解答用紙が間違っている
「私、殺されるならレヴィがいいなあ」
意味がわからないことをまた言い出したなとでも言いたげな顔をしてレヴィは「は?」と一言呟きながらその怖いお顔をこちらに向けた。右手の赤ペンのインクが紙の上に溜まる。あんまりにも怖い顔をしているので、怖いよと伝えようかとしたけど元々こんな顔だと言われるのは目に見えていたので私は出かけた言葉を小さく丸めて喉の奥に引っ込めた。
談話室でこうして私に勉強を教えてくれて、赤ペンなんか持って低い机に窮屈そうに身を屈める偏屈な男。そんな部分なんて彼のほんの一部であって、本当は暗殺者という顔にぴったりの職業に身を置いている人だ。
昨日は確かパレルモの辺りでの任務を行なっていたはず。ヴァリアーは全面的に活動を凍結されているのは、表向きの話である。結局、扱いに困るような任務を上は秘密裏にこっちに流してくる。そんな時、よく出動するのがレヴィと、彼の雷撃隊だ。本部の意向に一番背きそうなボス至上主義の彼が、どうして本部のために働いているのかは私にだってなんとなくは分かる。
「レヴィの殺しはXANXUSさんのためじゃないですか。他の人はちょっと違うけど」
スクアーロは自分の剣技を極めるため。結果的にXANXUSさんのためになろうが、彼の傲慢さは彼のために使われることには変わらない。ルッスーリアの殺しは自分が愛したいから、XANXUSさんのためと言うよりは完全に自分の愛のためだ。ベルなんてもっと凄いぐらい自分のために殺しを行なっている。完全なる趣味。快楽主義者の行動であり、それは別にXANXUSさんのためじゃない。自分が兄弟を殺した感覚を忘れられないから暗殺部隊に来た王子様は流石に逸脱している。
「マーモンではないのだな。てっきりお前ならあいつに殺されるなら本望だろうと思っていたが」
「私だって死に方ぐらい選びたいですよ。自分の一番近い家族に殺されるなんて絶対に嫌。それにきっとマーモンは私を殺せない。だから、レヴィがいい」
それに、彼は逆上さえしていなければ一瞬で殺してくれるからきっと一番痛みが短い。他の人たちの弄ぶような殺し方を思い出して青い顔になってしまう。レヴィのパラボラならきっと私の全てを燃やし尽くして、なかったことにしてくれるだろう。
「私が殺されるってことは、私がみんなに迷惑かけたってこと。そんなの絶対に嫌だし、別の誰かに始末されるのも嫌だ。……レヴィに殺されたなら、それは私の死がXANXUSさんのための死になる」
今朝、任務から帰ってきたレヴィからは、血の臭いと女の物の香水、そして赤ん坊に飲ませるミルクの匂いがした。
レヴィが薄っぺらい紙を突き返してくる。採点が終わったらしいそれには、大きなバツマークが紙面を横切っている。
「私、間違ってた?」
「ああ、大間違いだな」
「……そっか、わかんないや」