「俺女の声嫌い」
「あたしと話してんじゃん」
「春の声は平気」
「なんで」
「ハスキーヴォイスだから?」
「ヴォイスって言うなむかつくわ」
「セックスしてるときの女の声萎える」
「セックスしなければいいじゃん」
「セックスは好きだから悩んでんだろ」
「知るかよ」
「口塞いでもアンアン言うし」
「何やってんの」
「あーマジ女の声嫌い」
「今鳴世界中の女を敵に回してるよ」
「つまりお前は味方ってことか」
「しんでー」
「やべえこのチョコチップクッキーちょううまい」
「あたしも食うー」

女が食うとか言ってる時点で女捨ててるとおもう。後ろの席で眠っているカルロスのカバンをかっぱらい3人分の今日の収穫を机に広げた。クッキー、マフィン、ケーキやキャンディに駄菓子。多種多様なお菓子が机を埋める。一瞬ここが教室だということを忘れてしまった。ああ、しあわせ。しあわせだ。

「実際世界中の女に俺とお前どっちとるかって聞いたら」
「いい勝負になるね」
「自分で言うか」
「自覚はあるわ」
「ハスキーヴォイスだからな」
「関係ねーよ」
「バレた?」
「このマフィン抹茶味だーうまー」
「おれも食う〜」

この味付けはあたし好みだとかこのチーズケーキは焼き過ぎだとかを勝手にケチをつけながら2人でお菓子を片づける。よっちゃんイカを食べていた春が思い立ったように顔をあげる。

「あれじゃない。男とやればいいじゃんアナルセッ」
「絶対やだ」
「えー」
「体つきは女がいい」
「ワガママー」
「妥協をしない性格なの」
「じゃあ全身整形した声帯だけいじってない男とやれば」
「…え?」
「あたしを見ないでね。そして屋上から飛び降りろ今すぐ」
「冗談だって」
「しんでー」
「つーか思ったんだけど俺春とセックスすればいいんじゃん」
「無いわ」
「デスヨネ」

即答かよ。別にだから何っていう話ですけど。チュッパチャプスを俺の口に突っ込んでトイレ行ってくると席を立った春の席には、いつのまにか目を覚ましたカルロスが座っていた。寝起きのカルロスは気配消すのがうますぎる。気持ち悪い。

「成宮はもっと素直になったほうがいい」
「俺別に素直だし。」
「今のままだと一生伝わらねーぜ」
「余計なお世話だっつの」
「へーへー」

俺はいつも自分に正直に生きている。春の声が耳に馴染みすぎて他の女の声がうるさく感じてしまうし、春をみてキャーキャーと騒ぐ女達の黄色い声援も耳障りだ。あーうぜえなあ。ピンク色の箱に春宛の手紙とガトーショコラが入っていた。一口ほおばる。春の好きそうな味だったので、全部残らずたいらげた。

150111

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