「寂しいなら寂しいって言わなきゃわかんねぇだろ。」

今この電波の向こう側にいる声の主の眉間にはきっと深いシワが刻まれている。
近頃仕事が忙しそうな洋一を気遣うつもりで連絡を控えていたら最後に会った日から1ヶ月も経っていた。久々に掛かってきた電話はやっと休みがとれたから明日会いにいくという連絡で、私は電話越しに久々に聞く洋一の声に安心してとうとう泣いてしまった。何かあったのかと迫る彼にしどろもどろになりながらも「最近会ってないから生きてたなあって」とおどけて返してはみたが、すでに心の中はバレバレになっていたようだ。
そんなこと言ったって洋一は忙しい、重荷になりたくない、我儘なんか言いたくない、嫌われたくない、でもそのまま私が必要なくなったらどうしよう、寂しいよ、まだ私のこと大事?好きでいてくれてる?そんな沢山あった不安をかき分けて出てきた本音は非常にシンプルなもので。

「会いたい…」
「20分で行く」

言葉の後に俺も会いたいとかそんなことは続かなかったけれど、「切るぞ」と言った直後に電話越しに聞こえたのはせっかちにドアが閉まる音で、それだけでもう私の心の中にあった不安はすでに消えてしまっていたのだった。

深夜0時の夢番地 0419


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