Happy Birthday-Leona Kingscholar-


Foxy Fox主


「レオナ」
「ナマエ?お前がうちの寮に来るなんて珍しいな」
「そう?」

入っていいか、と尋ねた彼に好きにしろと返事をする。
俺の寝転んでいたベッドに腰掛けた彼はポイ、と何かを放り投げた。
胸の上に転がった白いリボンのかかった黒い箱。

「なんだ、これ」
「何って誕生日プレゼント」
「は?」

ちら、と時計を見れば 確かに日付は変わり俺の誕生日になっていた。
それでわざわざこんな時間に来たってか?律儀な男だ。

「中身は?」
「聞く前に開けろよ」
「…そうだな」

体を起こしてリボンを解く。
そう言えば去年とプレゼントと言って、飯を奢ってもらった気がする。
箱を開ければシルバーのシンプルな指輪が4つ並んでいた。

「指輪…?なんか、小さくね?」
「足用」
「足?」

両足の親指と中指に着けてくれ、と彼は言って ベッドから降りる。
そして、片膝を付いて俺を見上げた。

「は?」
「指輪貸せ。あと、足だせ」
「んなもん、自分で…!」

いいから、と彼は笑った。
ゆらゆらと揺れていた尻尾と頭の上に鎮座していた耳が消え 昔の姿になった彼は微笑んだ。
久々に見た懐かしい姿に、折れてしまったのは仕方ない。

「……好きにしろ」

彼の膝に足を乗せれば、彼の少し冷たい指が触れる。
俯く彼の旋毛を見ながら、彼がよくあのポンコツ皇子に跪いていたことを思い出す。
顔は隠れていたが頭を垂れるその横顔を見るのが、あの時はもどかしかった。

「レオナ」
「なんだ、」
「…ありがとな、俺と友達になってくれて」

普段だったら、鼻で笑っただろう。
だが 何も言えなかった。

「俺を、受け入れてくれて………ありがとう」

4つの指輪が足の指で光る。
サイズまでバッチリだ。

「…誕生日おめでとう。レオナ」
「重い」
「俺も、ちょっと思った」

いつも通り笑った彼は立ち上がり、笑った。
人間の耳が消え、尻尾と耳が生えてくる。

「似合わねぇ耳…」
「そう言ってくれるなよ」
「…なぁ、ナマエ」

片膝を抱えて、彼のくれた指輪を撫でる。

「どうした?」
「……いや、」

俺宛に、プレゼントを貰ったのは初めてかもしれい。
第二王子宛じゃない、俺に贈られたもの。
アクセサリーなんて大事にしたことはない。
どう扱えばいいのか、と少し考える。

「……なくしたらどうすんだ」
「また来年贈るよ。 再来年でも、何十年後だって」
「俺と、それまでお友達してるってか?」

そうだよ、と彼は躊躇いもせずに答えた。
真っ直ぐな目が俺を射抜く。
あぁ、騎士の目だ。
そう思ったら、少し笑えた。

「ばぁか」
「は?」

片膝をつくのがあんなにも様になるのも、その目も 騎士であった名残り。
だがそれさえも 俺は嫌いじゃない。

「なぁ、ナマエ」
「うん?」

ありがとう、と言うのは少し気恥しい気がした。
だから、微笑みを浮かべたその男の脛を指輪の輝く足で軽く小突いた。

「跪くのは俺だけにしとけ」
「……ははっ、悪くないね。キングスカラー様?」
「レオナ様だ」

俺の唯一無二の友は、笑った。
夢を語ったあの時のように。

「飯、どっか行こうぜ。休みか?」
「休み。そうだ、クルーウェル先生から美味しい肉料理のお店聞いた」
「……そこがいい」

予約しておく、と彼は言う。
言ってはやらない。
けれど、どんなプレゼントよりも この男が迷わず友だと言ってくれることの方が嬉しかった。
未来の王様から奪えた、唯一の存在。

ナマエ・ミョウジ。
とある王国の英雄は、俺のものだ。
この優越感を、俺はお前には教えてやらない。



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