15 浮気相手

ずっと彼の中に入る隙なんてなかったから、久々に顔を見た同窓会ではへんな期待もなにか起きる可能性も微塵も感じていなかった。それでも顔を見て声を聞けばやっぱり好きだな、なんて未練がじわじわと心の奥からにじみ出てきて。踏ん切りの着かない片思いなんて辛いだけなのはいやって程に分かってるはずなのに、当たって砕ける勇気もなければこのまま忘れてしまうことも出来なくて、一生このままだったらどうしようって思った。
だからはしゃぎ過ぎて千鳥足になっていた梅宮くんと帰る方向が一緒だったのも、終電を逃したのも、わたしにもたれる彼とホテルに入ったのもすべて偶然で。


「あああああ」
とてつもない悲鳴で目が覚めた。ここがラブホテルでなかったら、きっと通報されていただろう。眠気眼をこすりながら声の主を見上げる。
「おま、あ、あ?…ああ?!」
わたしの顔を確認したり布団をめくって下半身を確認したり梅宮くんは忙しない。高校の頃から変わってない。ふとやぶったゴムのパッケージが目に入ったらしい梅宮くんが唖然として呟く。
「…まじか」
「覚えてない?」
「悪い」
布団の上に丁寧な土下座をして三つ指をつく梅宮くんが可愛くて笑ってしまいそうになる。
「別にどっちが悪いとかないでしょ」
「だってお前は、南朋の」
苦しそうな顔をした梅宮くんが顔を上げる。言いかけた言葉の続きは出てこなかった。

私は南朋の恋人で、梅宮くんは私の想い人で。
最初は梅宮くんに近づきたくて南朋と一緒に居た。南朋の梅宮くんに似てるところを見つけるのが好きだった。それからなぜか私たちは付き合うことになって。
「南朋には言わないで」
「何言ってんだ、お前」
「知られたくない」
「…」
今口止めしても、梅宮くんはきっと言ってしまう。そういうところが好きになった。
最初は純粋な恋だった。いつでも真っ直ぐ前を見てる彼に惹かれて、いつからか目で追うようになっていて、少し挨拶するだけでドキドキして、笑いかけられた日には夜も眠れなくて。
なんでこんなことになっちゃったんだろうね。空気に問いかける。いつの間には私たちは大人になってて、ずるい方法なんていくらでも選べるようになってしまった。最初から間違えてばかりだ。もうすぐわたしは恋人も想い人も失うだろう。自分の気持ちにも彼らにも嘘を重ね過ぎて、大切なものなんてもう分からないから後悔なんてなくて、きっとわたしは欠落人間なのだろうなと頭のすみでぼんやり考える。
おかしいくらいに胸の高鳴りは静まり返っていた。

150915

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