Last World - 5 (1/2)





「あの子ね、王族落ちなの。」
「王族?」
「正確には、王族落ちの娘。尸魂界にも王家ってのがいるのよ。普段は干渉してこないけど……尸魂界の象徴であり、絶対的な権力を持った一族、それが王家。で、それを守ってるのが王族特務ね。麗は王家の者と王族特務の間で生まれた子。」

乱菊さんが教えてくれた。
麗が抱えてるものを。

「分かんないならそれでいいわ。」
「……要するに、その二人がカケオチしたってことだろ?」
「そ。簡単に言うとね。でも事はそんなに簡単じゃないの。麗のお母さんは王家一族から追放されて、父親も王族特務の職を追いやられた。」

どこか淋しそうに話す乱菊さんから、俺は目が離せなかった。

「本当のところ、あたしもその辺良く分かんないのよ。王家なんて話に聴くだけで実際見たこともないし。……でも、王族から堕落した者の子でも、尸魂界では重宝されるみたい。麗自身、王族特務の血を引いてる訳だから、実力もそこそこあったろうけど、それもで色々特別扱い受けたんでしょうね。」
「……それで、世界が嫌になりました、ってか……」
「あたしたち凡人には分かんない苦しみよ。自ら死ぬことを望むなんて……そのくらい苦しかったってことなんでしょうね。」

けど。
どんな理由があったって、命を投げ出すようなこと、あっちゃならねえ。
そう心の中で呟いて、拳を握った。

「でもね、一護。例え藍染に与えられた使命だったとしても、麗があんたに手を貸したこと、あたしは何か意味があると思うの。」

「朽木ルキアを助けたいんでしょ?」

俺の中に、そう問い掛けてきた麗の姿が蘇る。
頷いた俺に見せた笑みは、少なくとも、この先に死を見つめるような顔じゃなかった。




- 1 -

prevnext