「ぎゃーっ、ちょ待って!?助けて助けて!」

珍しく半崎が元気だなぁ、と大きな画面に映されるゲームの映像を眺める。
誰かと通話しながらやっているのか耳には大きなヘッドホンと口元にはマイク。

「っしゃ!さすがっす!」

アクションを見るのも、こういう怪物と戦う系も映画であれば好きなのだが ゲームとなると話は変わる。

「楽しそうだな」
「発売日だなんだとこの間騒いでたしな」
「珍しい、あんなに明るい半崎は」

仲の良い友達なんだろ、と答えて 残りわずかだった課題に向き直る。

「あ!回復あります回復。次ボスっすよね?任務までに終わるかなー」

あんなに集中している割に、時間はしっかり把握しているらしい。

「じゃ、入りまーす。て、嘘だろ!?雅久さんやばい!」
「ん?」
「ボスのHPやばい!周りのも!て、無理無理無理!雅久さん!これ!絶対今のレベルじゃキツイって!」

筋トレをしていた穂刈がこちらを見る。
思うことはきっと一緒だろう。

「あーー、やっぱ負けた!!塔でレベル上げしてから行きましょ。あ、はいおけです。俺も飲み物…」

コントローラーとヘッドホンを置いた彼はこちらを振り返り固まる。
しまった、という顔をした彼はぺこりと頭を下げた。

「あ、うるさかった…すよね……すんません」
「雅久とやってんのか?」
「あ、はい」

雅久がうちの隊室に来ることはよくある。
半崎を交えて、顔を合わせることも少なくはない。
その間に2人が 話す姿などあっただろうか。
あっても挨拶を交わすくらいで、ゲームをするような仲には到底見えなかった。

「お前ら仲良いのか?」
「え?まぁ、悪くはないんじゃないすかね…?よくゲームしてますし雅久さんの家でオールでゲームしたりしますし」
「は?」

義人ー、とヘッドホンなら微かに声が聞こえる。
それに気づくと彼は飲み物片手にソファに戻っていった。

「呼んでいたな、名前で」
「アイツが名前で呼ぶやつ、他にいたっけ?」
「……国近くらいじゃないか?」

国近…てことは、ゲーム仲間。

「…納得いかねぇ」





「なんか荒船、機嫌悪くね?」
「うちの半崎を誑かしてるなんて聞いてねぇぞ」
「誑か…?は?いや、してねぇわ、アホかよ」

こいつらやべーぞ、と義人に通話を繋げば 「ゲーム終わったあたりからそうなんすよ」と疲れた声が返ってきた。

「てかさー、義人、明日休み?」
「休みっす」
「うち来る?ボスリベンジしよーぜ」

行きます、と義人が即答すると荒船はより一層の怖い顔をして俺を蹴った。
トリオン体だから痛くはねぇけど。

「なんだよ」
「なんで名前呼び」
「ゲームする時は短い名前の方が呼びやすい」

じゃあ俺もゲームしたら哲次って呼ぶか?と聞かれ それはないと即答した。

「荒船は荒船だわ。今更哲次はねぇわ」
「俺はどうだ」
「お前も一緒だっつの。お前ら何?呼び方1つでキレてんの?しょうもねぇ」

お前の先輩どうにかしろよ、と義人に声をかければ 雅久さんの友達でもありますよ、と言葉が返ってくる。まぁそうだが。

「半崎の方がいいらしい、俺たちよりも」
「みてぇだな。友情なんて呆気ねぇわ」
「おい、マジでだるいぞこいつら」