ボーダーのラウンジ。
人の多いその場所に、何故か1箇所だけ人がいない場所があった。
その中心にはやはり、と言うべきか予想していた彼がいた。
だが様子が違うといえば、珍しくペンを持ち何かに向かっているのだ。
それに隣にいたカゲと当真も気付いたらしい。
「雅久いんじゃん」
「何してんのアイツ」
隣に並ぶ当真が首を傾げ「真面目に机に向かってんの珍しくね?」と笑った。
「どうせ、しょうもねぇことしてんだろ」と釣られてカゲも笑う。
「聞こえてんぞ、テメェら」
ドスの効いた声がして雅久はこちらを睨み舌打ちをした。
「こわっ」
「んで?なにしてんだ?」
「反省文書いてた。先週トラブったやつの」
彼のテーブルに歩み寄り、手元を覗き込めば確かにそれは反省文のようだ。
綺麗とは言えない字が明らかに苛立ちを込められ散らばっていた。
「お前、前も書いてなかったっけ?」
「前っていつだよ。3日前くらいに学校で書いてたやつなら忍田さんに破り捨てられた」
ぽい、とシャーペンを机に転がし、彼は背もたれに体を預ける。
決して反省はしていないのだろう。する姿は想像も出来ないのだが。
「書いたやつ破り捨てられることなんかあんだな」
「別に。書くことなかったから太刀川さんの大学入試の時の論文書き写した」
「…………馬鹿か?」
ガチ引きしてるカゲに雅久は笑う。
「読んだことある?マジで、小学生の作文だぜ?あれ。くっそウケる」
「お前のその勇気が怖ぇわ。よくそれ忍田さんに見せようと思ったな…」
「東さんとかが添削する前の原文は見せてねぇって聞いたから。思わず」
怒りの矛先を変えたかった、と雅久は笑っているが 現状を見るに失敗したのだろう。
「結果、2人とも反省文」
「太刀川さんが可哀想」
「あんなん書いてんのが悪いだろ」
こんなことしながらも成績は進学校の面々に引けを取らないのだがら、世の中不公平だ。
それがあるから何となく、大目に見られているのも否めないし。
「つーか、反省文の意味わかってるか?」
「荒船真面目かよ。つーかさ、何を反省しろっつーんだよ。あのクソ雑魚共が悪ぃんだろ。絡む相手くらい判断しろよ」
お前そういうとこあるよなぁ、と当真は呟き溜息を吐く。
当真に呆れられるって相当やべぇぞとは口が裂けても言わない。
「で?今回は真面目に書いてんのか?とりあえず書かなきゃ終わんねぇんだろ」
「荒船せんせー助けてくへれんの?優しー」
「言ってねぇ。自分で書けるだろふざけなきゃ」
思ってねぇこと書くのダルぃと呟き彼は渋々またペンを持った。
「次会ったらアイツら殺す…」
「今回も半殺しだろ、どうせ」
そう言いながらカゲは雅久の向かい側に座る。
「次は4/5は殺す」
殺気たっぷりに言った雅久に カゲは気持ちよさそうに目を細めた。
「それはもう一思いにやってやれ。逆に酷くね?」
当真がカゲの横に座り、笑う。
「殺んな馬鹿」
「てか何座ってんのお前ら」
「書き終わったら飯いこ」
そういや、その為に3人でいたんだったわ。
返事をする前に雅久の隣に座れば 金がねぇと彼は呟く。
「お?そしたら次の任務で臨時冬島隊員決定だな」
「またかよ……ま、いいか。金欲しいし…」
「はい、決定〜。とりま、それ早く書いて行こ。」
はいはい、とだるそうに返事をしながらもペンは真面目に動き出す。
やりゃできるんだよな、やっぱり。
相変わらず綺麗とは言えない字だが、お手本のような文章が紙の上に書き連ねられていった。