールマイトさんとか。こう見えて顔が広くてね」

こんな些細なことで悩んでたんすね、と彼は俯いた。
何を落ち込むことがあるというのか。
真っ直ぐにヒーローを目指していたからこそ、ぶつかった悩みなのに。
友を想い、仲間を想うからこその。

「…瀬呂君」
「はい?」
「"君は良いヒーローになる“よ。資格を持てば、君が立ち止まる必要なんてなくなる。守りたいものを全力で、守れるようになる。だから今は前に進みな。あの日の後悔は君の原動力になるはずだから」

はい、と彼は答えて、ありがとうございましたと頭を下げた。
綺麗にコーヒーを飲み干した彼はマグカップ洗います、と立ち上がる。

「あぁ、気にしなくていいよ。俺のとまとめて洗っちゃうから」
「…あ、すいません。ありがとうございます」
「どういたしまして。また、うん…コーヒーが飲みたくなったらおいで」

俺の言葉に彼は目を瞬かせてから頷いた。

「ありがとうございます。また、来ます」
「うん」
「…遅くまで、すいませんでした。凄く、助かりました」

丁寧に腰を折ってお辞儀をした彼の頭を撫でる。
いってらっしゃい、と手を振れば彼はいってきますと笑って廊下を歩いて行った。

「爆豪君」

彼が歩いて行ったのと反対側。
階段の方にそう声をかければどこか不貞腐れた表情の彼が顔を出す。

「どうしたの?」
「別に。言ったろ、頭の良い馬鹿だって」
「…言わんとすることはわからないでもないね」

コーヒー飲む?と彼に尋ねれば返事はなく、部屋に入って行った。

「言ノ葉先生はすげぇよな」
「うん?」
「あぁやって、簡単に救っていく」

救ったんじゃないよ、と彼の隣に並んで俯く彼の頭を撫でた。

「俺は導くだけ。先生だからね、誰かを救うのは君たちの仕事だ」
「…あっそ、」
「救いたいと願ったのは、間違いなく君だ」

俺を見上げた彼は力が欲しいと言った。

「何のために?」
「勝って…助けるために」





「爆豪、」

次の日、しょうゆ顔はどこかスッキリした顔をしていた。

「なんだよ」
「ありがとう」

彼の言葉を鼻で笑ってやれば、苦笑をこぼした。

「意外だった、あの先生と仲良くなってんの」
「…あの人は、普通じゃねぇんだよ」
「普通じゃないって?」

あの人は多分、誰よりも自分の弱さを知っている。
自分の至らなさを知っている。
あれだけの個性を持ちながら、彼は自分は救えないと思っているのだ。

「なんでもねぇ」

なんだそれ、って彼は笑った。

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