沢田綱吉へのお題は『ああ、神様!』から始まる文章です。
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ああ、神様!
名前は思わず神と呼ばれる存在に絶望するしかなかった。4月は出会いと別れの季節、そしてクラス替えの時期だ。中学生2年生である名前にとって小学校から一緒に持ち上がってきた友人たちとの最後のクラス替えが発表されたのだ。特別仲のいい友人は2人、しかしその誰とも一緒のクラスに配分されることは無かった。いじめか?
しょんぼりと肩を落とす名前を余所に、掲示板の前に集まる生徒たちはきゃあきゃあと騒いでいた。やがて自分たちが危機的状況になりかけていることに気づいた人々からそくさくと校舎の中に消えていく。そうだろう、後ろに構える校門からは我らが雲雀恭弥が今にもその獲物をこちらに向けようかウズウズしているのだから。咬み殺されたくなければさっさと新しい教室に戻るしかないのだ。
春爛漫、そう評されてもいい青空と桜のコントラストが美しい校舎の下で一人ぽつんと残された名前はまるで空気に含まれてはいないようだった。
「10代目クラス分けでてますよ。……教師脅しといたんで俺らは一緒のクラスですね!」
「なにやってんの獄寺くんー!!」
「はは! まじで一緒だ、よかったなツナ! 俺も一緒だぜ」
「チィッ」
「あ、3人ともおはよ」
去っていった集団と入れ替わるように顔見知りの3人がやってきた。去年からなにかと目立つ沢田綱吉、獄寺隼人、山本武である。名前は彼らと去年は同じクラスに所属していた。日直ぐらいでしか関わりはなかったが、それでもクラスメイトだった彼らを無視するほど無関心ではない。
「あ、苗字さん! おはよう」
「よー! 今年も宜しくな」
「10代目に迷惑かけんじゃねえぞ」
「今年も? ……あっ」
見上げれば確かに。2-Aと大きく示され、紙のお花が彩られた掲示板の中に彼らの名前を見た。友人の名前を探すのに必死で気づかなかったようだ。
「本当だ。いいなあ3人は一緒で……わたしは仲いい2人共ばらばらになっちゃったし」
ほら、と別のクラスを指差す名前の指先は元気がない。獄寺はそんなに一緒にいたいなら教師でも脅せばよかったのではないかと言いかけて、口をつぐんだ。
「別のクラスでもつるみゃーいいじゃねえか」
「女子はそうもいかないんだよ山本くん」
仲が悪くなることはないだろうが隙あらばグループ分けに巻き込まれるのが女子中学生という生き物だ。新しいクラスでもお友達作らなきゃなあと思っていると、
「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ! ほら、別のクラスに友達いると教科書とか体操着忘れた時に借りに行けるし……! 」
忘れ物とか、そんな沢田くんじゃないんだからとくすりと笑いかけて気付く。彼は必死に全身で名前を励まそうとしてくれていた。実際に名前は落ち込んでいた気持ちに晴れ間が生まれたようで、新学期はじめての笑顔を浮かべた。
「そうだね。ありがとう沢田くん……あ、ツナくんって呼んでもいいかな?」
「えっ、あ……「てめえ10代目を気安くお名前で呼ぶんじゃねえ!」落ち着いて獄寺くん!! 大丈夫だよ! 宜しくね名前ちゃん!」
名前からの言葉を嬉しそうに受け取った沢田は蜂蜜色をした大きな瞳を細めて笑った。なんだ、いつも裸になってるだけの危ない人じゃないんだ。本人には到底聞かせられない感想を抱いたことは今後も黙っておこう。「じゃあ俺も名前って呼ぶな!」とさらっと宣言した山本にいい返事をしてから気づく。並中マドンナの京子ちゃんでさえ笹川呼びの山本くん呼びなのに、並中モテ男代表に名前を呼び捨てられるのは今後ファンクラブからの視線が痛いのでは?
「俺らと仲良くしてたらなんか危険なことにも巻き込んじゃうかもしれないけど、名前ちゃんのこと絶対に守るからね!」
「ありがとうツナくん……!」
ぜひとも山本、獄寺ファンから守ってほしい。名前は急に小さな沢田が頼もしく見えた。
「君たち、いつまで群れてるの?」
その時、名前は思い出した。
風紀委員長が見張っていたという事実を、彼の前で群れたものの末路をーー