「キラ……?」
「えぇ。どう思いますか。」

葵はそう聞かれて少し考えてみた。

キラ。
大量殺人鬼。

あまりいいイメージは浮かばない。
それをそのまま伝えたら「それもそうでしょうね」と流された。

「ここでキラを肯定してしまえば私が日本へ来た意味がなくなります。」
「なぜ私に聞くんですか?」

自分が答えてもあなたは自分の意見を崩さないでしょう。
そう言うと彼は首を振った。

「私は常にあなたの意見を踏まえて事を考えています。」

本音なのか、そうでないのか分からないが、一応ここでは信じておこう。

「それで……日本警察捜査本部の皆さんにはせめて顔を見せようかと。」
「好きにしてください。」

葵は驚いたが、直ぐにまたいつも通りの表情に戻ってはっきりと言った。

「……傷付きます。」
「勘違いしないでください。私はあなたの行く所へなら何処へでも着いて行くと言ってるんです。」

そう。
あなたの行く所へなら、何処へでも。

「……もう一つ勘違いしそうです。」
「それもお好きに。私はあなたの好きなケーキでも買いに行く事にします。」

そう言い残し、葵は部屋を出て行った。




「エル、」



きっと届かない。



「エル、」



それでも、手を伸ばす。





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