「
好きだよ」
いつもと何ら変わらない放課後だった。授業が終わってお昼が終わって掃除が終わって、ホームルームが終わって、いつも通りの部室に向かう途中だった。
「
聞いてる?」
「
聞いてない」
「
聞いてるじゃん」そう言った小湊はいつもと何ら変わらない笑顔でわたしを見つめる。「
嘘だ」「
嘘じゃないよ」「
罰ゲーム?」「
まさか」そんないつも通りの私の言葉をかわすやりとりの間にも、頬が熱くなるを感じた。見られたくなくてうつむいたのに、小湊はわたしをのぞき込む。
「
どうしたの?」
「
信じない」
「
どうして?」
「
だって、」
「
だって?」いつも通りの微笑みで、小湊はわたしを追いつめる。「
哲が好きだから?」心臓が跳ねた。言葉がつまった。「
どうして」「
知ってるのかって?」。「
いつも見てたから」「
………」「
不毛だね」「
誰が」「
俺達。ごめんね、忘れていいよ」
いつも通りじゃないことなんてはじめから気づいていた。わたしはいつも通りに取り繕った。そんな顔させたいわけじゃ無かったのに、こんな気持ちになりたいわけじゃ無かったのに。
同情心と自尊心の化合物
(141209)
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