「えー、今日からお前たちの教鞭をとることになっただ。以前はウォール・シーナ内にある貴族院技術教員の任に着いていたが、この度この訓練所にて憲法および法律を教えることになった。先に行っておくが俺はお前らに甘くするつもりはない。徹底的に教えるので、俺の授業についてこられない者は開拓地に移って貰おう。そして、成績が心配ならば俺にたてつくなんていう馬鹿なことはしない方が賢明だろうな。」

 つらつらと眠気を誘う長ったらしい台詞。既にコニーとサシャの二人は船をこき始めているが間に座っているジャンが必死に二人の掌を鉛筆の先で突き刺したりしていた。はっとして恨めしそうにジャンを横目に見る二人に彼は胃が痛そうで、それを後ろからマルコが心配そうに伺っている。
 カツカツとせわしなく教室を歩く靴音が響くと、ジャン達の席の真横で止まり、その鋭い眼光でジャンを睨むと容赦ない拳固を振りかざした。

「静かにせんか!」

 あっけにとられた顔をしたジャンの傍を通り過ぎてゆく教授の背中に突き刺さるのは教室中の生徒からの畏怖と疑念の眼差しだった。余りの理不尽さに仲間思いのコニーがくってかかりそうになるのをばれないように静かにジャンが制した。

「では12ページを開きたまえ。」

 高慢ちきな声が響く教室、そこに居る多くが”教授=嫌なやつ”だと認識した。目をつけられたらメンドクサイ人物だと察した生徒たちは物静かに授業を受けた。質問の受け答え、そして教授の淡々とした教科書を読む声以外が一切ない教室は胎児のような静けさだった。そんな教室の端でファーストネームは肩を竦ませて、体の大きなベルトルトの後ろに身を潜めた。


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