外の気温を無視したような薄暗い部屋は、ブーンという扇風機の機械音で満ちていた。扇風機の風の先には、うつ伏せになった暁が向こう側を向いている。顔が見えないけれど、きっと起きているだろうと仮定を立てて声をかける。

「何してんの」
「溶けた氷ごっこ」

案の定起きていた暁から返って来た言葉に、また意味不明な遊びを考えたものだとため息を付きながら「おじいちゃんが探してたよ」とご親切に教えてやるが、もう返事は返ってこなかった。彼は今、溶けた氷なので他のことが出来ないし、したくないのだ。

「・・・」
「・・・」
「あとお母さんがアイス買って来てくれたって」
「食べる」

即答した暁が起き上がってパチンと扇風機のスイッチを切る。
そうして溶けた氷ごっこは終わったとさ。チャンチャン。

150502

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