雅久をボーダー1のクソ野郎だと言うのには理由は沢山ある。
よく起こすトラブルや酷すぎる言葉遣い、粗暴な態度。
だがそれよりも、何よりもアイツの戦闘がきっかけだった気がする。
足を失って機動力を無くした味方の隊員を盾にしてみたり。
落ち掛けの隊員の腕をチョン斬り、追尾弾の囮にしてみたり。
自分が落ちそうになれば自分の体もそうしてみたり。
まぁなんというか惨いのだ。
それでよく怒られているのはもちろんのことである。
「うへぇ…ひっでぇわ、こりゃ」
見ていたのはどういう経緯か、オペ有りで出水佐鳥vs 雅久米屋で模擬戦をしていた映像だった。
出水に先に蜂の巣にされ、ベイルアウト直前の米屋の元に駆け付けたかと思えば ドラム缶にくくりつけ バックワームを被せ転がした。
そして射線が通りやすい場所付近でわざとバックワームを解除した。
オペからすりゃ、元々米屋が死にかけたところにずっとあるトリオン反応と移動しているトリオン反応を見りゃ 移動してる方を雅久だと思う。
それを見事撃ち抜き、ベイルアウトした光が見え喜んだ佐鳥をハウンドで遠距離から雅久は撃ち抜いてみせた。
「やばくね!?!ね!?!」
それを見せてくれたのは囮にされた張本人の米屋だった。
「やべぇけど。お前なんで喜んでんだよ」
「やること凄すぎて、思わず。」
呆れる俺を他所に、当真と犬飼は腹を抱えて笑っている。
「転がされてる米屋の顔やばいね」
「なんも!言わねぇの!無言で真顔でこれやられたんだよ!?そりゃこんな顔にもなるでしょ!」
何見てんの、と今話題に上がっていた男の声。
後ろから肩を組まれ、急に体が重くなる。
「あぁこの間の…」
「お前、これ流石にやばいぞ」
「そうか?」
遠征行っても同じこと言う?と雅久は耳元で笑う。
「死にかけ1人犠牲にすりゃ全員助かるなら、俺は迷わず殺すけど」
「っ、おい」
「怒んなよ、荒船」
肩から手を離し、彼は顔に笑みを浮かべたまま両手を上げた。
「ちゃんとベイルアウトできる範囲でやるって」
「そういう問題じゃねぇだろ」
「嘘嘘。ま、俺が遠征行くことはもうねぇから大丈夫だって」
けど覚えておくといいよ、と彼は米屋の携帯を奪う。
「人を殺せないなら遠征なんて行くもんじゃない。敵も、味方もね」
削除しました、と書かれた画面のまま携帯をテーブルに置いて彼は踵を返す。
消されたー!!と携帯を握りしめ叫ぶ米屋の声も俺達の呼び止める声も無視して彼は行ってしまった。
「遠征行ってる雅久って想像つかないよな」
「二宮さんが東さんから聞いた話だと相当…酷かったらしいよ。死にかけの敵に置きメテオラしかけて駆けつけた人達まとめて爆破したり。敵の死体を狙撃の盾にしたり…とか」
「……アイツわかってたけどやべぇな」
そりゃクズだなんだと言われても納得してしまうだろう。
その名残が今もあるのだから、尚更。
「狙撃手への1番の攻撃は、味方を撃ったという罪悪感だ」
「え?」
「これ、雅久の言葉らしいよ」
顔を引き攣らせたのはこの場にいた狙撃手である当真だった。
「狂ってるわ、その思考…」
「ま、今更だけどねぇ」
▽
「粕谷」
「……風間さん」
「まだふらふら遊んでるのか」
だったらなんだよ、と吐き捨て通り過ぎようとすれば手を掴まれた。
「2人のことは残念だった。惜しい存在を失った。けど、それがお前が歩みを止める理由になるのは勿体ないだろ。2人だって、そんなお前を「風間さん。なんも知らねぇだろ」……そうだが、」
「じゃあ知ったように話すなよ。耳障りだから」
離して、と言えば案外すんなり手は離れた。
「クビにするって話が出てる、お前をだ」
「知ってる」
「なら!なんで、」
いいよ、と俺は笑った俺に風間さんは珍しく驚いた顔をして固まった。
「クビにしていいって言ってんの」
「自分が何を言ってるのかわかっているのか…」
「わかってるよ、風間さん。あの頃の俺でいられなくてごめんな」